大和俗訓 / 巻之一・為学上
一學問にすぢ多し、訓詁の學あり、記誦の學あり、詞章の學あり、儒者の學あり。訓詁の學とは、聖人の書の文義をくはしく知る事をつとむるを云ふ。記誦の學とは、廣く古の書をよみ故事事迹を覺ゆるを云ふ。詞章の學とは、詩文を作ることを學ぶを云ふ。儒者の學は、天地人の道に通じて、身ををさめ人ををさむる道を知るを云ふ。學問をせば儒者の學をすべし。訓詁の學は、四書六經等の文義に通じても、義理を知らざれば用ひがたし。いはんや記誦詞章の學は、いよいよ道に遠し。儒者の學とすべからず。儒者の學に專一ならば訓詁記誦の習も、略其内にかねてよし。此外に又小說の學あり。是は經史文章の學をこのまず、たゞもろもろの雜組の書、又あやしき事などを記せる事をめでて、多く見おぼえ樂とする學なり。又小說の學は、訓詁詞章記誦などにならべて、學術の條理を立つるには足らず。しかれども末世には又此學あり。學術の最下品なり。
新字:一学問にすぢ多し、訓詁の学あり、記誦の学あり、詞章の学あり、儒者の学あり。訓詁の学とは、聖人の書の文義をくはしく知る事をつとむるを云ふ。記誦の学とは、広く古の書をよみ故事事迹を覚ゆるを云ふ。詞章の学とは、詩文を作ることを学ぶを云ふ。儒者の学は、天地人の道に通じて、身ををさめ人ををさむる道を知るを云ふ。学問をせば儒者の学をすべし。訓詁の学は、四書六経等の文義に通じても、義理を知らざれば用ひがたし。いはんや記誦詞章の学は、いよいよ道に遠し。儒者の学とすべからず。儒者の学に専一ならば訓詁記誦の習も、略其内にかねてよし。此外に又小説の学あり。是は経史文章の学をこのまず、たゞもろもろの雑組の書、又あやしき事などを記せる事をめでて、多く見おぼえ楽とする学なり。又小説の学は、訓詁詞章記誦などにならべて、学術の条理を立つるには足らず。しかれども末世には又此学あり。学術の最下品なり。
書き下し
一学問にすぢ多し、訓詁の学あり、記誦の学あり、詞章の学あり、儒者の学あり。訓詁の学とは、聖人の書の文義をくはしく知る事をつとむるを云ふ。記誦の学とは、広く古の書をよみ故事事迹を覚ゆるを云ふ。詞章の学とは、詩文を作ることを学ぶを云ふ。儒者の学は、天地人の道に通じて、身ををさめ人ををさむる道を知るを云ふ。学問をせば儒者の学をすべし。訓詁の学は、四書六経等の文義に通じても、義理を知らざれば用ひがたし。いはんや記誦詞章の学は、いよいよ道に遠し。儒者の学とすべからず。儒者の学に専一ならば訓詁記誦の習も、略其内にかねてよし。此外に又小説の学あり。是は経史文章の学をこのまず、ただもろもろの雑組の書、又あやしき事などを記せる事をめでて、多く見おぼえ楽とする学なり。又小説の学は、訓詁詞章記誦などにならべて、学術の条理を立つるには足らず。しかれども末世には又此学あり。学術の最下品なり。
現代語訳
一、学問には筋がたくさんあります。訓詁の学、記誦の学、詞章の学、儒者の学があります。訓詁の学とは、聖人の書の文の意味を詳しく知ることに努めることをいいます。記誦の学とは、広く古の書を読み、故事や事跡を覚えることをいいます。詞章の学とは、詩文を作ることを学ぶことをいいます。儒者の学は、天・地・人の道に通じて、身を修め人を治める道を知ることをいいます。学問をするなら儒者の学をすべきです。訓詁の学は、四書六経などの文の意味に通じても、義理を知らなければ役立てにくいのです。まして記誦や詞章の学はいよいよ道から遠いのです。儒者の学とすることはできません。儒者の学に専念すれば、訓詁や記誦の習いも、ほぼその中に兼ねてよいのです。このほかにまた小説の学があります。これは経書・史書・文章の学を好まず、ただいろいろな雑録の書や怪しいことなどを記したものを愛でて、多く見覚えて楽しみとする学です。また小説の学は、訓詁・詞章・記誦などと並べて学術の筋を立てるには足りません。けれども末の世にはまたこの学があります。学術の最も下等なものです。
解説
この章句が説くこと
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人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
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説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。
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