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大和俗訓 / 巻之五・衣服

一衣服は身のおもてなり。人に對すればまづ見ゆ。此故に、古人身をつゝしむの名目をつらぬるに、まづ衣服、次に言語、次に行と、ついでをなせり。言行と同じく相ならべるほどの事なれば、衣服をもつゝしみて、身に相應せる。正しきをえらび用ふべし。相應せざるは、正しからざるなり。相應とは、年と位と時と處とに似合たるを云ふ。染色繪樣、わかき人も、其年のほどよりは、すこしくすみて老いらかなるは、人の目にたゝずして宜し。かくの如くなるは、わかきも老いたるも、たかきも賤しきも、むかしも今も、似合はざることなし。年と位より、若やかにざればみたるはいやし。大なるかた、大もん、大すぢ、すべて人の目にたちてけざやかに、又あやしく異樣なる染色の服著たるは、たれも其身に似げなくして、むげに人に見おとさるゝものなり。

新字:一衣服は身のおもてなり。人に対すればまづ見ゆ。此故に、古人身をつゝしむの名目をつらぬるに、まづ衣服、次に言語、次に行と、ついでをなせり。言行と同じく相ならべるほどの事なれば、衣服をもつゝしみて、身に相応せる。正しきをえらび用ふべし。相応せざるは、正しからざるなり。相応とは、年と位と時と処とに似合たるを云ふ。染色絵様、わかき人も、其年のほどよりは、すこしくすみて老いらかなるは、人の目にたゝずして宜し。かくの如くなるは、わかきも老いたるも、たかきも賤しきも、むかしも今も、似合はざることなし。年と位より、若やかにざればみたるはいやし。大なるかた、大もん、大すぢ、すべて人の目にたちてけざやかに、又あやしく異様なる染色の服著たるは、たれも其身に似げなくして、むげに人に見おとさるゝものなり。

書き下し

一衣服は身のおもてなり。人に対すればまづ見ゆ。此故に、古人身をつつしむの名目をつらぬるに、まづ衣服、次に言語、次に行と、ついでをなせり。言行と同じく相ならべるほどの事なれば、衣服をもつつしみて、身に相応せる。正しきをえらび用ふべし。相応せざるは、正しからざるなり。相応とは、年と位と時と処とに似合たるを云ふ。染色絵様、わかき人も、其年のほどよりは、すこしくすみて老いらかなるは、人の目にたたずして宜し。かくの如くなるは、わかきも老いたるも、たかきも賤しきも、むかしも今も、似合はざることなし。年と位より、若やかにざればみたるはいやし。大なるかた、大もん、大すぢ、すべて人の目にたちてけざやかに、又あやしく異様なる染色の服著たるは、たれも其身に似げなくして、むげに人に見おとさるるものなり。

現代語訳

衣服は身の表です。人に向かえばまず目に入ります。このため古人は、身をつつしむ項目を並べるとき、まず衣服、次に言語、次に行いという順序にしました。言行と並べるほどのことなので、衣服もつつしんで、身に相応した正しいものを選んで用いなさい。相応しないものは正しくないのです。相応とは、年齢と地位と時と場所に似合っていることをいいます。染め色や模様は、若い人でも、その年ごろよりは少しくすんで落ち着いたものが、人目に立たずによいのです。このようなものは、若い人も老人も、身分の高い人も低い人も、昔も今も、似合わないことはありません。年齢や地位よりも若やいで派手なのはいやしい。大きな型、大紋、太い縞など、すべて人目に立つあざやかなものや、また奇妙で風変わりな染め色の服を着るのは、誰でもその身に似合わず、ひどく人に見下されるものです。

解説

衣服の巻の冒頭で、益軒は服装を言葉や行いと並ぶ修身の要素と位置づけます。基準は「相応」、つまり年齢・地位・時・場所に似合うことです。とくに、年相応より少し落ち着いた色柄を選べば誰にでも似合い、目立ちすぎる派手な柄はかえって人に軽んじられると述べます。現代でもTPOという言葉があるように、場にふさわしい服装は相手への敬意であり、自分の信用にもつながります。面接や式典で服装に迷うとき、目立たず品のある装いを選ぶ指針として今も役立ちます。

この章句が説くこと

衣服礼相応身だしなみ修身

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