和俗童子訓 / 巻之五・教女子法
一およそ此十三ヶ條を、女子のいまだ嫁せざる前に、能く敎ふべし。又書きつけて與へ、をりをり讀ましめ、忘るゝことなく、これを守らしむべし。凡世の人の女子を嫁せしむるに、必、其家の分限に過ぎて、甚おごり、花美をなし、多くの財を費し用ひ、衣服器物などを、いくらも買ひとゝのへ、其餘の饗應贈答のつひえも亦夥し、これ世の習はしなり。されど女子をいましめ敎へて、其身を愼み治めしむること、衣服器物をかざれるより、女子のため甚利益ある事を知らず、幼き時より嫁して後に至るまで、何の敎もなくて、唯其生れつきに任せぬれば、身を愼み家を治る道を知らず、夫の家に行きて、おごり怠り、しうと夫に順はずして、人に疎まれ、夫婦和順ならず。
新字:一およそ此十三ヶ条を、女子のいまだ嫁せざる前に、能く教ふべし。又書きつけて与へ、をりをり読ましめ、忘るゝことなく、これを守らしむべし。凡世の人の女子を嫁せしむるに、必、其家の分限に過ぎて、甚おごり、花美をなし、多くの財を費し用ひ、衣服器物などを、いくらも買ひとゝのへ、其余の饗応贈答のつひえも亦夥し、これ世の習はしなり。されど女子をいましめ教へて、其身を慎み治めしむること、衣服器物をかざれるより、女子のため甚利益ある事を知らず、幼き時より嫁して後に至るまで、何の教もなくて、唯其生れつきに任せぬれば、身を慎み家を治る道を知らず、夫の家に行きて、おごり怠り、しうと夫に順はずして、人に疎まれ、夫婦和順ならず。
書き下し
一およそ此十三ヶ条を、女子のいまだ嫁せざる前に、能く教ふべし。又書きつけて与へ、をりをり読ましめ、忘るることなく、これを守らしむべし。凡世の人の女子を嫁せしむるに、必、其家の分限に過ぎて、甚おごり、花美をなし、多くの財を費し用ひ、衣服器物などを、いくらも買ひととのへ、其余の饗応贈答のつひえも亦夥し、これ世の習はしなり。されど女子をいましめ教へて、其身を慎み治めしむること、衣服器物をかざれるより、女子のため甚利益ある事を知らず、幼き時より嫁して後に至るまで、何の教もなくて、唯其生れつきに任せぬれば、身を慎み家を治る道を知らず、夫の家に行きて、おごり怠り、しうと夫に順はずして、人に疎まれ、夫婦和順ならず。
現代語訳
およそこの十三か条を、女子がまだ嫁がないうちに、よく教えなさい。また書きつけて与え、折々読ませて、忘れることなくこれを守らせなさい。およそ世の人が娘を嫁がせるには、必ずその家の分限を超えて、はなはだ驕り、華美を尽くし、多くの財を費やし、衣服や器物などをいくらでも買いそろえ、そのほかの宴や贈答の費えもまたおびただしいのが世の習わしです。けれども娘を戒め教えて、その身を慎み治めさせることが、衣服や器物を飾ることよりも、娘のためにはなはだ利益のあることを知らず、幼い時から嫁いだ後に至るまで何の教えもなく、ただその生まれつきに任せているので、身を慎み家を治める道を知らず、夫の家に行って驕り怠け、舅や夫に従わずに人に疎まれ、夫婦が和順でありません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法身のかざりは外の事なれば、唯身に応じたる衣服をもちひて、あながちに飾りて外にかがやかし、人にほこるべからず。愚なる俗人、又賤しき下部、賤の女などに、衣服のはなやかなるを誉められたりとも益なし。よき人は、かへりて謗り賤むべきわざにこそあれ。十二曰、我が里の親の方に私し、舅姑夫の方を次にすべからず。正月佳節などにも、まづ夫の方の客をつとめて、親の里には、次の日行きてまみゆべし。夫の方をすてて、佳節に我が親の里に行くべからず。しうと夫の免さざるに、父母兄弟の方に行くべからず。私に親の方へ贈物すべからず。又我が里のよき事をほこりて、誉め語るべからず。十三曰、下女を使ふに、心を用ふべし。いふかひなきものは、ならはし悪しくて、智恵なく、心かたましく、其うへ物いふことさがなし。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法一又女子の嫁する時、兼てより父母の教ふべき事十三ヶ条あり。一曰、我が家にありては、我が父母にもはら孝を行ふ理なり。されども夫の家に往きては、もはら舅姑を、我が二親よりも猶重んじて、厚く愛み敬ひ、孝行を尽すべし。親の方を重んじ、しうとの方を軽んずる事なかれ。しうとの方に、朝夕の見舞を欠くべからず。しうとの方の務むべきわざを怠るべからず。若しうとの命あらば、慎み行ひて背くべからず。凡の事、舅姑に問ひて、其教に任すべし。舅姑もし我を愛せずして、謗り悪むと怒り恨むる事なかれ。孝を尽して、誠を以て感ぜしむれば、彼もまた人心あれば、後は必心和ぎて、いつくしみある理なり。二曰、婦人は別に主君なし。夫を誠に主君と思ひて、敬ひ慎みて事ふべし。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法唯人間の勤をもはらになすべし。目に見えぬ鬼神の方に、心を迷はすべからず。九曰、人の妻となりては、其家を能く保つべし。妻の行悪しく放逸なれば、家を破る。財を用ふるに、倹約にして費をなすべからず。おごりを戒むべし。衣服、飲食、器物など、其分に随ひて、あひ似合ひたるを用ふべし。みだりに飾をなし、分限に過ぎたるを好むべからず。妻おごりて財を費せば、其家かならず貧窮に苦めり。夫たるもの、是に打任せて、其是非を察せざるは、愚なりと云ふべし。十曰、若き時は、夫の兄弟親戚朋友、或は下部などの若き男来らんに、なづさひて近づきまつはれ、打とけ物語すべからず。慎みて男女の隔を固くすべし。如何なるとみの用あるとも、若き男にふみなどかよはする事は、必あるべからず。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法一いにしへ、女子の嫁する時、其母中門まで送りて、戒めて曰く、汝が家に行きて、必慎み、必戒めて、夫の心に背くこと勿れと言へり。是古の女子の嫁する時、親の教ふる礼法なり。女子の父母、能く此理を言聞せ戒むべし。女子も、また此理を心得て、守り行ふべし。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法一凡女子を愛し過して、恣に育てぬれば、夫の家に行きて、必おごりおこたりて、他人の気に合はず、終にしうとに疎まれ、夫にすさめられ、夫婦不和になり、おひ出され、恥をさらすもの多し。女子の父母、我が教なき事を恥ぢずして、しうと夫の悪しきとのみ思ふこと愚なり。父母の教なかりし女子は、夫の家に行き、しうとの教正しければ、せわらしく堪へ難く思ひて、しうとを恨み謗り、中悪しくなる。親の家にて教なければ、斯の如し。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法或は不義淫行もありて、追出さるること、世に多し。是親の教なきが故なり。古語に、人よく百万銭を出して女を嫁せしむる事を知りて、十万銭を出して子を教ふることを知らずと云へるがごとし。婚嫁の営に心を尽す十分が一の心遣を以て、女子を教へ戒めば、女子の、身を悪しくもてなし、禍に至らざるべきに、斯の如くなるは、子を愛する道を知らざるが故なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る