山鹿語類 / 士道附錄・先生子弟警戒
凡可明君子小人之機。君子因天地之大道。而少不喩己之利害。小人以成敗利鈍。而衒其才。賣其知。才知之所及。雖同其所根。如天壤。毫釐之差。千里之謬。唯在義利之辨也。愼思玆誠。則智其判然矣。爾子弟戒哉。勿求四支安佚。勿慢耳目視聽。勿談無用之事。勿必衆人毀譽。勿慢知利己。勿過儉究奢。勿專好樂荒業。戒哉子弟。
新字:凡可明君子小人之機。君子因天地之大道。而少不喩己之利害。小人以成敗利鈍。而衒其才。売其知。才知之所及。雖同其所根。如天壤。毫釐之差。千里之謬。唯在義利之弁也。慎思玆誠。則智其判然矣。爾子弟戒哉。勿求四支安佚。勿慢耳目視聴。勿談無用之事。勿必衆人毀誉。勿慢知利己。勿過倹究奢。勿専好楽荒業。戒哉子弟。
書き下し
凡そ君子小人の機を明らかにすべし。君子は天地の大道に因りて、少しも己の利害に喩らず。小人は成敗利鈍を以て、其の才を衒ひ、其の知を売る。才知の及ぶ所は同じと雖も、其の根ざす所は天壌の如し。毫釐の差、千里の謬り、唯だ義利の弁に在るなり。玆の誠を慎思すれば、則ち智其れ判然たり。爾子弟戒めよや。四支の安佚を求むること勿れ。耳目の視聴を慢ること勿れ。無用の事を談ずること勿れ。衆人の毀誉を必とすること勿れ。知を慢りて己を利すること勿れ。倹に過ぎ奢を究むること勿れ。専ら楽を好みて業を荒らすこと勿れ。戒めよや子弟。
現代語訳
およそ君子と小人の分かれ目を明らかにしなければならない。君子は天地の大いなる道に基づいて、少しも自分の利害にさとくない。小人は成功失敗や得失を基準にして、自分の才をひけらかし、知恵を売り物にする。才知の及ぶところは同じであっても、その根ざすところは天と地ほども違う。髪の毛ほどの差が千里の誤りとなるのは、ただ義と利の区別にある。このまことを慎んで考えれば、知恵ははっきりと定まる。子弟たちよ、戒めよ。手足の安楽を求めるな。目や耳で見聞きすることをおろそかにするな。無用な話をするな。人々の毀誉を当てにするな。知恵をたのんで自分の利をはかるな。倹約に過ぎることも贅沢を極めることもするな。楽しみばかり好んで本業を荒らすな。子弟たちよ、戒めよ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『大和俗訓』巻之二・為学下一楊子曰学者所以求為君子也。言ふ意は、学問をするは何の為ぞや。君子とならんが為なり。君子とは有徳人を云ふ。君子の字義は、易の正義に、人の君となりて万民を子のごとくする徳ある人をいへり。賤くして下にありても、其徳あれば君子と称す君子となるとは人となるなり。学ばざる人は云ふにたらず。学んでも君子とならずんば、学ばざるに同じくして、人と生れたるかひなし。君子となる事容易からず。しかれども、志を立ておこたらずんば、必其功あるべし。古語にも、志あるものは其事つひに成るといへり。学は終身のことなり。一息もいまだ残れる内は、此志怠るべからず。是人の一生の間のつとめなり。
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『大和俗訓』巻之一・為学上偽学なり。ここを以て、君子の心は日々に善にすすみて上達し、小人の心は日々に悪におちいりて下達す。同じく力を用ひて学問せば、君子儒となるべし。小人儒となるべからず。つとめまなんで小人儒となるは口をし。学者まづ幼より己が為にする志を立つべし。是学問する人の、第一に心得べきことなり。しからざれば、博く書をよみ学問しても、益なくして却て害あり。
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『弁名』君子小人小人も亦た民の称なり。民の務むる所は生を営むに在り。故に其の志す所は一己を成すに在りて、民を安んずるの心無し。是れ之を小人と謂ふ。其の志す所小なるが故なり。上位に在りと雖も、其の心を操ること此の如くんば、亦た之を小人と謂ふ。経伝の言ふ所、或は位を主として之を言ひ、或は徳を主として之を言ふ。指す所同じからずと雖も、其の小人と称する所以の意は、皆此を出でず。後世の諸老先生の道と為す所は、皆淑身の説勝ちて、民を安んずるの心無し。亦た小人の帰か。学者諸を察せよ。
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『墨子』親士昔者、文公は出で走りて天下を正し、桓公は國を去りて諸侯に霸たり、越王句踐は吳王の仇に遜りて、尚お中國の賢君を攝す。三子の能く名を達し功を天下に成せるや、皆な其の國に於て抑えられ、而して大いに醜ずかしめられたればなり。太上は敗るること無く、其の次は敗れて以て成すこと有り、此れを之れ民を用うと謂う。吾れ之を聞けらく、「安居無きに非ざるなり、我に安心無きなり。足財無きに非ざるなり、我に足心無きなり」と。是の故に君子は自らを難んじて彼を易んじ、衆人は自らを易んじて彼を難んず。君子は進んで其の志を敗らず、内に其の情を究め、庸民に雜わると雖も、終に怨心無し。彼れ自ら信ずる者有ればなり。
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『大和俗訓』巻之一・為学上一学問はまづ志を立つるを以て本とす。志とは心のゆく所なり。道を知り行ひて、君子に至らんと思ふ心常におこたりなく、念々やまざるを、志を立つると云ふ。志たたざれば学ぶこと成就せず。故に古人も、志ある者は其事つひになるといひ、又志たつは学の半なりといへり。たとへば弓いる者の、的に志し、道ゆく者の、宿に志すが如し。よろづの事、まづ本をつとむべし。志を立つるは学問の本なり。志を立つるには勇猛なるべし。柔弱にして怠るべからず。おこたれば験なくしてはかゆかず。道を求むるにせちなる志は、たとへば飢ゑて食を求め、渇きて湯水を求むるが如くなるべしわづかに悠々としておこたれば、志すたる。唯此道に心を一すぢにすべし。
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孔子家語・屈節解子路孔子に問いて曰く、「由聞く、丈夫世に居りて、富貴にして物に益有る能わず、貧賤の地に處りて、節を屈して以て伸を求むる能わざれば、則ち以て人の域を論ずるに足らずと。」孔子曰く、「君子の己を行うや、必ず己に達するを期す。屈すべければ則ち屈し、伸ぶべければ則ち伸ぶ。故に節を屈する者は、待つ有る所以なり。伸を求むる者は、時に及ぶ所以なり。是を以て屈を受くと雖も其の節を毀たず、志達すれども義を犯さず。」
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