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大和俗訓 / 巻之一・為学上

一顏子推は、人身得がたし、空しく過ぐることなかれといへり。萬物にすぐれて、人と斯く生れたるは、誠に幸の至りなれば、人身得がたしといへり。人たる者、もし再び此世に生れば、たとひ此たび怠りて、人の道を知らずとも、かさねて又人とむまれ來ん時をたのむべき事もありなん。此身再び人となることを得ざれば、道を學び、此身をよくをさめ、人となりて終るべし。むなしく此世を過すべからず。もし人の道を知らで、空しく此世を過しなば、人と生れたるかひなかるべし。をしむべきかな。

新字:一顔子推は、人身得がたし、空しく過ぐることなかれといへり。万物にすぐれて、人と斯く生れたるは、誠に幸の至りなれば、人身得がたしといへり。人たる者、もし再び此世に生れば、たとひ此たび怠りて、人の道を知らずとも、かさねて又人とむまれ来ん時をたのむべき事もありなん。此身再び人となることを得ざれば、道を学び、此身をよくをさめ、人となりて終るべし。むなしく此世を過すべからず。もし人の道を知らで、空しく此世を過しなば、人と生れたるかひなかるべし。をしむべきかな。

書き下し

一顔子推は、人身得がたし、空しく過ぐることなかれといへり。万物にすぐれて、人と斯く生れたるは、誠に幸の至りなれば、人身得がたしといへり。人たる者、もし再び此世に生れば、たとひ此たび怠りて、人の道を知らずとも、かさねて又人とむまれ来ん時をたのむべき事もありなん。此身再び人となることを得ざれば、道を学び、此身をよくをさめ、人となりて終るべし。むなしく此世を過すべからず。もし人の道を知らで、空しく此世を過しなば、人と生れたるかひなかるべし。をしむべきかな。

現代語訳

一、顔之推は「人の身は得がたい、空しく過ごしてはならない」と言いました。万物にすぐれてこのように人と生まれたのは、まことに幸いの極みなので、人の身は得がたいと言ったのです。人たる者が、もし再びこの世に生まれるのなら、たとえ今回怠けて人の道を知らなくても、また重ねて人として生まれてくる時を頼みにすることもできるでしょう。しかしこの身は再び人となることはできないのですから、道を学び、この身をよく修め、人として一生を終えるべきです。空しくこの世を過ごしてはなりません。もし人の道を知らないで空しくこの世を過ごしたなら、人と生まれたかいがないでしょう。惜しいことです。

解説

顔子推とは、北朝から隋にかけての学者で『顔氏家訓』の著者として知られる顔之推のことです。益軒は「人身得がたし」という言葉を受けて、人生は一度きりだから今生で道を学び、身を修めて終えるべきだと説きます。生まれ変わりを当てにできない以上、先延ばしは許されないという論法は明快です。いつかやろうと思っていることがあるなら今始めるべきだという教えとして、学び直しや健康づくり、子育てなど、どの場面にも響くものがあります。

この章句が説くこと

人生学問顔之推修身時間

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