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大和俗訓 / 巻之一・為学上

一理をきはむるも、事を知るも、一重に物を思ふべからず。浦のはまゆふの百重なる事を思ひて、幾重にも理をきはむべし。心あさき人は、一重を知りて、はやことわり至極して、此上なしと思ふは、はかなきことなり。今日一重をさりて、明日又一重をさり、日々かくのごとくすべし。皮をつくして肉を見、肉をつくして骨を見、骨をつくして髓を見るべし。凡理をきはむる學問は、心あらくかろき人は、なし得べからず。心くはしく靜かにすべし。

新字:一理をきはむるも、事を知るも、一重に物を思ふべからず。浦のはまゆふの百重なる事を思ひて、幾重にも理をきはむべし。心あさき人は、一重を知りて、はやことわり至極して、此上なしと思ふは、はかなきことなり。今日一重をさりて、明日又一重をさり、日々かくのごとくすべし。皮をつくして肉を見、肉をつくして骨を見、骨をつくして髄を見るべし。凡理をきはむる学問は、心あらくかろき人は、なし得べからず。心くはしく静かにすべし。

書き下し

一理をきはむるも、事を知るも、一重に物を思ふべからず。浦のはまゆふの百重なる事を思ひて、幾重にも理をきはむべし。心あさき人は、一重を知りて、はやことわり至極して、此上なしと思ふは、はかなきことなり。今日一重をさりて、明日又一重をさり、日々かくのごとくすべし。皮をつくして肉を見、肉をつくして骨を見、骨をつくして髄を見るべし。凡理をきはむる学問は、心あらくかろき人は、なし得べからず。心くはしく静かにすべし。

現代語訳

一、理を極めるのも、事を知るのも、一重だけで物を考えてはなりません。浦の浜木綿が百重に重なっていることを思って、幾重にも理を極めるべきです。心の浅い人は、一重を知っただけで、もう道理を極め尽くして、これ以上はないと思うのは、はかないことです。今日一重をはがし、明日また一重をはがし、毎日このようにすべきです。皮を尽くして肉を見、肉を尽くして骨を見、骨を尽くして髄を見るべきです。おおよそ理を極める学問は、心が粗く軽い人にはできません。心を細かく静かにすべきです。

解説

浜木綿が百重に重なっているというのは、柿本人麻呂の「み熊野の浦の浜木綿百重なす」の歌で知られる表現です。益軒はこれを、道理を幾重にも掘り下げることのたとえに使いました。皮から肉、肉から骨、骨から髄へと、表面で満足せず奥へ奥へと進めというのです。一度わかったと思った瞬間に学びは止まります。仕事の問題でも、表面の原因の奥にもう一段深い原因があることは少なくありません。粘り強く考え抜く姿勢の大切さを教えてくれる一節です。

この章句が説くこと

窮理探究思考学問和歌

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