大和俗訓 / 巻之三・心術上
是不仁の人のいふ詞なり。すべて民はすなほなる天性あり。上なる人、誠を以て民を愛すれば、民も亦必感悅してわだかまらず、誠を以て上につかふ。上より、不仁にしていつはりを行へば、民も亦必いつはる。此感應の理からもやまとも、古も今もかはらず。うたがふべからず。民をいつくしみ、其上に法を嚴にして、民のひが事を禁ずれば、上を侮らず、おごるべきやうなし。
新字:是不仁の人のいふ詞なり。すべて民はすなほなる天性あり。上なる人、誠を以て民を愛すれば、民も亦必感悦してわだかまらず、誠を以て上につかふ。上より、不仁にしていつはりを行へば、民も亦必いつはる。此感応の理からもやまとも、古も今もかはらず。うたがふべからず。民をいつくしみ、其上に法を厳にして、民のひが事を禁ずれば、上を侮らず、おごるべきやうなし。
書き下し
是不仁の人のいふ詞なり。すべて民はすなほなる天性あり。上なる人、誠を以て民を愛すれば、民も亦必感悦してわだかまらず、誠を以て上につかふ。上より、不仁にしていつはりを行へば、民も亦必いつはる。此感応の理からもやまとも、古も今もかはらず。うたがふべからず。民をいつくしみ、其上に法を厳にして、民のひが事を禁ずれば、上を侮らず、おごるべきやうなし。
現代語訳
これは不仁な人の言う言葉です。すべて民には素直な天性があります。上に立つ人が誠をもって民を愛すれば、民もまた必ず感じ入り喜んで、わだかまりなく、誠をもって上に仕えます。上から不仁で偽りを行えば、民もまた必ず偽ります。この感応の道理は、中国でも日本でも、昔も今も変わりません。疑ってはいけません。民を慈しみ、そのうえで法を厳しくして、民の悪事を禁ずれば、上を侮らず、奢るはずもありません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『君子訓』巻之中一凡民は素直なるものなれども、上より下を欺けば、下も上にならひて詐多くなる。是上より下に偽を教ふるなり。民の性もと偽多きにあらず、上下の勢異なるゆゑ、上より下を欺きても、民すべきやうなくして、暫しは上に従ふものなれば、上より下を欺くこと多し。
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『都鄙問答』卷之一・武士ノ道ヲ問ノ段露塵ほども我が身を顧みざるは、臣の道なり。常に手足が口に使はるると、我が身の君に事ふると、違ふことあらば、此は不忠なりと知るべし。此を法とせば、何国にて仕ふるとも、臣の道を離るることあるべからず。扨て臣は政に従ふものなり。下を使ふは、君の道を以て治むべし。古聖人の御代には、君としては万民を子の如く思し召し、民の心を以て、御心となし玉ふ。伝に云ふ、民の好む所は之を好み、民の悪む所は之を悪む、此を之れ民の父母と謂ふ。此のゆへに、聖人は世を没し玉へども、民思ひ慕ひてわすれずと云へり。此の味を知るべし。忠義の臣は名を後世に残し、天下の人これを愛す。礼に曰く、士四十にして志強く立ち、利害に奪はれず、禍福に怵れずんば、以て出で仕ふべし、と見えたり。士の道は、先づ心を知りて志を定むべし。孟子曰く、志を尚くす。
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『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
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