大和俗訓 / 巻之一・為学上
僞學なり。こゝを以て、君子の心は日々に善にすゝみて上達し、小人の心は日々に惡におちいりて下達す。同じく力を用ひて學問せば、君子儒となるべし。小人儒となるべからず。つとめまなんで小人儒となるは口をし。學者まづ幼より己が爲にする志を立つべし。是學問する人の、第一に心得べきことなり。しからざれば、博く書をよみ學問しても、益なくして却て害あり。
新字:偽学なり。こゝを以て、君子の心は日々に善にすゝみて上達し、小人の心は日々に悪におちいりて下達す。同じく力を用ひて学問せば、君子儒となるべし。小人儒となるべからず。つとめまなんで小人儒となるは口をし。学者まづ幼より己が為にする志を立つべし。是学問する人の、第一に心得べきことなり。しからざれば、博く書をよみ学問しても、益なくして却て害あり。
書き下し
偽学なり。ここを以て、君子の心は日々に善にすすみて上達し、小人の心は日々に悪におちいりて下達す。同じく力を用ひて学問せば、君子儒となるべし。小人儒となるべからず。つとめまなんで小人儒となるは口をし。学者まづ幼より己が為にする志を立つべし。是学問する人の、第一に心得べきことなり。しからざれば、博く書をよみ学問しても、益なくして却て害あり。
現代語訳
偽りの学問です。ですから君子の心は日々に善に進んで上に達し、小人の心は日々に悪に落ちて下に達します。同じく力を用いて学問するなら、君子の儒となるべきです。小人の儒となってはなりません。努めて学んで小人の儒となるのは残念なことです。学ぶ者は、まず幼いときから自分のためにする志を立てるべきです。これが学問する人の第一に心得るべきことです。そうでなければ、広く書を読み学問しても、益がなくかえって害があります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『大和俗訓』巻之二・為学下一楊子曰学者所以求為君子也。言ふ意は、学問をするは何の為ぞや。君子とならんが為なり。君子とは有徳人を云ふ。君子の字義は、易の正義に、人の君となりて万民を子のごとくする徳ある人をいへり。賤くして下にありても、其徳あれば君子と称す君子となるとは人となるなり。学ばざる人は云ふにたらず。学んでも君子とならずんば、学ばざるに同じくして、人と生れたるかひなし。君子となる事容易からず。しかれども、志を立ておこたらずんば、必其功あるべし。古語にも、志あるものは其事つひに成るといへり。学は終身のことなり。一息もいまだ残れる内は、此志怠るべからず。是人の一生の間のつとめなり。
-
『墨子』親士昔者、文公は出で走りて天下を正し、桓公は國を去りて諸侯に霸たり、越王句踐は吳王の仇に遜りて、尚お中國の賢君を攝す。三子の能く名を達し功を天下に成せるや、皆な其の國に於て抑えられ、而して大いに醜ずかしめられたればなり。太上は敗るること無く、其の次は敗れて以て成すこと有り、此れを之れ民を用うと謂う。吾れ之を聞けらく、「安居無きに非ざるなり、我に安心無きなり。足財無きに非ざるなり、我に足心無きなり」と。是の故に君子は自らを難んじて彼を易んじ、衆人は自らを易んじて彼を難んず。君子は進んで其の志を敗らず、内に其の情を究め、庸民に雜わると雖も、終に怨心無し。彼れ自ら信ずる者有ればなり。
-
『大和俗訓』巻之一・為学上一学問はまづ志を立つるを以て本とす。志とは心のゆく所なり。道を知り行ひて、君子に至らんと思ふ心常におこたりなく、念々やまざるを、志を立つると云ふ。志たたざれば学ぶこと成就せず。故に古人も、志ある者は其事つひになるといひ、又志たつは学の半なりといへり。たとへば弓いる者の、的に志し、道ゆく者の、宿に志すが如し。よろづの事、まづ本をつとむべし。志を立つるは学問の本なり。志を立つるには勇猛なるべし。柔弱にして怠るべからず。おこたれば験なくしてはかゆかず。道を求むるにせちなる志は、たとへば飢ゑて食を求め、渇きて湯水を求むるが如くなるべしわづかに悠々としておこたれば、志すたる。唯此道に心を一すぢにすべし。
-
孔子家語・屈節解子路孔子に問いて曰く、「由聞く、丈夫世に居りて、富貴にして物に益有る能わず、貧賤の地に處りて、節を屈して以て伸を求むる能わざれば、則ち以て人の域を論ずるに足らずと。」孔子曰く、「君子の己を行うや、必ず己に達するを期す。屈すべければ則ち屈し、伸ぶべければ則ち伸ぶ。故に節を屈する者は、待つ有る所以なり。伸を求むる者は、時に及ぶ所以なり。是を以て屈を受くと雖も其の節を毀たず、志達すれども義を犯さず。」
-
『大和俗訓』巻之一・為学上一孔子曰く、学んで止まず、棺を闔ぢて止む。人と生れては人の道を知り、此身をよくをさめて、君子となる事をつとめとすべし。是人と生れたるかひあらんとなり。しかれば人となるべき道を学ぶ事、おこたるべからず。一息も猶のこれる内は、学ぶことやむべからず。死して後やむべし。
-
『初学訓』巻之三一人となりては、稚き時より、其父兄となる人は、其子弟に、書を読ませ、道を学ばしむべし。学問の道は他なし、只道を知りて、善悪を明らかにわかち、善を行ひ悪を去るにあり。故に、君子の学問は、仁心を保ち、つねに善を行ふを宗とす。善を行はざれば、博学にして経伝に明らかなるも、無用のことなり。大人は、善を行へば、其ほどこしひろし。然れども、極めて賤しき乞丐といへども、善を行ふに志あれば、其分に随ひて、其功多し。故に、学問する人は、只つねに善をするに志ありて、日々、善を行ふをつとめとすべし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る