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大和俗訓 / 巻之四・心術下

一言を聞きて信ぜざるは、聞くことあきらかならざるなりと、易にいへり。人の善言と諫を聞きながら、其言を信ぜず、唯益もなきあだごとのやうに思ふは、其心くらくして、善言を聞きわけざればなり。心明なれば、よく其言の道理あることを聞きわけて信ず。又世俗の才辨ありて、言たくみなる者のいふことは、理もなき事をも聞きて信ず。其言貌ふつゝかなれば、其言に道理あれども信ぜず。是聞く人のくらき故なり。

新字:一言を聞きて信ぜざるは、聞くことあきらかならざるなりと、易にいへり。人の善言と諫を聞きながら、其言を信ぜず、唯益もなきあだごとのやうに思ふは、其心くらくして、善言を聞きわけざればなり。心明なれば、よく其言の道理あることを聞きわけて信ず。又世俗の才弁ありて、言たくみなる者のいふことは、理もなき事をも聞きて信ず。其言貌ふつゝかなれば、其言に道理あれども信ぜず。是聞く人のくらき故なり。

書き下し

一言を聞きて信ぜざるは、聞くことあきらかならざるなりと、易にいへり。人の善言と諫を聞きながら、其言を信ぜず、唯益もなきあだごとのやうに思ふは、其心くらくして、善言を聞きわけざればなり。心明なれば、よく其言の道理あることを聞きわけて信ず。又世俗の才弁ありて、言たくみなる者のいふことは、理もなき事をも聞きて信ず。其言貌ふつつかなれば、其言に道理あれども信ぜず。是聞く人のくらき故なり。

現代語訳

言葉を聞いて信じないのは、聞くことが明らかでないからだと、『易』にあります。人の善い言葉や諫めを聞きながら、その言葉を信じず、ただ益もないむだごとのように思うのは、その心が暗くて、善い言葉を聞き分けられないからです。心が明らかであれば、よくその言葉に道理があることを聞き分けて信じます。また世俗で才気と弁舌があり、言葉たくみな者の言うことは、道理のないことでも聞いて信じます。その言葉や風采が不格好であれば、その言葉に道理があっても信じません。これは聞く人が暗いからです。

解説

『易経』夬の卦の「言を聞きて信ぜず、聡明ならざるなり」を踏まえた一条です。益軒は、忠告を聞き流すのは聞く側の心が曇っているからだと言い、さらに、話のうまい人の言うことは中身がなくても信じ、口下手な人の正論は退けてしまう人間の弱さを指摘します。プレゼンの巧拙や肩書きで意見の価値を判断してしまうのは、今の会議でもよくあることです。話し方ではなく中身の道理を聞き分ける力こそ、聞く側が磨くべきものだと教えています。

この章句が説くこと

諫め善言信明傾聴

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