山鹿語類 / 士道・詳事物
况や臣として君につかへ、子としては父に孝有こと、事物の上を具にせずんば、每事必ゆきあたること有ぬべし。されば、虞夏の書に所出の皐陶謨、大禹謨、益稷、禹貢等の篇、可珍味也。周に至て、周公旦文王の子武王の弟にして、王子王孫たりといへども、七月の詩を作て民のことわざを詳にし、無逸の篇を以て成王を諫め、稼穡の艱難をしらしめ、周禮の法を定めて、至らぬくまもなく、人情の禮節を定む。是詳事物して其才の美なるゆへ也。
新字:況や臣として君につかへ、子としては父に孝有こと、事物の上を具にせずんば、毎事必ゆきあたること有ぬべし。されば、虞夏の書に所出の皐陶謨、大禹謨、益稷、禹貢等の篇、可珍味也。周に至て、周公旦文王の子武王の弟にして、王子王孫たりといへども、七月の詩を作て民のことわざを詳にし、無逸の篇を以て成王を諫め、稼穡の艱難をしらしめ、周礼の法を定めて、至らぬくまもなく、人情の礼節を定む。是詳事物して其才の美なるゆへ也。
書き下し
況や臣として君につかへ、子としては父に孝有こと、事物の上を具にせずんば、毎事必ゆきあたること有ぬべし。されば、虞夏の書に所出の皐陶謨、大禹謨、益稷、禹貢等の篇、可珍味也。周に至て、周公旦文王の子武王の弟にして、王子王孫たりといへども、七月の詩を作て民のことわざを詳にし、無逸の篇を以て成王を諫め、稼穡の艱難をしらしめ、周礼の法を定めて、至らぬくまもなく、人情の礼節を定む。是詳事物して其才の美なるゆへ也。
現代語訳
まして臣として主君に仕え、子として父に孝を尽くすのに、事物のことを詳しくしなければ、事ごとに必ず行き詰まることがあるだろう。だから虞・夏の書(尚書)に出ている皐陶謨・大禹謨・益稷・禹貢などの篇は、珍重して味わうべきである。周の時代になって、周公旦は文王の子、武王の弟で、王子・王孫であったが、七月の詩を作って民の仕事を詳しく述べ、無逸の篇で成王を諫めて農作の苦労を知らせ、周礼の法を定めて行き届かないところがなく、人情の礼節を定めた。これは事物を詳しくして、その才が優れていたからである。
解説
この章句が説くこと
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『君子訓』巻之下一或処に頑民あり、しばしば其父を打つ。奉行聞きて其罪を糺し、君に告げて是を刑戮す。頑民殺さるる時まで尚其罪に服せずしていふ、我もし他人の父を打ち候はばこそ罪せらるべけれ、我が父をこそ打ち候へ、左程罪とは覚え候はず。かかる無理なる刑にあふ事、不幸の至りなりとて、上を怨みけるとなん。或士是を聞きて、彼の民の言ひしも一理ありといへり。此の士不学にして、孝の道の重きを知らず、五刑の属三千にして、罪不孝より大なるはなしといふ事を聞かずして、かくは言ひけるならし。然れば、四民ともに人倫の教なくんばあるべからず。村里に仏堂を建て、僧法師の輩、朝暮仏法を勧むる程にこそなるまじけれ、せめて其所の司時々来りて、耕作を勤め、父母を養ひ、君長をうやまひ、法令を守り、廉潔をはげまし、正直にして偽なく、人と争ふ事なきやうに教へ戒めば、風俗正しく、万民和順にして、使ひ易かるべし。殊に農人は、世事になれず、悪習に染まず、其心朴なり。道理を以て教へ導かば、善に遷り易くして、古の淳朴なる風にも立帰るべし。
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『五常訓』巻之二・仁之上天地の万物をうみ給へる内に、取わき人倫を尤あつくし給ふは、人は万物の霊なれば、禽獣草木に同じからず。天地の性、人を貴しとす。ここを以て、天地の御心をうけて、まづ専人倫をあつくあはれみ、次には鳥獣草木をも愛すべし。君子の道は、唯一すぢに天地の御心にしたがひて、背かざるにあり。是天に事へて孝を行ふなり。是を仁と云ふ。もし人倫を愛せずして不仁なるは、天地の不孝の子なり。孟子に、親を親みて民を仁し、民を仁して物を愛すといへり。君子の仁愛を行ふ、其次第かくの如くなるは、其品にしたがひて、心を用ふるに厚薄あり。是自然の理にしたがへり。まづ父母兄弟を親み、次に親戚を親むは、皆是親親也。次に民を仁す。民とは万民なり。
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『呻吟語』外篇・治道・皆な吾が民なり天下の民は皆な朝廷の民なり、皆な天地の民なり、皆な吾が民なり。
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『呻吟語』外篇・治道・民と安の二つ天下を取り、天下を守るは、只だ一種の人の上に意念を加へ、一個の字の上に工夫を做すに在り。一種の人は是れ那個ぞ。曰く民。一個の字は是れ甚麼ぞ。曰く安。
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『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
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『呻吟語』外篇・治道・惟だ邱民のみ收拾し難し無事の時は惟だ邱民のみ蹂踐し好し。吏卒より以上、人人得て之を魚肉す。有事の時は惟だ邱民のみ收拾し難し。天子と雖も亦た躲避する處無し。何ぞ況んや衣冠をや。此れ詩を誦し書を讀む者と道ひ難きなり。
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