大和俗訓 / 巻之二・為学下
一學者はまづ孝弟忠信を先として、常に善を好み、人を愛するを以て志として、日々につとめて善を行ふべし。書をよむをば第二義とすべし。第一、善を好まざれば、書を讀んでも、道を行ふべき基なし。萬卷の書を讀むとも、無用の事なるべし。大學誠意の章をよく味ひて、善を好み惡を嫌ふに誠あるべし。
新字:一学者はまづ孝弟忠信を先として、常に善を好み、人を愛するを以て志として、日々につとめて善を行ふべし。書をよむをば第二義とすべし。第一、善を好まざれば、書を読んでも、道を行ふべき基なし。万巻の書を読むとも、無用の事なるべし。大学誠意の章をよく味ひて、善を好み悪を嫌ふに誠あるべし。
書き下し
一学者はまづ孝弟忠信を先として、常に善を好み、人を愛するを以て志として、日々につとめて善を行ふべし。書をよむをば第二義とすべし。第一、善を好まざれば、書を読んでも、道を行ふべき基なし。万巻の書を読むとも、無用の事なるべし。大学誠意の章をよく味ひて、善を好み悪を嫌ふに誠あるべし。
現代語訳
学ぶ者はまず孝・弟・忠・信を先として、いつも善を好み、人を愛することを志として、日々努めて善を行うべきです。書を読むことは第二のこととすべきです。第一に善を好まなければ、書を読んでも、道を行う土台がありません。万巻の書を読んでも、無用のことでしょう。『大学』の誠意の章をよく味わって、善を好み悪を嫌うことに誠があるべきです。
解説
学問の順序を改めて確認する短い条です。親への孝、年長者への弟(悌)、主君への忠、友への信を先にし、読書は第二とせよと言います。これは『論語』学而篇の「行いて余力あらば、則ち以て文を学べ」に通じる考え方です。そのうえで『大学』の誠意の章を味わえと、この巻の初めに説いた誠意に話を戻して締めくくっています。知識より先に人としての基本を、という順序は、子育てや新人教育でも大切にしたいものです。
この章句が説くこと
孝忠信誠意読書善
関連する章句
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『大和俗訓』巻之七・躬行下一忠信を主として偽なく、仁愛深くして人をあはれみ、義理をかたく守りて、行ふべき節を失はず、父母兄弟に孝友をあつくし、主君に仕へて身をわすれ、親戚をしたしみて疎からず、朋友に信実にしてたのもしく、家にありて、厳にして内行正しく、倹約にして奢なく、貧窮をめぐみ、艱難をすくひ、利欲すくなく、権勢をへつらはず、旧恩を忘れず、武をたしなみ、軍用を欠かず、一度約諾したること後まで背かざるを良士とすべし。
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論語・子罕篇子曰く、忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること毋かれ。過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。
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論語・衛霊公篇子張、行を問う。子曰く、「言忠信、行篤敬なれば、蛮貊の邦と雖も行われん。言忠信ならず、行篤敬ならずんば、州里と雖も行われんや。立てば、則ち其の前に参するを見るなり。輿に在れば、則ち其の衡に倚るを見るなり。夫れ然る後に行われん。」子張、諸を紳に書す。
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史記 蒙恬列伝蒙恬は、其の先は斉人なり。恬の大父蒙驁、斉より秦の昭王に事へ、官上卿に至る。秦の荘襄王の元年、蒙驁秦の将と為り、韓を伐ち、成皋・滎陽を取り、三川郡を作置す。二年、蒙驁趙を攻め、三十七城を取る。始皇の三年、蒙驁韓を攻め、十三城を取る。五年、蒙驁魏を攻め、二十城を取り、東郡を作置す。始皇の七年、蒙驁卒す。驁の子を武と曰ひ、武の子を恬と曰ふ。恬嘗て獄を書し文学を典る。始皇の二十三年、蒙武秦の裨将軍と為り、王翦と楚を攻め、大いに之を破り、項燕を殺す。二十四年、蒙武楚を攻め、楚王を虜にす。蒙恬の弟は毅なり。始皇の二十六年、蒙恬家世に因りて秦の将と為るを得、斉を攻め、大いに之を破り、拝して内史と為る。秦已に天下を并せ、乃ち蒙恬をして三十万の衆を将ゐて北のかた戎狄を逐ひ、河南を収めしむ。長城を筑き、地形に因り、用て険塞を制し、臨洮に起こり、遼東に至る。延袤万余里。是に於て河を渡り、陽山に拠り、逶蛇して北す。師を外に暴すこと十余年、上郡に居る。是の時蒙恬の威匈奴を振るはす。始皇甚だ蒙氏を尊寵し、信任して之を賢とす。而して蒙毅を親近し、位上卿に至り、出づれば則ち参乗し、入れば則ち御前にあり。恬は外事に任じて毅は常に内謀を為す。名づけて忠信と為す。故に諸将相と雖も敢て之と争ふ莫し。
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説苑・雜言孔子、呂梁を観る。懸水四十仞、環流九十里、魚鱉過ぐる能わず、黿鼉敢えて居らず。一丈夫有り、方に将に之を渉らんとす。孔子人をして崖に並びて之を止めしめて曰く、「此の懸水四十仞、圜流九十里、魚鱉敢えて過ぎず、黿鼉敢えて居らず、意うに済り難からんか」と。丈夫意に錯かず、遂に渡りて出づ。孔子問う、「子巧みなるか。且つ道術有るか。能く入りて出づる所以は何ぞや」と。丈夫曰く、「始め吾入るや、先ず忠信を以てす。吾の出づるや、又従うに忠信を以てす。忠信吾が軀を波流に錯くも、吾敢えて私を用いず。吾の能く入りて復た出づる所以なり」と。孔子弟子に謂いて曰く、「水すら尚お忠信を以てす可し、義久しくして身之に親しめば、況んや人に於いてをや」と。
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孔子家語・儒行解儒に金玉を宝とせずして、忠信を以て宝と為し、土地を祈らずして、仁義を以て土地と為し、多積を求めずして、多文を以て富と為す有り。得難くして禄し易く、禄し易くして畜い難し。時に非ざれば見えず、亦た難得ならずや。義に非ざれば合わず、亦た難畜ならずや。労を先にして禄を後にす、亦た易禄ならずや。其の人情に近きこと此くの如き者有り。儒に之に委ぬるに財貨を以てして貪らず、之を淹すに楽好を以てして淫せず、之を劫すに衆を以てして懼れず、之を阻むに兵を以てして懾れず、利を見て其の義を虧かず、死を見て其の守りを更めず、鷙虫の攫搏も其の勇を程らず、重鼎を引くも其の力を程らず、往く者を悔いず、来る者を予めせず、過言再びせず、流言極めず、其の威を断たず、其の謀を習わず有り。其の特立すること此くの如き者有り。
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