和俗童子訓 / 巻之五・教女子法
或は不義淫行もありて、追出さるゝこと、世に多し。是親の敎なきが故なり。古語に、人よく百萬錢を出して女を嫁せしむる事を知りて、十萬錢を出して子を敎ふることを知らずと云へるがごとし。婚嫁の營に心を盡す十分が一の心遣を以て、女子を敎へ戒めば、女子の、身を惡しくもてなし、禍に至らざるべきに、斯の如くなるは、子を愛する道を知らざるが故なり。
新字:或は不義淫行もありて、追出さるゝこと、世に多し。是親の教なきが故なり。古語に、人よく百万銭を出して女を嫁せしむる事を知りて、十万銭を出して子を教ふることを知らずと云へるがごとし。婚嫁の営に心を尽す十分が一の心遣を以て、女子を教へ戒めば、女子の、身を悪しくもてなし、禍に至らざるべきに、斯の如くなるは、子を愛する道を知らざるが故なり。
書き下し
或は不義淫行もありて、追出さるること、世に多し。是親の教なきが故なり。古語に、人よく百万銭を出して女を嫁せしむる事を知りて、十万銭を出して子を教ふることを知らずと云へるがごとし。婚嫁の営に心を尽す十分が一の心遣を以て、女子を教へ戒めば、女子の、身を悪しくもてなし、禍に至らざるべきに、斯の如くなるは、子を愛する道を知らざるが故なり。
現代語訳
あるいは不義や淫らな行いもあって、追い出されることが世に多いのです。これは親の教えがないからです。古い言葉に「人はよく百万銭を出して娘を嫁がせることを知っているが、十万銭を出して子を教えることを知らない」とあるとおりです。婚礼の準備に心を尽くす、その十分の一の心づかいで娘を教え戒めれば、娘が身を悪く扱って禍に至ることはないはずなのに、このようになるのは、子を愛する道を知らないからです。
解説
この章句が説くこと
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『墨子』節用中子墨子言いて曰く、古者、明王聖人の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、彼れ其れ民を愛すること謹みて忠、民を利すること謹みて厚く、忠信、相い連なり、又た之に示すに利を以てす。是を以て身を終うるまで饜かず、殁して二十にして卷まず。古者、明王聖人の其の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、此れなり。
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『都鄙問答』卷之一・孝ノ道ヲ問ノ段答ふ、かくのごとき者を、世間並みの人と思ふべけれど、親へつかふる道は、曾て知らざる者なり。汝は書を読みながら、書を読まざる愚昧の者を、法とするゆへに、父母に事ふる道を知らず。昔し公明宣、曾子に学ぶこと三年、書を読まず。曾子曰く、宣、参の門に居ること三年、学ばざるは何ぞや。公明宣曰く、安んぞ敢へて学ばざらん。宣、夫子の庭に居るを見るに、親在せば、叱咤の声未だ嘗て犬馬に至らず。宣之を説びて、学べども未だ能はず、と云へり。曾子の如きは、親の前にては、犬や馬さへ怒りて叱り玉はず。然るに汝は、只養ふを孝と思へり。子曰く、今の孝は是れ能く養ふを謂ふ。犬馬に至るまで皆能く養ふこと有り。敬せずんば何を以て別たんや、と。是の如くなる時は、父母に事ふる道は、愛と敬との二つなり。愛は、いつくしみあいする心なり。敬は、つつしみうやまふ心なり。然るに汝は、父母の命を用ひずして心を痛ましむ。心を痛ましむるは、愛心なきが故なり。命を用ひざるは、敬心なきが故なり。愛敬の心なきは、鳥獣に同じ。汝は世に呼ばるるほどの孝を問ふ。聖賢の孝を聞かんと思はば、早く愛敬の心を知るべし。愛敬の心を知らば、聖賢の孝にも到るべし。
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