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大和俗訓 / 巻之一・為学上

かくの如くなれば、人と生れたるかひなし。萬物の靈とすべからず。此ゆゑに聖人是をうれひ、賢臣を以て萬民の師として、人倫の道を敎へさせ給ふ。是人となるものは、必道を學ばずんば有べからざればなり。愚おもへらく、人と生れて學びざれば、生れざると同じ、まなんでも道を知らざれば、學びざると同じ。道を知りても行はざれば知らざるに同じ。其故いかんとなれば、人と生れて學びざれば、人の道を知らずして、人と生れたるかひなし。是人とむまれて學びざれば、生れざると同じきなり。學ぶは道を知らんが爲なり。もし學びやうあしくて道を知らずんば、學びざると同じきなり。又道を知るは、行はんがためなり。まなんで道を知りても、行はざれば知らざるに同じ。

新字:かくの如くなれば、人と生れたるかひなし。万物の霊とすべからず。此ゆゑに聖人是をうれひ、賢臣を以て万民の師として、人倫の道を教へさせ給ふ。是人となるものは、必道を学ばずんば有べからざればなり。愚おもへらく、人と生れて学びざれば、生れざると同じ、まなんでも道を知らざれば、学びざると同じ。道を知りても行はざれば知らざるに同じ。其故いかんとなれば、人と生れて学びざれば、人の道を知らずして、人と生れたるかひなし。是人とむまれて学びざれば、生れざると同じきなり。学ぶは道を知らんが為なり。もし学びやうあしくて道を知らずんば、学びざると同じきなり。又道を知るは、行はんがためなり。まなんで道を知りても、行はざれば知らざるに同じ。

書き下し

かくの如くなれば、人と生れたるかひなし。万物の霊とすべからず。此ゆゑに聖人是をうれひ、賢臣を以て万民の師として、人倫の道を教へさせ給ふ。是人となるものは、必道を学ばずんば有べからざればなり。愚おもへらく、人と生れて学びざれば、生れざると同じ、まなんでも道を知らざれば、学びざると同じ。道を知りても行はざれば知らざるに同じ。其故いかんとなれば、人と生れて学びざれば、人の道を知らずして、人と生れたるかひなし。是人とむまれて学びざれば、生れざると同じきなり。学ぶは道を知らんが為なり。もし学びやうあしくて道を知らずんば、学びざると同じきなり。又道を知るは、行はんがためなり。まなんで道を知りても、行はざれば知らざるに同じ。

現代語訳

このようであれば、人と生まれたかいがありません。万物の霊とすることはできません。そのため聖人はこれを憂えて、賢い臣下を万民の師とし、人倫の道を教えさせなさいました。これは人となる者は必ず道を学ばなければならないからです。私が思うに、人と生まれて学ばなければ生まれなかったのと同じであり、学んでも道を知らなければ学ばなかったのと同じであり、道を知っても行わなければ知らなかったのと同じです。その理由は何かといえば、人と生まれて学ばなければ人の道を知らず、人と生まれたかいがありません。これが人と生まれて学ばなければ生まれなかったのと同じだということです。学ぶのは道を知るためです。もし学び方が悪くて道を知らないなら、学ばなかったのと同じです。また道を知るのは行うためです。学んで道を知っても、行わなければ知らなかったのと同じです。

解説

益軒の学問論の核心となる三段論法です。学ばなければ生まれないのと同じ、学んでも道を知らなければ学ばないのと同じ、知っても行わなければ知らないのと同じ。学ぶこと、知ること、行うことを一続きのものとして、どこで途切れても意味がなくなると説きます。とくに「学びやう悪しくて道を知らずんば」と学び方の良し悪しに触れている点が大切です。研修を受けたのに何も変わらない、本を読んだのに行動が変わらないという悩みに、そのまま答えてくれる一節です。

この章句が説くこと

学問知行実践学び方人の道

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