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山鹿語類 / 士道附錄・先生御僕之警戒

僕隷太乏。則必無常心。其乏必有時。監士早察。或令伍糾之。具其由。而在爲其設。家僕之司事。其職有利。則奸曲生。而家禮以違。風俗竟陷。其蔽到犯上爲盜。故詳盡其事。糾其所司。令財勿費。彼所行正。則厚其祿。而不可吝。犯令以盜公財。費公財。勿爲彼之利。

新字:僕隷太乏。則必無常心。其乏必有時。監士早察。或令伍糾之。具其由。而在為其設。家僕之司事。其職有利。則奸曲生。而家礼以違。風俗竟陥。其蔽到犯上為盗。故詳尽其事。糾其所司。令財勿費。彼所行正。則厚其禄。而不可吝。犯令以盗公財。費公財。勿為彼之利。

書き下し

僕隷太だ乏しければ、則ち必ず常心無し。其の乏しきは必ず時有り。監士早く察し、或いは伍をして之を糾さしめ、其の由を具にして、其の為に設くるに在り。家僕の司る事、其の職に利有れば、則ち奸曲生じて、家礼以て違ひ、風俗竟に陥る。其の蔽、上を犯し盗を為すに到る。故に詳らかに其の事を尽くし、其の司る所を糾し、財をして費えしむること勿れ。彼の行ふ所正しければ、則ち其の禄を厚くして、吝しむべからず。令を犯して以て公財を盗み、公財を費やさば、彼の利と為すこと勿れ。

現代語訳

召使いがひどく困窮すると、必ず落ち着いた心を失う。その困窮にはきっと時期がある。監督役が早く察して、あるいは組の者に事情を正させ、その理由を詳しく調べて、そのための手当てをしてやることが大切である。家僕の受け持つ仕事で、その役目に役得があると、悪だくみが生まれて家の礼法が崩れ、風俗はついに堕落する。その弊害は、主人に逆らい盗みをはたらくにまで至る。だからその仕事を詳しく調べ尽くし、受け持つところを正し、財を浪費させてはならない。彼の行いが正しければ俸禄を厚くして惜しんではならない。命令を破って公の財を盗んだり、公の財を浪費したりしたら、それを彼の利得にさせてはならない。

解説

貧しさが心を乱すことを認め、困窮の兆しを監士が早く察して手を打てと説く前条は、『孟子』の「恒産無くして恒心無し」に通じる。後条は、役目に利得がつくと不正が生まれ、ついには主家への反逆や盗みに至ると警告し、仕事の中身を詳しく点検せよと言う。そのうえで正しく勤める者には禄を惜しまず、不正には利を残さないという信賞必罰の原則で結ぶ。生活に困っている部下への目配りと、経費や権限の点検、正当な報酬とを一体に考える視点は、今の組織にも欠かせない。

この章句が説くこと

家僕恒心役得賞罰家政監督

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