大和俗訓 / 巻之五・言語
一凡人のいみきらふこと、言ふべからず。人の生れつき、不具かたはなる者あり。又其行さきに大なる過ありしものあり。或は親先祖いやしかりしものあり。此たぐひ、言ひいだせば、聞く人きらひて、うらみ怒る。是世俗のいはゆるさしあひなり。心を用ひて言ふべからず。
書き下し
一凡人のいみきらふこと、言ふべからず。人の生れつき、不具かたはなる者あり。又其行さきに大なる過ありしものあり。或は親先祖いやしかりしものあり。此たぐひ、言ひいだせば、聞く人きらひて、うらみ怒る。是世俗のいはゆるさしあひなり。心を用ひて言ふべからず。
現代語訳
およそ人が忌み嫌うことは言ってはいけません。人には、生まれつき体の不自由な者がいます。またその行いに、以前大きな過ちがあった者がいます。あるいは親や先祖の身分が低かった者がいます。このたぐいを言い出せば、聞く人は嫌がって恨み怒ります。これが世俗のいわゆる「さしあい」(差し障り)です。心を用いて言ってはいけません。
解説
相手が触れられたくない事柄を口にするなという戒めです。生まれつきの体のこと、過去の失敗、家柄のことなど、本人にはどうにもならないことや、すでに償った過去に触れれば、深い恨みを買います。当時「さしあい」と呼ばれたこうした話題への配慮は、今でいう差別や偏見につながる発言を避けることにも通じます。冗談のつもりの一言が人を深く傷つけることもあります。相手の立場に立って言葉を選ぶ心づかいの大切さを教えています。
この章句が説くこと
配慮言語差別思いやり慎み
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