大和俗訓 / 巻之三・心術上
一およそ人の心、必仁義禮智の性あるゆるに、良心時におこる。其良心をむなしくせずして、擴充つべし。おしひろめみつとは、善心の僅におこるをそこなはずして、そだて養ひ、さかんならしめ、其分量を十分にみてゝ、いづくにも行きわたらしむるを云ふ。たとへば水のはじめて流れ出づるを、せき止めずして流し、火のはじめてもえ出づるを打消さずして、さかんにおこらしむるが如くすべし。此良心をおしひろめば、遠き四海ををさめて餘あり。おしひろめざれば、近き父母に事ふるだにも足らず。これ孟子の說、殊に親切なるゝなり。學者必服膺して、つとめ行ふべし。
新字:一およそ人の心、必仁義礼智の性あるゆるに、良心時におこる。其良心をむなしくせずして、擴充つべし。おしひろめみつとは、善心の僅におこるをそこなはずして、そだて養ひ、さかんならしめ、其分量を十分にみてゝ、いづくにも行きわたらしむるを云ふ。たとへば水のはじめて流れ出づるを、せき止めずして流し、火のはじめてもえ出づるを打消さずして、さかんにおこらしむるが如くすべし。此良心をおしひろめば、遠き四海ををさめて余あり。おしひろめざれば、近き父母に事ふるだにも足らず。これ孟子の説、殊に親切なるゝなり。学者必服膺して、つとめ行ふべし。
書き下し
一およそ人の心、必仁義礼智の性あるゆるに、良心時におこる。其良心をむなしくせずして、擴充つべし。おしひろめみつとは、善心の僅におこるをそこなはずして、そだて養ひ、さかんならしめ、其分量を十分にみてて、いづくにも行きわたらしむるを云ふ。たとへば水のはじめて流れ出づるを、せき止めずして流し、火のはじめてもえ出づるを打消さずして、さかんにおこらしむるが如くすべし。此良心をおしひろめば、遠き四海ををさめて余あり。おしひろめざれば、近き父母に事ふるだにも足らず。これ孟子の説、殊に親切なるるなり。学者必服膺して、つとめ行ふべし。
現代語訳
およそ人の心には、必ず仁義礼智の本性があるので、良心が時に起こります。その良心を無駄にせず、おし広めて満たすべきです。おし広め満たすとは、善い心がわずかに起こったのを損なわずに、育て養い、盛んにして、その分量を十分に満たし、どこにでも行き渡らせることをいいます。たとえば水が初めて流れ出るのをせき止めずに流し、火が初めて燃え出るのを打ち消さずに、盛んに起こさせるようにすべきです。この良心をおし広めれば、遠い四海を治めてなお余りがあります。おし広めなければ、身近な父母に仕えることさえ足りません。これは孟子の説で、ことに身に切実なものです。学ぶ者は必ず心に刻んで、努めて行うべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・雍也篇宰我問いて曰く、「仁者は之に告げて『井に仁有り』と曰うと雖も、其れ之に従わんか。」子曰く、「何為れぞ其れ然らんや。君子は逝かしむ可きも、陥る可からず。欺く可きも、罔う可からず。」
-
論語・八佾篇子曰く、人にして仁ならずんば、礼を如(いかん)せん;人にして仁ならずんば、楽を如せん。
-
論語・憲問篇「克・伐・怨・欲、行われずんば、以て仁と為す可きか。」子曰く、「以て難しと為す可し。仁は則ち吾知らざるなり。」
-
論語・里仁篇子曰わく、不仁者は久しく約に処るべからず、長く楽に処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす。
-
論語・里仁篇子曰わく、ただ仁者のみよく人を好み、よく人を悪む。
-
論語・微子篇微子これを去り、箕子これに為に奴となり、比干諫めて死す。孔子曰わく、殷に三仁有り。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る