導師導古典を学びたいすべての人に

大和俗訓 / 巻之一・為学上

殊に國土ををさむる人の明なる鏡なり。又軍の勝敗の道を記して、兵術を學ぶ人にも甚益あり。古來要用の故事も、亦此内に多し。彼是尤益多し。つとめて數遍見るべし。誠に經世の大典とすべし。其外、和漢の記錄、力にまかせて見るべし。又いとまあらば、諸子百家の書を見て經說を發明し、義理の趣をひろむべし。しかれども、もはら博覽をつとめて、雜學にうつり、志をうしなふべからず。學問は博くして、又約にすべし。博ければ、義理詳かにして備らずといふことなし。約なれば義理精しくして明ならずといふことなし。博く學ぶにいとまなく、又中年以後はじめて學ぶ人は、約にすべし。古人も、博くして雜なるは、約にしてくはしきに如かずといへり。

新字:殊に国土ををさむる人の明なる鏡なり。又軍の勝敗の道を記して、兵術を学ぶ人にも甚益あり。古来要用の故事も、亦此内に多し。彼是尤益多し。つとめて数遍見るべし。誠に経世の大典とすべし。其外、和漢の記録、力にまかせて見るべし。又いとまあらば、諸子百家の書を見て経説を発明し、義理の趣をひろむべし。しかれども、もはら博覧をつとめて、雑学にうつり、志をうしなふべからず。学問は博くして、又約にすべし。博ければ、義理詳かにして備らずといふことなし。約なれば義理精しくして明ならずといふことなし。博く学ぶにいとまなく、又中年以後はじめて学ぶ人は、約にすべし。古人も、博くして雑なるは、約にしてくはしきに如かずといへり。

書き下し

殊に国土ををさむる人の明なる鏡なり。又軍の勝敗の道を記して、兵術を学ぶ人にも甚益あり。古来要用の故事も、亦此内に多し。彼是尤益多し。つとめて数遍見るべし。誠に経世の大典とすべし。其外、和漢の記録、力にまかせて見るべし。又いとまあらば、諸子百家の書を見て経説を発明し、義理の趣をひろむべし。しかれども、もはら博覧をつとめて、雑学にうつり、志をうしなふべからず。学問は博くして、又約にすべし。博ければ、義理詳かにして備らずといふことなし。約なれば義理精しくして明ならずといふことなし。博く学ぶにいとまなく、又中年以後はじめて学ぶ人は、約にすべし。古人も、博くして雑なるは、約にしてくはしきに如かずといへり。

現代語訳

とくに国を治める人にとって明らかな鏡です。また戦の勝敗の道を記しているので、兵術を学ぶ人にもたいへん益があります。古来の大切な故事も、この中に多くあります。あれこれと最も益が多いのです。努めて何度も見るべきです。まことに世を治める大典とすべきです。そのほか、日本と中国の記録を力に応じて見るべきです。また暇があれば、諸子百家の書を見て経書の説を明らかにし、義理の趣を広めるべきです。けれども、もっぱら博覧に努めて雑学に移り、志を失ってはなりません。学問は博くして、また約にすべきです。博ければ義理が詳しくて備わらないことはありません。約であれば義理が精しくて明らかでないことはありません。博く学ぶ暇がない人や、中年以後に初めて学ぶ人は、約にすべきです。古人も「博くて雑なのは、約で精しいのに及ばない」と言いました。

解説

『綱目』を治世と兵術の両方に役立つ書として推したうえで、学問の「博」と「約」の関係を説く段です。博は広く学ぶこと、約は要点を絞って深めることで、『論語』雍也篇の「博く文を学び、之を約するに礼を以てす」に通じます。益軒は、時間のない人や中年から学ぶ人は約にせよと現実的な助言をしています。あれこれ手を広げて何も身につかないより、絞って深く学ぶほうがよい。社会人の学び直しにそのまま当てはまる考え方です。

この章句が説くこと

博約読書雑学学び直し学問

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る