大和俗訓 / 巻之四・心術下
一人のためにはかりて心をつくし、或は其才能を君相にすゝめ、人のため害をのぞき、貧困をめぐみ救ひ、人に恩をほどこす事、唯ひとすぢに仁心より行ふべし。人の悅びて其返報せん事をのぞむべからず。我が名聞のためにすべからず。是陰德なり。若し名聞のために善を行ひ、又人にほどこして、其報をのぞめば、仁心むなしくなる。如此すれば、力を用ひて善を行へども、其事は是にして、其心は非なること、をしむべし。誠の道にあらざればなり。
新字:一人のためにはかりて心をつくし、或は其才能を君相にすゝめ、人のため害をのぞき、貧困をめぐみ救ひ、人に恩をほどこす事、唯ひとすぢに仁心より行ふべし。人の悦びて其返報せん事をのぞむべからず。我が名聞のためにすべからず。是陰徳なり。若し名聞のために善を行ひ、又人にほどこして、其報をのぞめば、仁心むなしくなる。如此すれば、力を用ひて善を行へども、其事は是にして、其心は非なること、をしむべし。誠の道にあらざればなり。
書き下し
一人のためにはかりて心をつくし、或は其才能を君相にすすめ、人のため害をのぞき、貧困をめぐみ救ひ、人に恩をほどこす事、唯ひとすぢに仁心より行ふべし。人の悦びて其返報せん事をのぞむべからず。我が名聞のためにすべからず。是陰徳なり。若し名聞のために善を行ひ、又人にほどこして、其報をのぞめば、仁心むなしくなる。如此すれば、力を用ひて善を行へども、其事は是にして、其心は非なること、をしむべし。誠の道にあらざればなり。
現代語訳
人のために計画して心を尽くし、あるいはその人の才能を主君や宰相に推薦し、人のために害を取り除き、貧しく困っている人に恵んで救い、人に恩を施すことは、ただひとすじに思いやりの心から行うべきです。人が喜んでそのお返しをしてくれることを望んではいけません。自分の評判のためにしてはいけません。これが陰徳です。もし評判のために善を行い、また人に施してその報いを望めば、思いやりの心はむなしくなります。このようにすれば、力を使って善を行っても、そのことは正しくても、その心は間違っていることになり、惜しいことです。まことの道ではないからです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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