大和俗訓 / 巻之一・為学上
一初學の人書をよむには、まづ四書を熟讀し、又五經をよく讀むべし。五經は上代の聖人の敎なり。文字の祖、義理の宗といひて、文字のはじめ、義理のをしへの本なり。四書は孔門のをしへなり。是をよむは、まのあたり聖賢の敎をきくが如し、尊ぶべし。文義やうやく通ぜば、四書の註、大學中庸の或問を見て、後五經の註を見るべし。次に周程張朱四家の書を見るべし。中につきて、程朱の書尤よく讀むべし。ことに小學の書は、身ををさむる大法をしるせり。人倫の道ほゞ備れり。はやく讀んで、其義を習ひ知るべし。又歷代の史、左傳、史記、朱子通鑑綱目を見るべし。是道を知り、古今に通ずる學問の法なり。經傳及歴代の史に通ぜば、天下古今の事理、明ならずといふ事なかるべし。
新字:一初学の人書をよむには、まづ四書を熟読し、又五経をよく読むべし。五経は上代の聖人の教なり。文字の祖、義理の宗といひて、文字のはじめ、義理のをしへの本なり。四書は孔門のをしへなり。是をよむは、まのあたり聖賢の教をきくが如し、尊ぶべし。文義やうやく通ぜば、四書の註、大学中庸の或問を見て、後五経の註を見るべし。次に周程張朱四家の書を見るべし。中につきて、程朱の書尤よく読むべし。ことに小学の書は、身ををさむる大法をしるせり。人倫の道ほゞ備れり。はやく読んで、其義を習ひ知るべし。又歴代の史、左伝、史記、朱子通鑑綱目を見るべし。是道を知り、古今に通ずる学問の法なり。経伝及歴代の史に通ぜば、天下古今の事理、明ならずといふ事なかるべし。
書き下し
一初学の人書をよむには、まづ四書を熟読し、又五経をよく読むべし。五経は上代の聖人の教なり。文字の祖、義理の宗といひて、文字のはじめ、義理のをしへの本なり。四書は孔門のをしへなり。是をよむは、まのあたり聖賢の教をきくが如し、尊ぶべし。文義やうやく通ぜば、四書の註、大学中庸の或問を見て、後五経の註を見るべし。次に周程張朱四家の書を見るべし。中につきて、程朱の書尤よく読むべし。ことに小学の書は、身ををさむる大法をしるせり。人倫の道ほぼ備れり。はやく読んで、其義を習ひ知るべし。又歴代の史、左伝、史記、朱子通鑑綱目を見るべし。是道を知り、古今に通ずる学問の法なり。経伝及歴代の史に通ぜば、天下古今の事理、明ならずといふ事なかるべし。
現代語訳
一、初学の人が書を読むには、まず四書を熟読し、また五経をよく読むべきです。五経は上代の聖人の教えです。文字の祖、義理の宗といって、文字の始まり、義理の教えの本です。四書は孔子の門の教えです。これを読むのは、目の前で聖賢の教えを聞くようなもので、尊ぶべきです。文の意味がだんだん通じてきたら、四書の注や『大学』『中庸』の或問を見て、その後に五経の注を見るべきです。次に周・程・張・朱の四家の書を見るべきです。中でも程朱の書を最もよく読むべきです。とくに『小学』の書は、身を修める大法を記しています。人倫の道がほぼ備わっています。早く読んでその意味を習い知るべきです。また歴代の史書、『左伝』『史記』、朱子の『通鑑綱目』を見るべきです。これが道を知り、古今に通じる学問の方法です。経伝と歴代の史書に通じれば、天下古今の事理で明らかでないことはないでしょう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『大和俗訓』巻之一・為学上聖人の書を経と云ふ。経とは常なり。聖人の言は万世の常道なり。賢人の書を伝といふ。伝とは聖人の道を述べ、後代に伝ふるなり。四書五経は経なり。其註並に周程張朱の書は伝なり。歴代の事をしるせる書を史と云ふ。記録のことなり。子は荀子、楊子、淮南子、説苑、文中子等の諸氏の書を云ふ。是は程朱の書のごとく、道理精明なるにはあらざれども、経書の義理を助くる益あり、見るべし。集は諸家の文章等の書なり。是又義理を説明せり。此経史子集の四の書は、本末軽重あれども、皆学問のため用ある書なり。道を知らんとならば、経学を専らとして、一生つとむべし。次に史学、是も其益大なり。次に諸子諸集を見るべし。朱子綱目、尤も好書なり。古代の治乱盛衰の事跡をしるのみにあらず、義理の学にも、亦大に助あり。
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『大和俗訓』巻之一・為学上一書をよむには、まづ四書五経などを熟読し、文字を多くおぼえて、訓詁に通ずべし。訓詁とは字義をいふ。文字訓詁を知らざれば、書を見わけがたく、力なくして書を読むにはか行かず。文学のすすまざるは、字を知らざればなり。されども文字訓詁にかかはり止まりて、義理を自得せざるは、君子の学にあらず。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一書を読み学問する法、年若く記臆強き時、四書五経を常に熟読し、遍数を如何程も多く重ねて、記誦すべし。小児の時に限らず、老年に至りても、常に循環して読むべし。是義理の学問の根本となるのみならず、又文章を学ぶ法則となる。次に左伝を数十遍看読すべし。其益多し。是学問の要訣なり、知らずんばあるべからず。
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『文武訓』文訓下之末一小学の書の文義に通ぜば、其力を以て、類を以ておして四書を見るべし。四書を見て其文義に通ぜば、六経に通ずべし。しからば、小学を以て身を修むるの大法とするのみならず、又経学の基とすべし。一初学の人、朝には経伝を見、朝飯後には経書をよみ、昼は史漢の書を見、或は、諸子諸集を見、文字を書きならひ、法帖をうつし、飯後には頭面腹をなで、園圃を歩行する事数百歩、道遥して精神を舒暢すべし。晩飯の後は弓を射、其余の武芸をも習ふべし。夜は又経伝をよみ、或は経史子集の要語を読み、唐詩を誦し和歌をよむべし。故事古語をよみ覚ゆべし。夜臥にのぞんでは、一日の中の言行を点検して、あやまりすくなくんば心安く寝ぬべし。毎日如斯すべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法右の名目小篇などを読み覚えて後、経書を教ふべし。初より文句長き読み難き経書を教へて、其気を屈せしむべからず。経書を教ふるには、まづ孝経の首章、次に論語学而の篇を読ましめ、皆熟読して後、その要義をもあらあら説き聞かすべし。小学四書は、最初より読みにくし。故にまづ右に云ふ所の文句の短きものを多く読ませて、次に小学を読ませ、後に四書五経を読ましむべし。
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『大和俗訓』巻之二・為学下一学者はまづ孝弟忠信を先として、常に善を好み、人を愛するを以て志として、日々につとめて善を行ふべし。書をよむをば第二義とすべし。第一、善を好まざれば、書を読んでも、道を行ふべき基なし。万巻の書を読むとも、無用の事なるべし。大学誠意の章をよく味ひて、善を好み悪を嫌ふに誠あるべし。
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