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大和俗訓 / 巻之四・心術下

一心も事も、天理に專一にして、人欲をすこしも交ふべからず。是を至善と云ふ。君子の心事、必かくの如くなるべし。もし十分の天理に、一分の人欲あひまじはらば、たとへば、黑白のあひまじはり、香臭の一器にあるが如し。十分の白き物に、一分の黑き物まじはれば、白きとはいひがたし。香ばしき物も、少し惡しき臭をくはふれば、にほひよからざるが如し。

新字:一心も事も、天理に専一にして、人欲をすこしも交ふべからず。是を至善と云ふ。君子の心事、必かくの如くなるべし。もし十分の天理に、一分の人欲あひまじはらば、たとへば、黒白のあひまじはり、香臭の一器にあるが如し。十分の白き物に、一分の黒き物まじはれば、白きとはいひがたし。香ばしき物も、少し悪しき臭をくはふれば、にほひよからざるが如し。

書き下し

一心も事も、天理に専一にして、人欲をすこしも交ふべからず。是を至善と云ふ。君子の心事、必かくの如くなるべし。もし十分の天理に、一分の人欲あひまじはらば、たとへば、黒白のあひまじはり、香臭の一器にあるが如し。十分の白き物に、一分の黒き物まじはれば、白きとはいひがたし。香ばしき物も、少し悪しき臭をくはふれば、にほひよからざるが如し。

現代語訳

心も行いも、天理にひたすらであって、人欲を少しも交えてはいけません。これを至善といいます。君子の心と行いは、必ずこのようであるべきです。もし十分の天理に一分の人欲が混じれば、たとえば黒と白が混じり合い、よい香りと悪臭が一つの器にあるようなものです。十分に白いものに一分の黒いものが混じれば、白いとは言いがたい。香ばしいものも、少し悪い臭いを加えれば、においがよくないようなものです。

解説

朱子学の中心概念である天理と人欲を、白と黒、香りと悪臭のたとえで説明しています。九割が正しくても一割の私欲が混じれば、全体の質が損なわれるというのです。これは厳しい要求ですが、例えば公平であるべき人事や評価にわずかな私情が入ると、全体の信頼が崩れてしまうことを考えれば納得できます。完璧は難しくとも、自分の動機に私欲が混じっていないかを点検する習慣は、仕事の信頼性を高めるうえで今も有効な心がけといえるでしょう。

この章句が説くこと

天理人欲至善君子私心

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