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大和俗訓 / 巻之四・心術下

一利を求むれば必害あり、福を求むれば必禍あり。故に韓詩外傳に曰、利は害の本、福は禍の先とす。求めざるに自然に福來るはよし。われより求むべからず。我より求めたる福は、必禍となる。唯わが身をつゝしみ、分を安んじ、わが職分をつとめて、天命にまかすべし。利とは財利のみにあらず、一切わが身のために便よきことは、皆利なり。我が爲に便よきことを計るは、皆人に害あり。故にわが利は人の害なり。人の害は又わが害となる。たとへば環のはしなくして、めぐりて又かへるが如し。よく此理を知りて、利をむさぼるべからず。

新字:一利を求むれば必害あり、福を求むれば必禍あり。故に韓詩外伝に曰、利は害の本、福は禍の先とす。求めざるに自然に福来るはよし。われより求むべからず。我より求めたる福は、必禍となる。唯わが身をつゝしみ、分を安んじ、わが職分をつとめて、天命にまかすべし。利とは財利のみにあらず、一切わが身のために便よきことは、皆利なり。我が為に便よきことを計るは、皆人に害あり。故にわが利は人の害なり。人の害は又わが害となる。たとへば環のはしなくして、めぐりて又かへるが如し。よく此理を知りて、利をむさぼるべからず。

書き下し

一利を求むれば必害あり、福を求むれば必禍あり。故に韓詩外伝に曰、利は害の本、福は禍の先とす。求めざるに自然に福来るはよし。われより求むべからず。我より求めたる福は、必禍となる。唯わが身をつつしみ、分を安んじ、わが職分をつとめて、天命にまかすべし。利とは財利のみにあらず、一切わが身のために便よきことは、皆利なり。我が為に便よきことを計るは、皆人に害あり。故にわが利は人の害なり。人の害は又わが害となる。たとへば環のはしなくして、めぐりて又かへるが如し。よく此理を知りて、利をむさぼるべからず。

現代語訳

利を求めれば必ず害があり、福を求めれば必ず禍があります。だから『韓詩外伝』に「利は害の本、福は禍の先」とあります。求めずに自然に福が来るのはよいのです。自分から求めてはいけません。自分から求めた福は必ず禍となります。ただ自分の身をつつしみ、分に安んじ、自分の職分をつとめて、天命にまかせなさい。利とは財利だけではなく、一切自分の身のために都合のよいことはみな利です。自分のために都合のよいことを計るのは、みな人に害があります。だから自分の利は人の害です。人の害はまた自分の害となります。たとえば輪にはしがなく、めぐってまた戻ってくるようなものです。よくこの理を知って、利をむさぼってはいけません。

解説

『韓詩外伝』は前漢の韓嬰が故事と詩経の句を合わせて編んだ書です。益軒はその「利は害の本、福は禍の先」を引き、自分から利や福を求めることの危うさを説きます。利とはお金だけでなく、自分に都合のよいことすべてを指し、それは必ず誰かの損になり、巡り巡って自分に返ってくるというのです。輪にはしがないというたとえが印象的です。自分の職分を誠実につとめ、結果は天命にまかせる姿勢は、目先の得に振り回されがちな仕事の場面でこそ心に留めたいものです。

この章句が説くこと

利福禍職分天命

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