山鹿語類 / 士道・節飮食之用
其節如何してか計らんとならば、唯至て饑渴せざるを以て節とすべし。今推して是を論ずるに、人の飮食過不及なき時は、食は三時を以て一回とす。飮は其半にして一回す。云心は朝に起て辰の刻に食し飮し、而して三時を隔、未の刻に又飮食す。是朝夕の飮食其節に中る也。天地の變皆三數にあたれり。人の腹中又三時にして其飮食を消す。飮は其半にして一回すべき也。古人此制を詳にして、初めて朝夕の食を定めて、饑渴を養なはしむ。是不得已の天節也。是を過るときは、脾胃損じ、肉こゝに餘て、氣血却て弱し。是に不及ときは、脾胃うゑて、肉こゝに損じ、氣血不全。各天然の節をたがふるゆゑなり。此節たがへるの人は、氣質必ず變あるべし。唯是を以て節とすべし。日長ときは晝食し、夜長ときは夜食す。是二時の食に不定あるときの制也。不定あらずして是を好まんは、節を失に可至也。凡そ天は地によつてめぐる。人は脾胃の食を以て地とす。食たゆれば氣不廻。地なければ天不立が如し。
新字:其節如何してか計らんとならば、唯至て饑渇せざるを以て節とすべし。今推して是を論ずるに、人の飲食過不及なき時は、食は三時を以て一回とす。飲は其半にして一回す。云心は朝に起て辰の刻に食し飲し、而して三時を隔、未の刻に又飲食す。是朝夕の飲食其節に中る也。天地の変皆三数にあたれり。人の腹中又三時にして其飲食を消す。飲は其半にして一回すべき也。古人此制を詳にして、初めて朝夕の食を定めて、饑渇を養なはしむ。是不得已の天節也。是を過るときは、脾胃損じ、肉こゝに余て、気血却て弱し。是に不及ときは、脾胃うゑて、肉こゝに損じ、気血不全。各天然の節をたがふるゆゑなり。此節たがへるの人は、気質必ず変あるべし。唯是を以て節とすべし。日長ときは昼食し、夜長ときは夜食す。是二時の食に不定あるときの制也。不定あらずして是を好まんは、節を失に可至也。凡そ天は地によつてめぐる。人は脾胃の食を以て地とす。食たゆれば気不廻。地なければ天不立が如し。
書き下し
其節如何してか計らんとならば、唯至て饑渇せざるを以て節とすべし。今推して是を論ずるに、人の飲食過不及なき時は、食は三時を以て一回とす。飲は其半にして一回す。云心は朝に起て辰の刻に食し飲し、而して三時を隔、未の刻に又飲食す。是朝夕の飲食其節に中る也。天地の変皆三数にあたれり。人の腹中又三時にして其飲食を消す。飲は其半にして一回すべき也。古人此制を詳にして、初めて朝夕の食を定めて、饑渇を養なはしむ。是不得已の天節也。是を過るときは、脾胃損じ、肉こゝに余て、気血却て弱し。是に不及ときは、脾胃うゑて、肉こゝに損じ、気血不全。各天然の節をたがふるゆゑなり。此節たがへるの人は、気質必ず変あるべし。唯是を以て節とすべし。日長ときは昼食し、夜長ときは夜食す。是二時の食に不定あるときの制也。不定あらずして是を好まんは、節を失に可至也。凡そ天は地によつてめぐる。人は脾胃の食を以て地とす。食たゆれば気不廻。地なければ天不立が如し。
現代語訳
その節度をどのようにはかるかと言えば、ただ極端に飢えたり渇いたりしないことを節とすべきである。いま推して論じると、人の飲食に過不及がないときは、食は三時(約六時間)に一度、飲はその半分の間隔で一度である。その意味は、朝起きて辰の刻(午前八時ごろ)に食べ飲み、そうして三時をへだてて未の刻(午後二時ごろ)にまた飲食するということである。これが朝夕の飲食がその節度にかなうということである。天地の変化はみな三の数にあたる。人の腹の中もまた三時でその飲食を消化する。飲はその半分で一度とるべきである。古人はこの定めを詳しくして、初めて朝夕の食を定め、飢えと渇きを養わせた。これはやむを得ない天の節度である。これを過ぎると脾胃が損なわれ、肉が余って、気血がかえって弱る。これに及ばないと、脾胃が飢えて肉が損なわれ、気血が全うされない。どちらも天然の節度にたがうからである。この節度にたがう人は、気質に必ず変調が生じる。ただこれを節とすべきである。日の長いときは昼食をとり、夜の長いときは夜食をとる。これは二度の食事の間が一定しないときの定めである。一定しないわけでもないのにこれを好むのは、節度を失うことになる。およそ天は地によってめぐる。人は脾胃の食を地とする。食が絶えれば気がめぐらない。地がなければ天が立たないようなものである。
解説
この章句が説くこと
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