和俗童子訓 / 巻之五・教女子法
一婦人には三從の道あり。凡婦人は、柔和にして人に從ふを道とす。我が心に任せて行ふべからず。故に三從の道と云ふことあり。是亦女子に敎ふべし。父の家に在りては父に從ひ、夫の家にゆきては夫に從ひ、夫死しては子に從ふを三從と云ふ。三のしたがふなり。幼より身を終るまで、我が儘に事を行ふべからず。必人に從ひてなすべし。父の家に在りても、夫の家に行きても、常に閨門の内に居て、外に出でず。嫁して後は、父の家に行くことも稀なるべし。況や他の家には、やむ事を得ざるにあらずんば、輕々しく行くべからず。唯使を遣はして、音問を通し、親みをなすべし。其つとむる所は、しうと夫につかへ、衣服をこしらへ、飮食を調へ、內を治めて、家をよく保つを以てわざとす。我が身にほこり、かしこだてにて外事にあづかること、ゆめゆめ有るべからず。夫を凌ぎて物をいひ、事を恣に振舞ふべからず。是皆女の戒むべき事なり。詩經の詩に、彼に在りても惡まるゝ事なく、此に在つてもいとはるゝ事なしと云へり。婦人の身を保つは、常に愼みて、斯の如くなるべし。
新字:一婦人には三従の道あり。凡婦人は、柔和にして人に従ふを道とす。我が心に任せて行ふべからず。故に三従の道と云ふことあり。是亦女子に教ふべし。父の家に在りては父に従ひ、夫の家にゆきては夫に従ひ、夫死しては子に従ふを三従と云ふ。三のしたがふなり。幼より身を終るまで、我が儘に事を行ふべからず。必人に従ひてなすべし。父の家に在りても、夫の家に行きても、常に閨門の内に居て、外に出でず。嫁して後は、父の家に行くことも稀なるべし。況や他の家には、やむ事を得ざるにあらずんば、軽々しく行くべからず。唯使を遣はして、音問を通し、親みをなすべし。其つとむる所は、しうと夫につかへ、衣服をこしらへ、飲食を調へ、内を治めて、家をよく保つを以てわざとす。我が身にほこり、かしこだてにて外事にあづかること、ゆめゆめ有るべからず。夫を凌ぎて物をいひ、事を恣に振舞ふべからず。是皆女の戒むべき事なり。詩経の詩に、彼に在りても悪まるゝ事なく、此に在つてもいとはるゝ事なしと云へり。婦人の身を保つは、常に慎みて、斯の如くなるべし。
書き下し
一婦人には三従の道あり。凡婦人は、柔和にして人に従ふを道とす。我が心に任せて行ふべからず。故に三従の道と云ふことあり。是亦女子に教ふべし。父の家に在りては父に従ひ、夫の家にゆきては夫に従ひ、夫死しては子に従ふを三従と云ふ。三のしたがふなり。幼より身を終るまで、我が儘に事を行ふべからず。必人に従ひてなすべし。父の家に在りても、夫の家に行きても、常に閨門の内に居て、外に出でず。嫁して後は、父の家に行くことも稀なるべし。況や他の家には、やむ事を得ざるにあらずんば、軽々しく行くべからず。唯使を遣はして、音問を通し、親みをなすべし。其つとむる所は、しうと夫につかへ、衣服をこしらへ、飲食を調へ、内を治めて、家をよく保つを以てわざとす。我が身にほこり、かしこだてにて外事にあづかること、ゆめゆめ有るべからず。夫を凌ぎて物をいひ、事を恣に振舞ふべからず。是皆女の戒むべき事なり。詩経の詩に、彼に在りても悪まるる事なく、此に在つてもいとはるる事なしと云へり。婦人の身を保つは、常に慎みて、斯の如くなるべし。
現代語訳
婦人には三従の道があります。およそ婦人は、柔和で人に従うことを道とします。自分の心に任せて行ってはなりません。ですから三従の道ということがあります。これもまた女子に教えなさい。父の家にいては父に従い、夫の家に行っては夫に従い、夫が死んでからは子に従うのを三従と言います。三つの従うことです。幼い時から身を終えるまで、わがままに事を行ってはなりません。必ず人に従って行いなさい。父の家にいても夫の家に行っても、いつも奥の部屋の内にいて、外に出ません。嫁いだ後は、父の家に行くこともまれにしなさい。まして他の家には、やむを得ない事情でなければ、軽々しく行ってはなりません。ただ使いを遣わして便りを通わせ、親しみを保ちなさい。その勤めるところは、舅や夫に仕え、衣服を作り、飲食を整え、内を治めて、家をよく保つことを仕事とします。自分にほこり、利口ぶって外のことに関わることは、決してあってはなりません。夫をしのいでものを言い、事を勝手にふるまってはなりません。これらは皆、女性が戒めるべきことです。詩経の詩に「あちらにいても憎まれることなく、こちらにいても嫌われることがない」とあります。婦人が身を保つのは、常に慎んで、このようであるべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之五・教女子法一婦人は人に事ふるものなり。家に居ては父母に事へ、人に嫁しては舅姑夫に事ふるに、慎みて背かざるを道とす。もろこしの曹大家が言にも、敬順の道は婦人の礼なりと云へり。然れば女は敬順の二を常に守るべし。敬とはつつしむなり、順はしたがふなり。つつしむとは恐れて恣ならざるを云ふ。つつしみにあらざれば、和順の道も行ひ難し。およそ女の道は順を尊ぶ。順の行はるるは、ひとへに慎むよりおこれり。詩経に、戦々とつつしみ、兢々とおそれて、深き淵に臨むが如く、薄き氷を履むが如しと云へるは、恐れ慎むの心をかたどりて云へり。慎みて恐るる心持、斯の如くなるべし。
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『和俗童子訓』巻之五・教女子法軽しめ侮るべからず。和ぎ順ひて、其心に違ふべからず。凡婦人の道は従ふにあり。夫に対するに、顔色言葉遣慇懃にへり下り、和順なるべし。いぶりにして不順なるべからず。おごりて無礼なるべからず。是女子第一のつとめなり。夫の教いましめあらば、其命に背くべからず、疑はしき事は、夫に問ひて、其命を受くべし。夫問ふ事あらば、正しく答ふべし。其いらへおろそかにすべからず。答の正しからず、其理聞えざるは無礼なり。夫もし怒り責むる事あらば、おそれて従ふべし。怒り争ひて、其心に逆ふべからず。それ婦人は夫を以て天とす。夫を侮ることは、かへすがへすあるべからず。夫を侮り背きて、天より怒り責めらるるに至るは、是婦人の不徳の甚しきにて、大なる恥なり。
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『和俗童子訓』巻之五・教女子法一女は人につかふるものなれば、父の家富貴なりとても、夫の家に行きては、其親の家に在りし時より、身をひきくして、舅姑にへりくだり、慎み仕へて、朝夕のつとめ怠るべからず。舅姑のために衣を縫ひ、食を調へ、我が家にては、夫に仕へて高ぶらず、自ら衣をたたみ、席をはき、食を調へ、うみ、つむぎ、縫物し、子を育て、けがれを洗ひ、婢多くとも、万の事に自ら辛労をこらへて勤むる、是婦人の職分なれば、我が位と身に応ぜぬほど、引きさがり勤むべし。斯のごとくすれば、しうと夫の心に叶ひ、家人の心を得て、能く家を保つ。又我が身に高ぶりて人をさし使ひ、勤むべき事に怠りて、身を安楽に置くは、しうとに憎まれ、下人に謗られて、人の心を失ひ、其家を能く治むる事なし。
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『学問のすゝめ』八編・わが心をもって他人の身を制すべからず・婦人に三従の道あり『女大学』という書に、「婦人に三従の道あり、稚き時は父母に従い、嫁いる時は夫に従い、老いては子に従うべし」と言えり。稚き時に父母に従うは尤もなれども、嫁いりて後に夫に従うとはいかにしてこれに従うことなるや、その従うさまを問わざるべからず。『女大学』の文によれば、亭主は酒を飲み、女郎に耽り、妻をののしり子を叱りて、放蕩淫乱を尽くすも、婦人はこれに従い、この淫夫を天のごとく敬い尊み、顔色を和らげ、悦ばしき言葉にてこれを意見すべしとのみありて、その先の始末をば記さず。さればこの教えの趣意は、淫夫にても姦夫にてもすでに己が夫と約束したるうえは、いかなる恥辱を蒙るもこれに従わざるをえず、ただ心にも思わぬ顔色を作りて諫むるの権義あるのみ。その諫めに従うと従わざるとは淫夫の心次第にて、すなわち淫夫の心はこれを天命と思うよりほかに手段あることなし。
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『和俗童子訓』巻之五・教女子法一又女子の嫁する時、兼てより父母の教ふべき事十三ヶ条あり。一曰、我が家にありては、我が父母にもはら孝を行ふ理なり。されども夫の家に往きては、もはら舅姑を、我が二親よりも猶重んじて、厚く愛み敬ひ、孝行を尽すべし。親の方を重んじ、しうとの方を軽んずる事なかれ。しうとの方に、朝夕の見舞を欠くべからず。しうとの方の務むべきわざを怠るべからず。若しうとの命あらば、慎み行ひて背くべからず。凡の事、舅姑に問ひて、其教に任すべし。舅姑もし我を愛せずして、謗り悪むと怒り恨むる事なかれ。孝を尽して、誠を以て感ぜしむれば、彼もまた人心あれば、後は必心和ぎて、いつくしみある理なり。二曰、婦人は別に主君なし。夫を誠に主君と思ひて、敬ひ慎みて事ふべし。
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『翁問答』上卷之本妻順正の二徳を以て、夫に事ふるを本とす、順は心立てにゆわに物言ひ、素振り立ふるまい迄も、和らかに従ふ徳なり、正は義理作法を正しく守る徳なり、妻は夫を天と頼み、夫の家を妻の家となし、夫婦一体の理なる故に、我本生の父母を父母とせずして、夫の父母を父母とするは、聖人の定る所にして、不易の天則なり、然る故に先舅姑に孝行なるを順正の第一とす、扨女の三徳を守るは、女事を能く勤め作法正しく、夫の下知に従ひ家を斉へ、子孫を育て宗族を和睦し、家人に恩を施すは、婦徳の大槪なり、夫は陽徳に従ひ、外を治めて和義の徳を明かにして妻を倡ふ、妻は陰徳に従ひ内を治て順正の徳を明かにして夫に従ひ、男女陰陽内外の差別如此正して、家治り父母兄弟子孫臣妾皆相親睦して、和気合同する故に、夫婦の道別を本とす此道理天命の本然自からある故に、五教の第三に夫婦有別と説き給へり
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