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山鹿語類 / 士道・嚴居宅之制

次に宮室の品を論ずる時は、先づ人を置く所を搆ふ。人の內には父母を安置するの室をさきとすべし。父母いまさゞる時は、廟を先んじて、而して家人の居をまうく。是今の屋を長して人を置くの宅是也。次に我居るの所あり。我平居するの宅を廣からしめ、その內をかまへて小殿を設けて、親しく心易きものに對面の所とす。其間に寢所を構ふ。是私居において差別して、居間、寢所、對面所あり。次に客殿を設く。大中小は各其人によるべし。爰に又三段をかまへ、親疎尊卑の來客を饗應す。是について寄り付の宅をまふけ、或は武器をそなへ、或は番兵を置て、內外の非常を禁じ、申し次ぎ給仕するの便用を利す。次に炊飯の宅あり。これに三段をまうけて、魚鳥を調、庖丁を致すの所あり。火を盛にして、これを煮炙り、あつものし、飯かしぐの所あり。水を設け薪を蓄、魚鳥雜菜果物酒醬を置の所あり。各其用法を詳にせざれば、其制不正也。

新字:次に宮室の品を論ずる時は、先づ人を置く所を搆ふ。人の内には父母を安置するの室をさきとすべし。父母いまさゞる時は、廟を先んじて、而して家人の居をまうく。是今の屋を長して人を置くの宅是也。次に我居るの所あり。我平居するの宅を広からしめ、その内をかまへて小殿を設けて、親しく心易きものに対面の所とす。其間に寝所を構ふ。是私居において差別して、居間、寝所、対面所あり。次に客殿を設く。大中小は各其人によるべし。爰に又三段をかまへ、親疎尊卑の来客を饗応す。是について寄り付の宅をまふけ、或は武器をそなへ、或は番兵を置て、内外の非常を禁じ、申し次ぎ給仕するの便用を利す。次に炊飯の宅あり。これに三段をまうけて、魚鳥を調、庖丁を致すの所あり。火を盛にして、これを煮炙り、あつものし、飯かしぐの所あり。水を設け薪を蓄、魚鳥雑菜果物酒醬を置の所あり。各其用法を詳にせざれば、其制不正也。

書き下し

次に宮室の品を論ずる時は、先づ人を置く所を搆ふ。人の内には父母を安置するの室をさきとすべし。父母いまさゞる時は、廟を先んじて、而して家人の居をまうく。是今の屋を長して人を置くの宅是也。次に我居るの所あり。我平居するの宅を広からしめ、その内をかまへて小殿を設けて、親しく心易きものに対面の所とす。其間に寝所を構ふ。是私居において差別して、居間、寝所、対面所あり。次に客殿を設く。大中小は各其人によるべし。爰に又三段をかまへ、親疎尊卑の来客を饗応す。是について寄り付の宅をまふけ、或は武器をそなへ、或は番兵を置て、内外の非常を禁じ、申し次ぎ給仕するの便用を利す。次に炊飯の宅あり。これに三段をまうけて、魚鳥を調、庖丁を致すの所あり。火を盛にして、これを煮炙り、あつものし、飯かしぐの所あり。水を設け薪を蓄、魚鳥雑菜果物酒醬を置の所あり。各其用法を詳にせざれば、其制不正也。

現代語訳

次に宮室の種類を論ずると、まず人を置く所を構える。人の中では父母を安置する部屋を先にすべきである。父母がおられないときは廟(祖先を祀る所)を先にし、そのうえで家の者の住まいを設ける。これが今の、棟を長くして人を住まわせる建物である。次に自分の居る所がある。自分のふだん居る棟を広くし、その中を区切って小さな座敷を設け、親しく気安い者と対面する所とする。その間に寝所を構える。これが私の住まいの中での区別で、居間・寝所・対面所がある。次に客殿を設ける。大・中・小はそれぞれその人の身分による。ここにまた三段の構えを設け、親しい者・疎い者、尊い者・卑しい者の来客をもてなす。これに付けて寄付き(控えの間)の棟を設け、あるいは武器を備え、あるいは番兵を置いて内外の非常を防ぎ、取り次ぎや給仕の便をはかる。次に炊事の棟がある。これにも三段を設けて、魚や鳥を調え包丁をふるう所がある。火を盛んにして煮たり焼いたり、吸い物を作ったり飯を炊いたりする所がある。水を引き薪を蓄え、魚・鳥・野菜・果物・酒・醤(ひしお)を置く所がある。それぞれの使い方を詳しくしなければ、その制は正しくない。

解説

本章は屋敷の部屋割りを、父母や祖先の部屋を先に、次に主人の居間・寝所・対面所、客殿、寄付き、台所の順に述べる。順序そのものが価値の序列を示しており、孝を先にし私を後にするという儒教の秩序が間取りに写されている。客殿を三段に分けるのは、来客の親疎尊卑に応じて礼を変えるためである。寄付きに武器や番兵を置くのは、泰平の世でも備えを忘れない武家の住まいらしい。現代でも、何を先に配置するかは、何を大切にするかの表明である。

この章句が説くこと

居宅孝父母客殿礼序列

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