君子訓 / 巻之中
一凡民は素直なるものなれども、上より下を欺けば、下も上にならひて詐多くなる。是上より下に僞を敎ふるなり。民の性もと僞多きにあらず、上下の勢異なるゆゑ、上より下を欺きても、民すべきやうなくして、暫しは上に從ふものなれば、上より下を欺くこと多し。
新字:一凡民は素直なるものなれども、上より下を欺けば、下も上にならひて詐多くなる。是上より下に偽を教ふるなり。民の性もと偽多きにあらず、上下の勢異なるゆゑ、上より下を欺きても、民すべきやうなくして、暫しは上に従ふものなれば、上より下を欺くこと多し。
書き下し
一凡民は素直なるものなれども、上より下を欺けば、下も上にならひて詐多くなる。是上より下に偽を教ふるなり。民の性もと偽多きにあらず、上下の勢異なるゆゑ、上より下を欺きても、民すべきやうなくして、暫しは上に従ふものなれば、上より下を欺くこと多し。
現代語訳
およそ民は素直なものですが、上が下を欺けば、下も上にならって偽りが多くなります。これは上から下に偽りを教えることになります。民の性質はもともと偽りが多いわけではありません。上と下の勢いが違うので、上から下を欺いても、民にはどうしようもなく、しばらくは上に従うものなので、上から下を欺くことが多いのです。
解説
民がずる賢くなるのは生まれつきではなく、上が下を欺くのをまねるからだ、と説いています。家訓で、子どもをだまして泣きやませるのは偽りを教えることだと述べたのと同じ考えを、統治に当てはめたものです。上は力が強いので、下を欺いてもその場では従わせることができ、つい欺くことが多くなる、という指摘は鋭いものです。会社が社員や顧客に不誠実な対応をすれば、社員も顧客も会社を信じなくなるという構図は、今の組織でもよく見られることです。
この章句が説くこと
偽り誠上下信頼民
関連する章句
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