山鹿語類 / 士道・明衣服之制
又朝廷燕居外出、各其服あるべし。朝廷は天下の禮義相定まり、君臣敬み守るの地也。分を守て亂るべからず。燕居して人に不交時は、褻の衣と號して私居の服あり。是は人に對面せぬ內宮に入ての服也。又朋友に會しては別なるべし。度々に衣服改ためんことも、ことわづらはしきに似たりといへども、禮服を常に着せんは、禮を輕んずるの失あり。褻の衣を着て人に交らんは、彼を侮るに同じ。且己れが威儀を以て下の情をも制して、法とらしむること、上下の道也、是利害を以て云にあらず。褻裘長、短右袂、非衣裳必殺之と云へる、各その服に品々多きを以て也。次に冠婚喪祭賓客饗應軍旅のことに因て、其服其制あるべし。士冠禮に三加の品を出せり、本朝又其禮あり。婚禮に婿婦服の法を出す。尤喪に斬齊衰齊大功緦麻等の制あり。祭に明衣淨衣等あり。賓客饗應に從て、其服の品あるべし。軍旅の容貌戎衣甲冑あり。幷に弓馬に宜しき衣服あり。其服の制一擧不可仕。具に究明して其宜に可從也。
新字:又朝廷燕居外出、各其服あるべし。朝廷は天下の礼義相定まり、君臣敬み守るの地也。分を守て乱るべからず。燕居して人に不交時は、褻の衣と号して私居の服あり。是は人に対面せぬ内宮に入ての服也。又朋友に会しては別なるべし。度々に衣服改ためんことも、ことわづらはしきに似たりといへども、礼服を常に着せんは、礼を軽んずるの失あり。褻の衣を着て人に交らんは、彼を侮るに同じ。且己れが威儀を以て下の情をも制して、法とらしむること、上下の道也、是利害を以て云にあらず。褻裘長、短右袂、非衣裳必殺之と云へる、各その服に品々多きを以て也。次に冠婚喪祭賓客饗応軍旅のことに因て、其服其制あるべし。士冠礼に三加の品を出せり、本朝又其礼あり。婚礼に婿婦服の法を出す。尤喪に斬斉衰斉大功緦麻等の制あり。祭に明衣浄衣等あり。賓客饗応に従て、其服の品あるべし。軍旅の容貌戎衣甲冑あり。幷に弓馬に宜しき衣服あり。其服の制一挙不可仕。具に究明して其宜に可従也。
書き下し
又朝廷燕居外出、各其服あるべし。朝廷は天下の礼義相定まり、君臣敬み守るの地也。分を守て乱るべからず。燕居して人に不交時は、褻の衣と号して私居の服あり。是は人に対面せぬ内宮に入ての服也。又朋友に会しては別なるべし。度々に衣服改ためんことも、ことわづらはしきに似たりといへども、礼服を常に着せんは、礼を軽んずるの失あり。褻の衣を着て人に交らんは、彼を侮るに同じ。且己れが威儀を以て下の情をも制して、法とらしむること、上下の道也、是利害を以て云にあらず。褻裘長、短右袂、非衣裳必殺之と云へる、各その服に品々多きを以て也。次に冠婚喪祭賓客饗応軍旅のことに因て、其服其制あるべし。士冠礼に三加の品を出せり、本朝又其礼あり。婚礼に婿婦服の法を出す。尤喪に斬斉衰斉大功緦麻等の制あり。祭に明衣浄衣等あり。賓客饗応に従て、其服の品あるべし。軍旅の容貌戎衣甲冑あり。幷に弓馬に宜しき衣服あり。其服の制一挙不可仕。具に究明して其宜に可従也。
現代語訳
また朝廷・家でくつろぐとき・外出には、それぞれの服があるべきである。朝廷は天下の礼義が定まり、君臣が敬って守る場である。分を守って乱してはならない。家にくつろいで人と交わらないときは、褻(け)の衣と呼んで私生活の服がある。これは人に対面しない奥向きに入ったときの服である。また朋友に会うときは別であるべきだ。そのたびに衣服を改めるのは煩わしいようだが、礼服をいつも着ていれば礼を軽んじる過ちがあり、褻の衣を着て人と交われば相手を侮るのと同じである。そのうえ自分の威儀によって下の者の心をも律し、手本とさせることが上下の道であって、これは損得で言うのではない。『論語』に「家着の皮衣は長く、右の袂を短くする」「衣裳(礼服の帷裳)でなければ必ず裁ち縮める」とあるのは、それぞれの服に種類が多いからである。次に冠礼・婚礼・喪礼・祭礼・賓客・饗応・軍旅のことによって、その服とその制度があるべきである。『儀礼』士冠礼に三加(三度冠を加える)の区別を出し、わが国にもまたその礼がある。婚礼には婿と嫁の服の法を出す。とりわけ喪には斬衰・斉衰・大功・小功・緦麻などの制度がある。祭には明衣・浄衣などがある。賓客や饗応に従ってその服の区別があるべきである。軍旅の姿には戎衣や甲冑がある。あわせて弓馬に適した衣服もある。その服の制度は一つひとつ挙げることはできない。詳しく究明して、そのふさわしさに従うべきである。
解説
この章句が説くこと
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