大和俗訓 / 巻之四・心術下
一わが身の飮食色欲財利などの慾に克つには、たとへば强敵に對して、我が十分の力をつくして、ふせぎ戰ふが如くすべし。かくのごとくせざれば、私慾にかちがたし。是欲にかつ良法なり。もしすこしも弱げなれば、欲にかちがたく、つひに欲かちて防ぎがたし。人欲は人のため大敵なり。油斷すべからず。いかにもして克つべし。
新字:一わが身の飲食色欲財利などの慾に克つには、たとへば強敵に対して、我が十分の力をつくして、ふせぎ戦ふが如くすべし。かくのごとくせざれば、私慾にかちがたし。是欲にかつ良法なり。もしすこしも弱げなれば、欲にかちがたく、つひに欲かちて防ぎがたし。人欲は人のため大敵なり。油断すべからず。いかにもして克つべし。
書き下し
一わが身の飲食色欲財利などの慾に克つには、たとへば強敵に対して、我が十分の力をつくして、ふせぎ戦ふが如くすべし。かくのごとくせざれば、私慾にかちがたし。是欲にかつ良法なり。もしすこしも弱げなれば、欲にかちがたく、つひに欲かちて防ぎがたし。人欲は人のため大敵なり。油断すべからず。いかにもして克つべし。
現代語訳
自分の身の飲食・色欲・財利などの欲に打ち勝つには、たとえば強敵に向かって、自分の十分な力を尽くして防ぎ戦うようにしなさい。このようにしなければ、私欲には勝ちがたい。これが欲に勝つよい方法です。もし少しでも弱気であれば、欲に勝ちがたく、ついには欲が勝って防ぎがたくなります。人欲は人にとって大敵です。油断してはいけません。何としても打ち勝ちなさい。
解説
欲との戦いを、強敵を前にした合戦にたとえています。飲食や色欲、金銭欲は、少しでも気を緩めると押し切られてしまうので、全力で防がなければならないというのです。武士の多い時代の読者にとって、実感のこもったたとえだったでしょう。ダイエットや節約、禁煙などで「今日くらいはいいか」と油断した一回から崩れてしまうのは誰もが経験することです。欲を甘く見ず、最初から本気で向き合うことが、自分を守る一番の方法だと教えています。
この章句が説くこと
欲克己油断節制養生
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