大和俗訓 / 巻之三・心術上
一智はさとるとよむ。心の明なるなり。心あきらかにして曇なければ、萬の道理によく通じ、是非善惡をわきまへて、迷はず。たとへば燈明かにして、よく物を照すが如し。智なければ、善を好めどもくらく、迷ひて行ふべき道を知らず、あやまりて僻事多し。又智なければ人を知らず、君子をすてゝ小人を用ふれば禍多し。智あればよく道理の是非をわきまへ、非義を行はずして身をたもつ。よく人の善惡を知りて、君子を近づけ小人を退ぞく。是身ををさめ、人ををさむるに、益ありて害なし。此故に智は人身の大寶なり。心明なるは智なり。心明なれば、よく人の善惡を知る。樊遲問知、子曰知人。これ人を知るは、知の明なる所なり。
新字:一智はさとるとよむ。心の明なるなり。心あきらかにして曇なければ、万の道理によく通じ、是非善悪をわきまへて、迷はず。たとへば灯明かにして、よく物を照すが如し。智なければ、善を好めどもくらく、迷ひて行ふべき道を知らず、あやまりて僻事多し。又智なければ人を知らず、君子をすてゝ小人を用ふれば禍多し。智あればよく道理の是非をわきまへ、非義を行はずして身をたもつ。よく人の善悪を知りて、君子を近づけ小人を退ぞく。是身ををさめ、人ををさむるに、益ありて害なし。此故に智は人身の大宝なり。心明なるは智なり。心明なれば、よく人の善悪を知る。樊遅問知、子曰知人。これ人を知るは、知の明なる所なり。
書き下し
一智はさとるとよむ。心の明なるなり。心あきらかにして曇なければ、万の道理によく通じ、是非善悪をわきまへて、迷はず。たとへば灯明かにして、よく物を照すが如し。智なければ、善を好めどもくらく、迷ひて行ふべき道を知らず、あやまりて僻事多し。又智なければ人を知らず、君子をすてて小人を用ふれば禍多し。智あればよく道理の是非をわきまへ、非義を行はずして身をたもつ。よく人の善悪を知りて、君子を近づけ小人を退ぞく。是身ををさめ、人ををさむるに、益ありて害なし。此故に智は人身の大宝なり。心明なるは智なり。心明なれば、よく人の善悪を知る。樊遅知を問ふ、子曰く人を知る。これ人を知るは、知の明なる所なり。
現代語訳
智は「さとる」と読みます。心が明らかなことです。心が明らかで曇りがなければ、あらゆる道理によく通じ、是非善悪をわきまえて迷いません。たとえば灯火が明るくて、よく物を照らすようなものです。智がなければ、善を好んでも暗くて、迷って行うべき道が分からず、誤って筋違いのことが多いのです。また智がなければ人を見分けられず、君子を捨てて小人を用いるので禍が多いのです。智があれば、よく道理の是非をわきまえ、不義を行わずに身を保ちます。よく人の善悪を知って、君子を近づけ小人を退けます。これは身を修め、人を治めるのに、益があって害がありません。ですから智は人の身の大切な宝です。心が明らかなのが智です。心が明らかであれば、よく人の善悪を知ります。樊遅が知を問うと、孔子は「人を知ることだ」とおっしゃいました。これは、人を知るのが知の明らかなところだということです。
解説
この章句が説くこと
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