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大和俗訓 / 巻之四・心術下

禮記に、君子は道を得ることをたのしみ、小人は欲を得ることを樂む。道を以て欲を制すれば、たのしみて迷はず、欲を以て道を失へば、迷ひて樂まずといへり。君子は常にたのしみて日をおくり、小人は常にうれひて日をおくる。衰老の身は、殊に餘日すくなければ、一日を以て一月とし、一月を以て一年とする工夫をなすべし、一日一時も樂まずして、あだに時日をおくるは、愚なりといふべし。

新字:礼記に、君子は道を得ることをたのしみ、小人は欲を得ることを楽む。道を以て欲を制すれば、たのしみて迷はず、欲を以て道を失へば、迷ひて楽まずといへり。君子は常にたのしみて日をおくり、小人は常にうれひて日をおくる。衰老の身は、殊に余日すくなければ、一日を以て一月とし、一月を以て一年とする工夫をなすべし、一日一時も楽まずして、あだに時日をおくるは、愚なりといふべし。

書き下し

礼記に、君子は道を得ることをたのしみ、小人は欲を得ることを楽む。道を以て欲を制すれば、たのしみて迷はず、欲を以て道を失へば、迷ひて楽まずといへり。君子は常にたのしみて日をおくり、小人は常にうれひて日をおくる。衰老の身は、殊に余日すくなければ、一日を以て一月とし、一月を以て一年とする工夫をなすべし、一日一時も楽まずして、あだに時日をおくるは、愚なりといふべし。

現代語訳

『礼記』に「君子は道を得ることを楽しみ、小人は欲を得ることを楽しむ。道によって欲を制すれば、楽しんで迷わず、欲によって道を失えば、迷って楽しまない」とあります。君子はいつも楽しんで日を送り、小人はいつも憂えて日を送ります。衰えた老いの身は、とくに残りの日が少ないので、一日を一月とし、一月を一年とする工夫をすべきです。一日一時も楽しまずに、むだに月日を送るのは、愚かだと言うべきです。

解説

『礼記』楽記篇の言葉を引いて、道を楽しむ者と欲を楽しむ者の違いを示し、そのうえで老いた者の時間の使い方を説いています。大和俗訓を書いたとき益軒は七十九歳で、残された日の少なさを実感していたはずです。だからこそ一日を一か月分の密度で生きよという言葉には重みがあります。定年後の長い時間をどう過ごすかが課題となる現代、年を重ねるほど一日を大切に楽しむという発想は、老いを前向きに生きるための心強い指針になるでしょう。

この章句が説くこと

老い楽しみ道欲時間

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