山鹿語類 / 士道・嚴居宅之制
君子大丈夫の居宅、其所を撰んで、營作の制尤も聖人の掟を守り、法を則とり便用を利し、而して躰用相調、こゝにおいて居て心に快く安んじて樂しむ處たりぬべき也。いづかたに居、何樣にかまへても、家宅に心はあらざると云人は、是上古穴居野處の民にして、今の文質彬々たるを用ゆるのゆゑにあらざる也。案ずるに居宅之制辨貴賤といへり。其人の官位俸祿を考へ、扶助せしむるの人をつもり、往來の賓客公用會禮のことを詳にして、其階級を守るにありぬべし。而して其人の年齡其老壯弱によつてかはりあり。尤も時代の考へ風雪の有無をはかり、其制を具にす。其家宅の有る所、都城の遠近、都鄙山のうけやう、川のありさまに因て、各其制作ありぬべし。このゆゑに士農工商の品其身の貧福を詳にして、富めりといへども分をこへて不制、貧といへどもあるべき所はあらしめて、初めて家居の法明なるべき也。
新字:君子大丈夫の居宅、其所を撰んで、営作の制尤も聖人の掟を守り、法を則とり便用を利し、而して体用相調、こゝにおいて居て心に快く安んじて楽しむ処たりぬべき也。いづかたに居、何様にかまへても、家宅に心はあらざると云人は、是上古穴居野処の民にして、今の文質彬々たるを用ゆるのゆゑにあらざる也。案ずるに居宅之制弁貴賤といへり。其人の官位俸禄を考へ、扶助せしむるの人をつもり、往来の賓客公用会礼のことを詳にして、其階級を守るにありぬべし。而して其人の年齢其老壮弱によつてかはりあり。尤も時代の考へ風雪の有無をはかり、其制を具にす。其家宅の有る所、都城の遠近、都鄙山のうけやう、川のありさまに因て、各其制作ありぬべし。このゆゑに士農工商の品其身の貧福を詳にして、富めりといへども分をこへて不制、貧といへどもあるべき所はあらしめて、初めて家居の法明なるべき也。
書き下し
君子大丈夫の居宅、其所を撰んで、営作の制尤も聖人の掟を守り、法を則とり便用を利し、而して体用相調、こゝにおいて居て心に快く安んじて楽しむ処たりぬべき也。いづかたに居、何様にかまへても、家宅に心はあらざると云人は、是上古穴居野処の民にして、今の文質彬々たるを用ゆるのゆゑにあらざる也。案ずるに居宅之制弁貴賤といへり。其人の官位俸禄を考へ、扶助せしむるの人をつもり、往来の賓客公用会礼のことを詳にして、其階級を守るにありぬべし。而して其人の年齢其老壮弱によつてかはりあり。尤も時代の考へ風雪の有無をはかり、其制を具にす。其家宅の有る所、都城の遠近、都鄙山のうけやう、川のありさまに因て、各其制作ありぬべし。このゆゑに士農工商の品其身の貧福を詳にして、富めりといへども分をこへて不制、貧といへどもあるべき所はあらしめて、初めて家居の法明なるべき也。
現代語訳
君子・大丈夫の住まいは、場所を選び、造り方はとりわけ聖人の定めを守り、法にのっとって使い勝手をよくし、形と働きが調和して、そこに住めば心地よく安らいで楽しめる所であるべきである。どこに住もうと、どう構えようと、家に心を用いることはないと言う人は、上古の穴に住み野に暮らした民と同じで、飾りと中身がほどよく整った今の世のあり方を用いるものではない。考えてみると「住まいの制は貴賤を区別する」と言われる。その人の官位と俸禄を考え、養い助ける人数を見積もり、行き来する賓客や公用・会合・儀礼のことを詳しくして、身分の段階を守ることにあるはずだ。そのうえ、その人の年齢、老・壮・弱によって違いがある。とりわけ時代の事情を考え、風や雪の有無を計って、その制を詳しく定める。家のある場所、都城からの遠近、都か田舎か、山の向き、川の様子によって、それぞれの造り方があるはずである。だから士農工商の身分とその人の貧富をよく見て、富んでいても分を越えて造らず、貧しくてもあるべきところは備えさせてこそ、初めて住まいの法が明らかになるのである。
解説
この章句が説くこと
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