大和俗訓 / 巻之一・為学上
一凡致知の法は、五常五倫の道を知るを以て先とし、家をとゝのへて、民ををさむる理にいたるべし。次に萬事萬物の道理をも知りきはむべし。天地の内にあらゆる萬事萬物は、皆我が心の分內の事なれば、其理を知らずんばあるべからず。天下の理をきはめ知るの道は、本と近きとを先とし、末と遠きとを後にして、前後緩急の次第を失ふべからず。
新字:一凡致知の法は、五常五倫の道を知るを以て先とし、家をとゝのへて、民ををさむる理にいたるべし。次に万事万物の道理をも知りきはむべし。天地の内にあらゆる万事万物は、皆我が心の分内の事なれば、其理を知らずんばあるべからず。天下の理をきはめ知るの道は、本と近きとを先とし、末と遠きとを後にして、前後緩急の次第を失ふべからず。
書き下し
一凡致知の法は、五常五倫の道を知るを以て先とし、家をととのへて、民ををさむる理にいたるべし。次に万事万物の道理をも知りきはむべし。天地の内にあらゆる万事万物は、皆我が心の分内の事なれば、其理を知らずんばあるべからず。天下の理をきはめ知るの道は、本と近きとを先とし、末と遠きとを後にして、前後緩急の次第を失ふべからず。
現代語訳
一、おおよそ知を極める方法は、五常五倫の道を知ることを先とし、家を整えて民を治める理に至るべきです。次に万事万物の道理をも知り極めるべきです。天地の内にあるすべての万事万物は、みな自分の心の分内のことなので、その理を知らずにいてはなりません。天下の理を極め知る道は、根本と身近なことを先とし、末と遠いことを後にして、前後・緩急の順序を失ってはなりません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『大和俗訓』巻之二・為学下一大学に、格物致知を以て道理を明かに知るを、身ををさめ人ををさむる勤のはじめとす。格物とは万事万物の道理にきはめ至るを云ひ、致知とはわが心の知をきはめて明かにするなり。格物の次第は、まづ五常五倫の道、身を治め家をととのふるまぢかき事よりして、次第を以て、やうやく国天下ををさむる理にきはめ至る。是格物なり。かくのごとく万事万物につきて理をきはむれば、わが心の知おのづから明かになる。是致知なり。故に格物の外に致知の工夫なし。是大学のつとめのはじめなり。其次は誠意にあり。意とは心のはじめておこる所の苗なり。心の体はしづかにして、善悪いまだあらはれず。其初てうごく時、善も悪もあらはる。意のおこる時に、このむと悪むとの二あり。
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『大和俗訓』巻之二・為学下一学問の要二あり。いまだ知らざる時は知らん事を求め、既に知れらば行ふべし。知らざれば行ひがたし。行はれざれば知らざるに同じく、無用の事となりぬ。ここを以て、学問の道は唯知と行との二にあり。又万巻の書を読んでも、道を知らず行はれざれば、読まざるに同じ。是道に志なければなり。ここを以て、大学の道、まづ格物致知して、事物の理をきはめ、わが知をひらき、さて知れる所の善をこのみ悪をきらふ心実にして、知れる所を行ふ、是誠意なり。知る事いたらざれば、万事の善悪わきまへがたし。意誠ならざれば、善をなし悪をさる事実ならずして、道行はれず。此二は大学の道の要にして、知行の工夫なり。
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『大和俗訓』巻之一・為学上一或人の曰、儒者の学は、唯人道を知らば可ならん。天地の道を知るに及ぶべからず予答へて曰、天地の道は人道の本なり。天地の道を知らざれば、道理のよつて出づる所の根本を知らず。根本を知らざれば、天理の人にそなはり、人の天地にうけたる、天人合一のすぢめを知らずして、人道明ならず。故にまづ日用人倫の道を学んで後、天地の道を学ぶべし。聖人の易を学び給ふも此故ならずや。されども天地の道は、猶容易知りがたし。志を立つる事は、大にして高くすべし。小にしてひきければ、小成に安んじて成就しがたし。天下第一等の人とならんと、平生志すべし。世俗と同じく、賤しくひきくすべからず。かく志をたてて、日々月々につとめ行はば、久しくして其功つもりて、必人にまさるべし。上をまなべば中にいたり、中を学べば下にいたる。下を学べば功をなさず。又心は小にしてひきくすべし。人にへりくだり、日用常行のひききあしもとより行ふべし。心大なれば、おごりてつつしみなく、細行をつとめず。高ければ、人にたかぶりて謙徳を失ふ。
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『五常訓』巻之一・総論一人の心は、ただ仁義礼智信の性なり。人の道は、唯君臣、父子、夫婦、長幼、朋友の人倫の行なり。五常の外に心なく、五倫の外に道なしと知るべし。これを知るは知なり。是を行ふは行なり。此外にさらに心と道とを求むべからず。如何となれば、天の心、天の道にそむけばなり。人となるものは、天地の内に生れ、天地の恵をうけて、身ををはるものなれば、とにかくに天地の道をたふとび、したがひ行ふべし。
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『大和俗訓』巻之一・為学上一凡君子の学問は、知仁勇の三徳を本とし、五倫をあつくするを道とす。知仁勇は五倫の道を行ふ心の徳なり。知は五倫の道をしり、仁は五倫の道を身にたもち行ひ、勇はつとめて知り、つとめて行ふ。知るも行ふも、勇を以てつとむ。君子の学問をするに、其心法とするは三徳なり。行ふべき道とするは五倫なり。三徳と五常とは理同じ。五常はむまれつきたる性なり。三徳は学問をする心法なり。五常をつづめていへり。
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『大和俗訓』巻之二・為学下一学者はまづ孝弟忠信を先として、常に善を好み、人を愛するを以て志として、日々につとめて善を行ふべし。書をよむをば第二義とすべし。第一、善を好まざれば、書を読んでも、道を行ふべき基なし。万巻の書を読むとも、無用の事なるべし。大学誠意の章をよく味ひて、善を好み悪を嫌ふに誠あるべし。
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