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大和俗訓 / 巻之一・為学上

聖人の書を經と云ふ。經とは常なり。聖人の言は萬世の常道なり。賢人の書を傳といふ。傳とは聖人の道を述べ、後代に傳ふるなり。四書五經は經なり。其註竝に周程張朱の書は傳なり。歴代の事をしるせる書を史と云ふ。記錄のことなり。子は荀子、楊子、淮南子、說苑、文中子等の諸氏の書を云ふ。是は程朱の書のごとく、道理精明なるにはあらざれども、經書の義理を助くる益あり、見るべし。集は諸家の文章等の書なり。是又義理を說明せり。此經史子集の四の書は、本末輕重あれども、皆學問のため用ある書なり。道を知らんとならば、經學を專らとして、一生つとむべし。次に史學、是も其益大なり。次に諸子諸集を見るべし。朱子綱目、尤好書なり。古代の治亂盛衰の事跡をしるのみにあらず、義理の學にも、亦大に助あり。

新字:聖人の書を経と云ふ。経とは常なり。聖人の言は万世の常道なり。賢人の書を伝といふ。伝とは聖人の道を述べ、後代に伝ふるなり。四書五経は経なり。其註並に周程張朱の書は伝なり。歴代の事をしるせる書を史と云ふ。記録のことなり。子は荀子、楊子、淮南子、説苑、文中子等の諸氏の書を云ふ。是は程朱の書のごとく、道理精明なるにはあらざれども、経書の義理を助くる益あり、見るべし。集は諸家の文章等の書なり。是又義理を説明せり。此経史子集の四の書は、本末軽重あれども、皆学問のため用ある書なり。道を知らんとならば、経学を専らとして、一生つとむべし。次に史学、是も其益大なり。次に諸子諸集を見るべし。朱子綱目、尤好書なり。古代の治乱盛衰の事跡をしるのみにあらず、義理の学にも、亦大に助あり。

書き下し

聖人の書を経と云ふ。経とは常なり。聖人の言は万世の常道なり。賢人の書を伝といふ。伝とは聖人の道を述べ、後代に伝ふるなり。四書五経は経なり。其註並に周程張朱の書は伝なり。歴代の事をしるせる書を史と云ふ。記録のことなり。子は荀子、楊子、淮南子、説苑、文中子等の諸氏の書を云ふ。是は程朱の書のごとく、道理精明なるにはあらざれども、経書の義理を助くる益あり、見るべし。集は諸家の文章等の書なり。是又義理を説明せり。此経史子集の四の書は、本末軽重あれども、皆学問のため用ある書なり。道を知らんとならば、経学を専らとして、一生つとむべし。次に史学、是も其益大なり。次に諸子諸集を見るべし。朱子綱目、尤も好書なり。古代の治乱盛衰の事跡をしるのみにあらず、義理の学にも、亦大に助あり。

現代語訳

聖人の書を経といいます。経とは常ということです。聖人の言葉は万世の常の道です。賢人の書を伝といいます。伝とは聖人の道を述べて後の世に伝えることです。四書五経は経です。その注と周・程・張・朱の書は伝です。歴代のことを記した書を史といいます。記録のことです。子とは『荀子』『揚子』『淮南子』『説苑』『文中子』などの諸家の書をいいます。これらは程朱の書のように道理が精しく明らかではありませんが、経書の義理を助ける益があるので見るべきです。集とは諸家の文章などの書です。これもまた義理を説き明かしています。この経・史・子・集の四つの書は、本末・軽重はありますが、みな学問のために役立つ書です。道を知ろうとするなら、経学を専らとして一生努めるべきです。次に史学、これもその益は大きいのです。次に諸子や諸集を見るべきです。朱子の『綱目』はとくによい書です。古代の治乱・盛衰の事跡を知るだけでなく、義理の学問にも大いに助けとなります。

解説

中国の書物の伝統的な分類である経・史・子・集を説明し、学ぶ順序と軽重を示す段です。経は聖人の書で万世の常道、伝はそれを解説した書、史は歴史、子は諸子の書、集は詩文集です。益軒は経学を一生の柱とし、史学を次に、子と集をその後に置きます。とくに朱子の『資治通鑑綱目』を好書として推しています。本の種類ごとに役割があると知っておくと、何を読むか選ぶときに迷いません。自分の本棚を柱と補助に分けて見直すのも一案です。

この章句が説くこと

経学史学読書綱目学問

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