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大和俗訓 / 巻之一・為学上

一幼よりつとめまなぶに、ひまを惜むべし。いにしへの禹王は、聖人なりしだに、猶寸陰ををしみ給ふ。いはんや今の凡人をや。いたづらに悠々として、むなしく時日をつひやすべからず。光陰箭のごとく、時節は流るゝがごとくなれば、年わかきをたのんで、時をうしなふべからず。人の世にあるは、老幼の時と、やまひする時は學びがたし。又四民ともに、其家のことわざしげくして、もの學ぶひまはすくなし。其すくなき隙ををしまず、怠りてむなしく過ぎ、或は無益の事をなして、時を費し、生をはかなくをはらん事、いと愚なりといふべし。今年の今日、ふたゝび得がたきことを思ひて、かりにも、徒に時をわたるべからず。是一生の間心を用ふべきことなり。

新字:一幼よりつとめまなぶに、ひまを惜むべし。いにしへの禹王は、聖人なりしだに、猶寸陰ををしみ給ふ。いはんや今の凡人をや。いたづらに悠々として、むなしく時日をつひやすべからず。光陰箭のごとく、時節は流るゝがごとくなれば、年わかきをたのんで、時をうしなふべからず。人の世にあるは、老幼の時と、やまひする時は学びがたし。又四民ともに、其家のことわざしげくして、もの学ぶひまはすくなし。其すくなき隙ををしまず、怠りてむなしく過ぎ、或は無益の事をなして、時を費し、生をはかなくをはらん事、いと愚なりといふべし。今年の今日、ふたゝび得がたきことを思ひて、かりにも、徒に時をわたるべからず。是一生の間心を用ふべきことなり。

書き下し

一幼よりつとめまなぶに、ひまを惜むべし。いにしへの禹王は、聖人なりしだに、猶寸陰ををしみ給ふ。いはんや今の凡人をや。いたづらに悠々として、むなしく時日をつひやすべからず。光陰箭のごとく、時節は流るるがごとくなれば、年わかきをたのんで、時をうしなふべからず。人の世にあるは、老幼の時と、やまひする時は学びがたし。又四民ともに、其家のことわざしげくして、もの学ぶひまはすくなし。其すくなき隙ををしまず、怠りてむなしく過ぎ、或は無益の事をなして、時を費し、生をはかなくをはらん事、いと愚なりといふべし。今年の今日、ふたたび得がたきことを思ひて、かりにも、徒に時をわたるべからず。是一生の間心を用ふべきことなり。

現代語訳

一、幼いときから努めて学ぶのに、暇を惜しむべきです。昔の禹王は聖人でありながら、なお寸陰を惜しまれました。まして今の凡人はなおさらです。むだにのんびりして、むなしく月日を費やしてはなりません。月日は矢のように、時は流れるように過ぎるので、若いのを頼んで時を失ってはなりません。人が世にあるうち、老いと幼いときと病気のときは学びにくいのです。また士農工商ともに、その家の仕事が忙しくて、ものを学ぶ暇は少ないのです。その少ない暇を惜しまず、怠けてむなしく過ごし、あるいは無益なことをして時を費やし、一生をはかなく終えるのは、まことに愚かだというべきです。今年の今日は二度と得がたいことを思って、かりにもむだに時を過ごしてはなりません。これは一生の間心を用いるべきことです。

解説

時間を惜しんで学べと説く段です。禹王が寸陰を惜しんだという話は、頭注によれば晋の陶侃の言葉として伝わるものです。益軒は、幼いときと老いたとき、病気のときは学びにくく、働き盛りは仕事で忙しいと、学べる時間がいかに限られているかを具体的に示します。「今年の今日、再び得がたし」という言葉は胸に響きます。忙しくて学ぶ時間がないと感じる人こそ、すきま時間を惜しむことが学びを続ける鍵になるでしょう。

この章句が説くこと

寸陰時間学問禹王勤勉

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