大和俗訓 / 巻之三・心術上
是人の久しくおとづれざるを恨みずして、いかさまにも障ありて來らざるなるべしと、思ひなだめしなり。朱子の詩傳にも、此詩は人情をよく知れりとて、ほめ給ふ。心せばく、智あさき人は、人情事變を知らで、少し我が心にかなはざる事あれば、はやく人を恨みいかりて、心を苦むるは、心せばく世なれぬ人といふべし。
新字:是人の久しくおとづれざるを恨みずして、いかさまにも障ありて来らざるなるべしと、思ひなだめしなり。朱子の詩伝にも、此詩は人情をよく知れりとて、ほめ給ふ。心せばく、智あさき人は、人情事変を知らで、少し我が心にかなはざる事あれば、はやく人を恨みいかりて、心を苦むるは、心せばく世なれぬ人といふべし。
書き下し
是人の久しくおとづれざるを恨みずして、いかさまにも障ありて来らざるなるべしと、思ひなだめしなり。朱子の詩伝にも、此詩は人情をよく知れりとて、ほめ給ふ。心せばく、智あさき人は、人情事変を知らで、少し我が心にかなはざる事あれば、はやく人を恨みいかりて、心を苦むるは、心せばく世なれぬ人といふべし。
現代語訳
これは、人が長く訪れないのを恨まずに、きっと差し障りがあって来ないのだろうと、思い直して心を和らげたのです。朱子の『詩集伝』でも、この詩は人情をよく知っているとほめておられます。心が狭く、知恵の浅い人は、人情や世の事情を知らずに、少しでも自分の心にかなわないことがあると、すぐに人を恨み怒って心を苦しめますが、これは心が狭く世慣れない人というべきです。
解説
前段の『詩経』旄丘の解釈を受けて、朱子の『詩集伝』がこの詩を人情をよく知ると評したことを紹介し、心の狭さを戒める段です。少しでも思い通りにならないとすぐ人を恨み怒るのは、人情や世の事情を知らない狭い心だと益軒は言います。怒りや恨みで苦しむのは結局自分だという点は、前の同じ船の二人の話とも通じます。相手の反応が思い通りでないとき、すぐに悪意を読み取らずに一度立ち止まる習慣は、職場や家庭の無用な衝突を減らしてくれます。
この章句が説くこと
寛容人情心朱子恨み
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