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大和俗訓 / 巻之三・心術上

一人にまじはるに愛敬の二を心法とす。是簡要のことなり。誰も知らずんばあるべからず。愛とは人をあはれむを云ふ。惡まざるなり。敬とは人をうやまふを云ふ。侮らざるなり。人をあはれむは仁なり。人を敬ふは禮なり。仁禮を心の内にたもちて、人をあはれみ、人をうやまふ事、わするべからず。是人に對して行ふべき善なり。父母をあはれみ、主君をうやまふは、いふに及ばず、うとき人、いやしき人に對すとも、其位にしたがひて、よきほどに愛敬すべし。侮りおろそかにすべからず。是人にまじはる道なり。

新字:一人にまじはるに愛敬の二を心法とす。是簡要のことなり。誰も知らずんばあるべからず。愛とは人をあはれむを云ふ。悪まざるなり。敬とは人をうやまふを云ふ。侮らざるなり。人をあはれむは仁なり。人を敬ふは礼なり。仁礼を心の内にたもちて、人をあはれみ、人をうやまふ事、わするべからず。是人に対して行ふべき善なり。父母をあはれみ、主君をうやまふは、いふに及ばず、うとき人、いやしき人に対すとも、其位にしたがひて、よきほどに愛敬すべし。侮りおろそかにすべからず。是人にまじはる道なり。

書き下し

一人にまじはるに愛敬の二を心法とす。是簡要のことなり。誰も知らずんばあるべからず。愛とは人をあはれむを云ふ。悪まざるなり。敬とは人をうやまふを云ふ。侮らざるなり。人をあはれむは仁なり。人を敬ふは礼なり。仁礼を心の内にたもちて、人をあはれみ、人をうやまふ事、わするべからず。是人に対して行ふべき善なり。父母をあはれみ、主君をうやまふは、いふに及ばず、うとき人、いやしき人に対すとも、其位にしたがひて、よきほどに愛敬すべし。侮りおろそかにすべからず。是人にまじはる道なり。

現代語訳

人と交わるには、愛と敬の二つを心の法とします。これは簡潔で肝要なことです。誰もが知っておかなければなりません。愛とは人をあわれむことをいいます。憎まないことです。敬とは人をうやまうことをいいます。侮らないことです。人をあわれむのは仁です。人をうやまうのは礼です。仁と礼を心の内に保って、人をあわれみ、人をうやまうことを忘れてはいけません。これが人に対して行うべき善です。父母をあわれみ、主君をうやまうのは言うまでもなく、疎遠な人や身分の低い人に対しても、その立場に応じて、ほどよく愛し敬うべきです。侮ったりおろそかにしたりしてはいけません。これが人と交わる道です。

解説

人間関係の心得を「愛」と「敬」の二字にまとめた短い段です。愛は仁、敬は礼にあたり、憎まないこと、侮らないことと言い換えています。益軒は、親や主君だけでなく、疎遠な人や身分の低い人にも、立場に応じてほどよく愛敬を向けよと説きます。身分制の時代にあって、相手を選ばず侮らないことを強調している点が注目されます。職場で立場の弱い人や初対面の人にどう接するかを考えるとき、憎まない・侮らないという二つの基準はとても使いやすい物差しです。

この章句が説くこと

愛敬仁礼人間関係

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