山鹿語類 / 士道附錄・先生御僕之警戒
僕隷之所樂。在飲食。能計其勞。時飮食。詳冷暖。羹食太麁則彼苦。太厚則彼慢。自省時可試之。不然。必有司有私。悍强之徒侵奪之。又專以飽滿。則彼慣而慢易。有無用之費。在考其時。節其勞。奴僕尤好酒。飮之有時。
新字:僕隷之所楽。在飲食。能計其労。時飲食。詳冷暖。羹食太麁則彼苦。太厚則彼慢。自省時可試之。不然。必有司有私。悍強之徒侵奪之。又専以飽満。則彼慣而慢易。有無用之費。在考其時。節其労。奴僕尤好酒。飲之有時。
書き下し
僕隷の楽しむ所は、飲食に在り。能く其の労を計り、飲食を時にし、冷暖を詳らかにす。羹食太だ麁なれば則ち彼苦しみ、太だ厚ければ則ち彼慢る。自ら時を省みて之を試むべし。然らざれば、必ず有司私有り、悍強の徒之を侵奪す。又専ら飽満を以てすれば、則ち彼慣れて慢易し、無用の費有り。其の時を考へ、其の労を節するに在り。奴僕尤も酒を好む。之を飲ましむるに時有り。
現代語訳
召使いの楽しみは飲み食いにある。その労働の量をよく見計らい、食事の時を定め、冷たい温かいに気を配る。汁や飯があまりに粗末だと彼らは苦しみ、あまりに手厚いと彼らはつけあがる。主人自らが折を見てこれを試してみるべきである。そうしなければ、必ず担当の役人が私腹を肥やしたり、荒っぽく強い者が他の者の分を奪い取ったりする。またひたすら腹いっぱいにさせると、彼らは慣れてだらけ、無駄な出費が生じる。要は時を考え、労働に合わせて加減することにある。下僕はとりわけ酒を好む。飲ませるには時を定めるべきである。
解説
召使いの食事について、量と質、時刻、温度にまで気を配れと説く。粗末すぎれば苦しめ、手厚すぎれば慢心を生むという加減の感覚に加え、主人自らが食べて確かめなければ、担当者の着服や強い者の横取りが起こると見抜いている点が鋭い。家の主人が細部を自分の目で確かめることは、素行にとって上に立つ者の職分そのものであった。福利厚生や現場の待遇を報告書だけで済ませず、自ら現場に足を運んで確かめる姿勢の大切さに通じる。
この章句が説くこと
家僕飲食節度家政現場主従
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