大和俗訓 / 巻之一・為学上
三十歳以後は、よろづつとめ多くなりて、いとますくなく、精力やうやうよわくなるにしたがひて、其覺えおとろへぬれば、力を多く用ひてもわすれやすく、勞すれども功すくなし。年少なる人は、これをよく心得て、わかき時隙ををしみ、學問をつとむべし。誠に一生の寶となるべし。淵明が詩に曰、盛年不重來、一日難再晨、及時當勉勵、歲月不待人。又古詩に、少壯不努力、老大徒傷悲といへり。わかき時是をよく考へ、後悔なからんことを思ひて、時日ををしみてつとむべし。又よくつとむれども、學問の術をえらばざれば、一生益なきことにまよひ、心を用ひくるしみて、よき道を知らず。是亦おろかなりといふべし。
新字:三十歳以後は、よろづつとめ多くなりて、いとますくなく、精力やうやうよわくなるにしたがひて、其覚えおとろへぬれば、力を多く用ひてもわすれやすく、労すれども功すくなし。年少なる人は、これをよく心得て、わかき時隙ををしみ、学問をつとむべし。誠に一生の宝となるべし。淵明が詩に曰、盛年不重来、一日難再晨、及時当勉励、歳月不待人。又古詩に、少壮不努力、老大徒傷悲といへり。わかき時是をよく考へ、後悔なからんことを思ひて、時日ををしみてつとむべし。又よくつとむれども、学問の術をえらばざれば、一生益なきことにまよひ、心を用ひくるしみて、よき道を知らず。是亦おろかなりといふべし。
書き下し
三十歳以後は、よろづつとめ多くなりて、いとますくなく、精力やうやうよわくなるにしたがひて、其覚えおとろへぬれば、力を多く用ひてもわすれやすく、労すれども功すくなし。年少なる人は、これをよく心得て、わかき時隙ををしみ、学問をつとむべし。誠に一生の宝となるべし。淵明が詩に曰く、盛年重ねて来らず、一日再び晨なり難し、時に及んで当に勉励すべし、歳月人を待たず。又古詩に、少壮努力せずんば、老大徒らに傷悲せんといへり。わかき時是をよく考へ、後悔なからんことを思ひて、時日ををしみてつとむべし。又よくつとむれども、学問の術をえらばざれば、一生益なきことにまよひ、心を用ひくるしみて、よき道を知らず。是亦おろかなりといふべし。
現代語訳
三十歳以後は、何事も務めが多くなって暇が少なく、精力がだんだん弱くなるにつれて記憶も衰えてしまうので、力を多く使っても忘れやすく、苦労しても成果が少ないのです。年少の人は、これをよく心得て、若いときに暇を惜しんで学問に努めるべきです。まことに一生の宝となるでしょう。陶淵明の詩に「盛りの年は再び来ない、一日に二度の朝はない、時に及んで励むべきである、歳月は人を待たない」とあります。また古詩に「若く盛んなときに努力しなければ、老いてからむなしく嘆き悲しむ」とあります。若いときにこれをよく考え、後悔のないように思って、時を惜しんで努めるべきです。また、よく努めても学問の方法を選ばなければ、一生益のないことに迷い、心を用いて苦しんでも、よい道を知りません。これもまた愚かだというべきです。
解説
この章句が説くこと
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