大和俗訓 / 巻之三・心術上
一天地の、人をあはれみ惠み給ふ事かぎりなし。食物、衣服、居所、器物、もろもろの、人の身を養ふ物を生じて與へ給ふ。もろもろの人、是をとりて用ひ、我が身をやしなふ。天下の人、たかきもひきゝも、一人も其めぐみを受けざる人なし。其恩の深く高き事、海山にもくらべがたく、言語にも述べがたし。又藥物を生じて病を救ふ。凡世にあらゆるよろづの物、人の身を養ひ助くる品々、多き事あけて數ふべからず。是皆天地の、人をあつくめぐみ給ふ所なり。天地の、禽獸を養ふ事は、人を養ひたまふ百分が一にもあらず。其上、禽獸は人にころされて食と成り、草木はきられて用となる。然れば、人の、萬物より貴くして、天地の厚きめぐみをうくる事、思ひ知るべし。
新字:一天地の、人をあはれみ恵み給ふ事かぎりなし。食物、衣服、居所、器物、もろもろの、人の身を養ふ物を生じて与へ給ふ。もろもろの人、是をとりて用ひ、我が身をやしなふ。天下の人、たかきもひきゝも、一人も其めぐみを受けざる人なし。其恩の深く高き事、海山にもくらべがたく、言語にも述べがたし。又薬物を生じて病を救ふ。凡世にあらゆるよろづの物、人の身を養ひ助くる品々、多き事あけて数ふべからず。是皆天地の、人をあつくめぐみ給ふ所なり。天地の、禽獣を養ふ事は、人を養ひたまふ百分が一にもあらず。其上、禽獣は人にころされて食と成り、草木はきられて用となる。然れば、人の、万物より貴くして、天地の厚きめぐみをうくる事、思ひ知るべし。
書き下し
一天地の、人をあはれみ恵み給ふ事かぎりなし。食物、衣服、居所、器物、もろもろの、人の身を養ふ物を生じて与へ給ふ。もろもろの人、是をとりて用ひ、我が身をやしなふ。天下の人、たかきもひききも、一人も其めぐみを受けざる人なし。其恩の深く高き事、海山にもくらべがたく、言語にも述べがたし。又薬物を生じて病を救ふ。凡世にあらゆるよろづの物、人の身を養ひ助くる品々、多き事あけて数ふべからず。是皆天地の、人をあつくめぐみ給ふ所なり。天地の、禽獣を養ふ事は、人を養ひたまふ百分が一にもあらず。其上、禽獣は人にころされて食と成り、草木はきられて用となる。然れば、人の、万物より貴くして、天地の厚きめぐみをうくる事、思ひ知るべし。
現代語訳
天地が人をあわれみ恵んでくださることは限りがありません。食物、衣服、住まい、器物など、さまざまな、人の身を養うものを生み出して与えてくださいます。すべての人はこれを取って用い、自分の身を養っています。天下の人は、身分の高い人も低い人も、一人としてその恵みを受けていない人はいません。その恩の深く高いことは、海や山にも比べがたく、言葉にも言い尽くせません。また薬を生み出して病を救ってくださいます。およそ世にあるあらゆる物、人の身を養い助ける品々は、多くて数え上げることができません。これはみな天地が人を厚く恵んでくださるところです。天地が鳥獣を養うのは、人を養ってくださるのの百分の一にも及びません。そのうえ、鳥獣は人に殺されて食べ物となり、草木は切られて用材となります。ですから、人が万物より貴く、天地の厚い恵みを受けていることを、思い知るべきです。
解説
この章句が説くこと
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