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初学訓 / 巻之一

一天地の大德をうけて、人の心に生れつきたる德を、名づけて仁といふ。德とは、生れつきて、我が物にし得たる善をいふ。仁は、卽ち人の心に備はれるあはれみめぐみの德なり。是、人となれる者の、天にうけたる性なり。此心を失はずして、人をあはれみ、物をめぐむをいふ。此理をうまれつきたるを、性といふ。此心を失はざるは、天地にしたがひてつかへ奉る道なり。もし此心を失へば、卽ち天地の御心に背きて、人の道を失ふなり。

新字:一天地の大徳をうけて、人の心に生れつきたる徳を、名づけて仁といふ。徳とは、生れつきて、我が物にし得たる善をいふ。仁は、即ち人の心に備はれるあはれみめぐみの徳なり。是、人となれる者の、天にうけたる性なり。此心を失はずして、人をあはれみ、物をめぐむをいふ。此理をうまれつきたるを、性といふ。此心を失はざるは、天地にしたがひてつかへ奉る道なり。もし此心を失へば、即ち天地の御心に背きて、人の道を失ふなり。

書き下し

一天地の大徳をうけて、人の心に生れつきたる徳を、名づけて仁といふ。徳とは、生れつきて、我が物にし得たる善をいふ。仁は、即ち人の心に備はれるあはれみめぐみの徳なり。是、人となれる者の、天にうけたる性なり。此心を失はずして、人をあはれみ、物をめぐむをいふ。此理をうまれつきたるを、性といふ。此心を失はざるは、天地にしたがひてつかへ奉る道なり。もし此心を失へば、即ち天地の御心に背きて、人の道を失ふなり。

現代語訳

天地の大いなる徳を受けて、人の心に生まれついた徳を名づけて仁といいます。徳とは、生まれつき自分のものとして得ている善をいいます。仁とは、人の心に備わっている憐れみと恵みの徳です。これは、人として生まれた者が天から受けた性です。この心を失わずに、人を憐れみ、物に恵みを施すことをいいます。この理を生まれつき持っていることを性といいます。この心を失わないことが、天地に従って仕える道です。もしこの心を失えば、天地の御心に背いて、人の道を失うのです。

解説

徳と性という朱子学の基本語を、益軒は平易に定義します。徳とは生まれつき自分のものとして得た善、性とはその理を生まれ持っていることです。「徳」の字を「得」と同じ音で解く説明は、朱子の注釈にも見られる古典的な解き方です。つまり仁は外から身につけるものではなく、もともと心に備わっているものであり、学びとはそれを失わないようにすることなのです。現代の言葉でいえば、人には本来思いやりの力があり、それを曇らせない生き方が求められているということです。

この章句が説くこと

仁徳性本性憐れみ

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