山鹿語類 / 士道・正一日之用
こゝに案一日之用。先夙起而盥漱櫛。正衣服。佩用具。正其容貌威儀。而靜坐拱手。能養平旦之氣。可看天地生々無已之理。而躰認君父之恩義。思量今日之家業。謹在觀。身躰髮膚受之父母。不敢毀傷孝之始也。立身行道。揚名於後世。以顯父母。孝之終也。事君委其身。爲人謀而忠也矣。此間意味深長。而尤可察幾微之動也。既向明則開門戶。清道洒掃。而天氣于入。地脉于長。有家事。則示諭而詳其敎。其間賓客之來。使价之待。速謁速答。而無令之遲滯。事君。則夙出仕之。事父母。則察其安否矣。出而事。則其所居其所言全愼。而謀不出其位。侍長者。則正禮敬。奉如父兄。能謙退而不爭。凡仕官之途。朝出則先人。夕退則後人。歸宅則謁父母。下氣怡聲安席。而問留守之事。計其急緩。而爲其事。閑則改朝服。靜坐審思省今日之行跡。暇則披書傳。而考古人之言行。知聖賢之趣向。日既沒。則示夜戒堅約束。而入寢所。寬躰休氣。時侍者之勞佚。是夙興夜寐。而仕官省晨之用也。
新字:こゝに案一日之用。先夙起而盥漱櫛。正衣服。佩用具。正其容貌威儀。而静坐拱手。能養平旦之気。可看天地生々無已之理。而体認君父之恩義。思量今日之家業。謹在観。身体髪膚受之父母。不敢毀傷孝之始也。立身行道。揚名於後世。以顕父母。孝之終也。事君委其身。為人謀而忠也矣。此間意味深長。而尤可察幾微之動也。既向明則開門戸。清道洒掃。而天気于入。地脉于長。有家事。則示諭而詳其教。其間賓客之来。使价之待。速謁速答。而無令之遅滞。事君。則夙出仕之。事父母。則察其安否矣。出而事。則其所居其所言全慎。而謀不出其位。侍長者。則正礼敬。奉如父兄。能謙退而不争。凡仕官之途。朝出則先人。夕退則後人。帰宅則謁父母。下気怡声安席。而問留守之事。計其急緩。而為其事。閑則改朝服。静坐審思省今日之行跡。暇則披書伝。而考古人之言行。知聖賢之趣向。日既没。則示夜戒堅約束。而入寝所。寛体休気。時侍者之労佚。是夙興夜寐。而仕官省晨之用也。
書き下し
ここに一日の用を案ずるに、先づ夙に起きて盥漱し櫛り、衣服を正し、用具を佩び、其の容貌威儀を正して、静坐拱手し、能く平旦の気を養ひ、天地生々して已むこと無きの理を看るべし。而して君父の恩義を体認し、今日の家業を思量す。謹んで観に在り。身体髪膚、之を父母に受く、敢て毀傷せざるは孝の始なり。身を立て道を行ひ、名を後世に揚げ、以て父母を顕すは孝の終なり。君に事へては其の身を委ね、人の為に謀りては忠なり。此の間意味深長にして、尤も幾微の動きを察すべし。既に明に向かへば則ち門戸を開き、道を清め洒掃して、天気于に入り、地脈于に長ず。家事有れば則ち示諭して其の教を詳にす。其の間賓客の来る、使价の待つ、速やかに謁し速やかに答へて、之をして遅滞せしむること無し。君に事ふれば則ち夙に出でて之に仕へ、父母に事ふれば則ち其の安否を察す。出でて事ふれば則ち其の居る所其の言ふ所全く慎みて、謀其の位を出でず。長者に侍れば則ち礼敬を正し、奉ずること父兄の如くし、能く謙退して争はず。凡そ仕官の途、朝に出づれば則ち人に先んじ、夕に退けば則ち人に後る。宅に帰れば則ち父母に謁し、気を下し声を怡ばしめ席を安んじて、留守の事を問ひ、其の急緩を計りて其の事を為す。閑なれば則ち朝服を改め、静坐審思して今日の行跡を省み、暇あれば則ち書伝を披きて古人の言行を考へ、聖賢の趣向を知る。日既に没すれば則ち夜の戒を示し約束を堅くして寝所に入り、体を寛くし気を休め、侍者の労佚を時にす。是れ夙に興き夜に寐ねて、仕官省晨の用なり。
現代語訳
さて一日の用を考えてみると、まず朝早く起きて手を洗い口をすすぎ髪を整え、衣服を正し、道具を身に帯び、顔つきと威儀を正して、静かに座り手を組み、よく夜明けの清らかな気を養い、天地が生々してやまない理を見るべきである。そして君と父の恩義を身に受け止め、今日の家業を思いめぐらす。慎んでよく観る。「身体髪膚はこれを父母に受けた。あえて損なわないのが孝の始めである。身を立て道を行い、名を後世に揚げて父母を顕すのが孝の終わりである」。「君に仕えてはその身を委ね」、「人のために謀って忠である」。この間の意味は深く長く、とりわけ心のかすかな動きを察すべきである。夜が明ければ門戸を開き、道を清め水をまいて掃き、天の気がここに入り、地の脈がここに伸びる。家の用事があれば言い聞かせてその教えを詳しくする。その間に賓客が来たり使いの者が待ったりすれば、速やかに会い速やかに答えて、滞らせない。君に仕えるなら朝早く出仕し、父母に仕えるならその安否をうかがう。出て仕えるなら、その居る所、言う所をすべて慎み、謀は自分の位を越えない。年長者に侍るなら礼と敬を正し、父兄のように仕え、よくへりくだって争わない。およそ仕官の道は、朝出るときは人より先に、夕方退くときは人より後にする。家に帰れば父母に謁し、気を和らげ声を穏やかにし席を整えて、留守中のことを尋ね、その急ぎと緩みを計って事を処理する。暇なときは朝服を改め、静かに座って深く思い、今日の行いを省み、なお暇があれば書物を開いて古人の言行を考え、聖賢の向かうところを知る。日が暮れたら夜の戒めを示し約束を固くして寝所に入り、体をくつろげ気を休め、侍者の労と休みを時に応じて計らう。これが朝早く起き夜遅く寝る、仕官の者の朝夕の用である。
解説
この章句が説くこと
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