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大和俗訓 / 巻之三・心術上

一人の血氣めぐらざれば病とす。人の心めぐらざれば愚なり。是古語なり。心めぐるとは、事に當りて心を用ひ、思案するを云ふ。運動するなり。孟子に、心の官は則思ふといへるが如し。思案せざれば、心めぐらずして、是非をわかつことなく愚なり。事に當りて、心をめぐらし、よく思案すれば、是非をわかつ故愚ならず。人の善惡をわきまへずして愚なるは、思案せざればなり。

新字:一人の血気めぐらざれば病とす。人の心めぐらざれば愚なり。是古語なり。心めぐるとは、事に当りて心を用ひ、思案するを云ふ。運動するなり。孟子に、心の官は則思ふといへるが如し。思案せざれば、心めぐらずして、是非をわかつことなく愚なり。事に当りて、心をめぐらし、よく思案すれば、是非をわかつ故愚ならず。人の善悪をわきまへずして愚なるは、思案せざればなり。

書き下し

一人の血気めぐらざれば病とす。人の心めぐらざれば愚なり。是古語なり。心めぐるとは、事に当りて心を用ひ、思案するを云ふ。運動するなり。孟子に、心の官は則思ふといへるが如し。思案せざれば、心めぐらずして、是非をわかつことなく愚なり。事に当りて、心をめぐらし、よく思案すれば、是非をわかつ故愚ならず。人の善悪をわきまへずして愚なるは、思案せざればなり。

現代語訳

人の血気がめぐらなければ病気とし、人の心がめぐらなければ愚かである。これは古い言葉です。心がめぐるとは、事に当たって心を用い、思案することをいいます。心が運動することです。孟子に「心の官はすなわち思う」とあるのと同じです。思案しなければ、心がめぐらず、是非を分けることがなく愚かです。事に当たって心をめぐらし、よく思案すれば、是非を分けるので愚かではありません。人が善悪をわきまえず愚かなのは、思案しないからです。

解説

血のめぐりが悪ければ病、心のめぐりが悪ければ愚という古語を引き、考えることの大切さを説く段です。心がめぐるとは事に当たって思案することで、『孟子』告子上の「心の官は則ち思ふ」を根拠に挙げています。益軒は、愚かさは生まれつきではなく思案しないことから来ると言い、誰でも考えれば是非を分けられると励まします。医学にも通じた益軒らしく、体の血行と心の働きを並べるたとえが分かりやすい一節です。忙しさに流されず、立ち止まって考える時間を持つことの価値を教えてくれます。

この章句が説くこと

思案心愚孟子判断

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