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大和俗訓 / 巻之三・心術上

一人となる者は、天地の心に隨ひ、仁愛を以て心とし行ふべし。己を愛する心を以て人を愛す、是仁なり、人の心なり。禽獸は、おのが身を愛する事のみ知りて、物を愛せず。人もし不仁にして、唯我が身を愛して人を愛せずんば、人の心にあらず。禽獸と何ぞことならんや。不仁なれば人心を失ふ故、其餘の才能のよき事は見るにたらず。

新字:一人となる者は、天地の心に随ひ、仁愛を以て心とし行ふべし。己を愛する心を以て人を愛す、是仁なり、人の心なり。禽獣は、おのが身を愛する事のみ知りて、物を愛せず。人もし不仁にして、唯我が身を愛して人を愛せずんば、人の心にあらず。禽獣と何ぞことならんや。不仁なれば人心を失ふ故、其余の才能のよき事は見るにたらず。

書き下し

一人となる者は、天地の心に随ひ、仁愛を以て心とし行ふべし。己を愛する心を以て人を愛す、是仁なり、人の心なり。禽獣は、おのが身を愛する事のみ知りて、物を愛せず。人もし不仁にして、唯我が身を愛して人を愛せずんば、人の心にあらず。禽獣と何ぞことならんや。不仁なれば人心を失ふ故、其余の才能のよき事は見るにたらず。

現代語訳

人となる者は、天地の心に従い、仁愛を心として行うべきです。自分を愛する心で人を愛する、これが仁であり、人の心です。鳥や獣は自分の身を愛することだけを知って、ほかのものを愛しません。人がもし不仁で、ただ自分の身を愛して人を愛さないなら、人の心ではありません。鳥や獣とどう違うでしょうか。不仁であれば人の心を失っているので、そのほかの才能がどれほど優れていても、見るに足りません。

解説

仁愛こそ人を人たらしめる心だと、短く強く言い切る段です。自分だけを愛するのは鳥獣と変わらず、不仁であればどれほど才能があっても見るに足りないと益軒は断じます。才より徳を先にするこの考えは、『大和俗訓』全体を通じて繰り返される主題です。能力の高さだけで人を評価しがちな今の組織においても、人を思いやる心を欠いた才能は長い目で見ると周囲を傷つけるという指摘は、採用や人材登用を考える際の大切な視点になります。

この章句が説くこと

仁不仁才能人の心徳

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