和俗童子訓 / 巻之三・読書法
一史は古を記せるふみなり。記錄の事なり。史書は往古の迹をかんがへて、今日の鑑とする事なれば、是亦經につぎて必讀むべし。經書を學ぶいとまに、和漢の史を讀み、古今に通ずべし。古今に通ぜざれば、くらくして用に達せず。日本の史は、日本紀以下六國史より、近代の野史に至るべし。野史も亦多し、廣く見るべし。中夏の史は、左傳史記、漢書以下なるべし。朱子綱目の書は、歷代を通貫し、世敎を助けて、天下萬世に益あり。經傳の外、是に及べる好書はあるべからず。此一書を出でずして、古の事に通じ、善惡を辨じ、天下國家を治むる道理明なり。誠に世の寶なり。學者是を好んで玩覽すべし。殊に國家を治むる人の鑑なり。又通鑑前編續編をも見るべし。前編伏犧より周まで、朱子綱目以前の事を記せり。續編は宋元の事を記す。朱子綱目以後の事なり。是に續きて、皇明通記、皇明實記などを見れば、古今に貫通す。
新字:一史は古を記せるふみなり。記録の事なり。史書は往古の迹をかんがへて、今日の鑑とする事なれば、是亦経につぎて必読むべし。経書を学ぶいとまに、和漢の史を読み、古今に通ずべし。古今に通ぜざれば、くらくして用に達せず。日本の史は、日本紀以下六国史より、近代の野史に至るべし。野史も亦多し、広く見るべし。中夏の史は、左伝史記、漢書以下なるべし。朱子綱目の書は、歴代を通貫し、世教を助けて、天下万世に益あり。経伝の外、是に及べる好書はあるべからず。此一書を出でずして、古の事に通じ、善悪を弁じ、天下国家を治むる道理明なり。誠に世の宝なり。学者是を好んで玩覧すべし。殊に国家を治むる人の鑑なり。又通鑑前編続編をも見るべし。前編伏犠より周まで、朱子綱目以前の事を記せり。続編は宋元の事を記す。朱子綱目以後の事なり。是に続きて、皇明通記、皇明実記などを見れば、古今に貫通す。
書き下し
一史は古を記せるふみなり。記録の事なり。史書は往古の迹をかんがへて、今日の鑑とする事なれば、是亦経につぎて必読むべし。経書を学ぶいとまに、和漢の史を読み、古今に通ずべし。古今に通ぜざれば、くらくして用に達せず。日本の史は、日本紀以下六国史より、近代の野史に至るべし。野史も亦多し、広く見るべし。中夏の史は、左伝史記、漢書以下なるべし。朱子綱目の書は、歴代を通貫し、世教を助けて、天下万世に益あり。経伝の外、是に及べる好書はあるべからず。此一書を出でずして、古の事に通じ、善悪を弁じ、天下国家を治むる道理明なり。誠に世の宝なり。学者是を好んで玩覧すべし。殊に国家を治むる人の鑑なり。又通鑑前編続編をも見るべし。前編伏犠より周まで、朱子綱目以前の事を記せり。続編は宋元の事を記す。朱子綱目以後の事なり。是に続きて、皇明通記、皇明実記などを見れば、古今に貫通す。
現代語訳
史とは昔を記した書物です。記録のことです。史書は昔の跡を考えて、今日の鑑とするものなので、これもまた経書に次いで必ず読みなさい。経書を学ぶ合間に和漢の歴史を読んで、古今に通じなさい。古今に通じなければ、物事に暗くて役に立ちません。日本の歴史は、日本書紀以下の六国史から、近代の民間の歴史書まで読みなさい。民間の歴史書も多くありますから、広く見なさい。中国の歴史は、左伝・史記・漢書以下を読みなさい。朱子の綱目(資治通鑑綱目)の書は、歴代を通して貫き、世の教えを助けて、天下万世に益があります。経書と伝のほかで、これに及ぶ良書はないでしょう。この一書を出なくても、昔のことに通じ、善悪をわきまえ、天下国家を治める道理が明らかになります。まことに世の宝です。学者はこれを好んで味わい読みなさい。特に国家を治める人の鑑です。また通鑑前編と続編も見なさい。前編は伏羲から周までの、朱子の綱目より前のことを記しています。続編は宋・元のことを記しています。朱子の綱目より後のことです。これに続いて皇明通紀・皇明実記などを見れば、古今に通じることができます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『童子問』卷下史を読むの法を問ふ。曰く、経は道を載する者なり。史は道を以て之を裁する者なり。故に道を知る者に非ざれば、則ち史の用を尽くすこと無きなり。大凡史を読むには、涑水の通鑑、朱子の綱目を以て要と為す。本末相貫き、次第相承け、古今の治乱成敗、犂然として畢く見ゆ。史家の権衡と謂ふべきなり。一代の治乱得失、典故人物を観んと欲せば、須らく正史を見るべし。万目挙がりて紀綱正しからざる者有り、紀綱正しくして人意に満たざる者有り、紀綱万目を併せて漫然として統無き者有り。是れ史を看るの要なり。此の方の学者、大類史を以て小説の流と做して看る。笑ふべきの甚だしきなり。古今の史臣、卓識有る者寡なし。其の著す所の論賛、膚浅冗雑にして、観るに足る者無し。須らく諸儒の論評を考へて、以て断と為すべし。但其の間に議論刻薄にして、反つて実を失ふ者有り。弁ぜざるべからず。史を読むには、須らく経を以て断と為すべし。史中より功夫を作すこと勿かれ。晦翁は老泉父子の学、皆史記・戦国策中より功夫を作すことを議す。又東萊の博学純正を以てすら、猶其の全体史学なるを譏る。皆聡門頂上の一針なり。
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『慎思録』巻之四史書は朱子の綱目を以て要と為す。其の書為るや、古今を貫綜し、義理を扶植す。其の義を立つるや、褒貶予奪を以て、其の是非得失を正すこと、規矩準縄の如し。以て倫理綱常を明らかにすべし。其の事を載するや、簡要にして冗雑ならず。以て古昔天下の事に通じ、其の治乱盛衰の道を知るべし。蓋し世に垂れ教へを立つるの大典と為すべく、啻に歴史の比のみに非ざるなり。天地の間、此の書無かるべからざるなり。学者経を読むの余暇に、須らく終身循環して之を読みて廃せざるべし。
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『慎思録』巻之四朱子曰く、先づ史記を読み、次に左伝を看、次に通鑑を看る。余力有らば則ち全史を看よ、と。愚謂へらく、史を読むの序は、当に此の如くなるべし。左伝を読む者は、国語戦国策も亦た兼ね読むべし。朱子の通鑑と称する者は、是れ温公の通鑑なり。此の書は之を綱目に比ぶれば、其の事を記すや、本末詳備なり。学者余暇有らば、則ち須らく兼ねて之を読むべし。然れども其の書甚だ広博なるが為に、学者の周覧に倦む所以なり。
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『童子問』卷下問ふ、予平生専ら力を経を治むるに用ひて、史漢通鑑等の書に於ては、未だ嘗て一たびも其の間に目を過ぎらず。或いは必ず須らく史を読むべしと謂ひ、或いは既に経を明らかにせば何ぞ必ずしも史を読まんと謂ふ。如何、と。曰く、史は治乱得失の林なり。読まざるべからず。詩・書・春秋は、皆古の聖人の史なり。故に経史と称す。苟も史書を読まざれば、則ち略々道理に通暁することを得と雖も、然も其の智局促寡陋にして、反つて意思条暢を欠く。譬へば則ち人遐陬僻壌に生長して、通都大邑に走り、賢士大夫の間に周旋して、風俗の美、人物の雅なる者を観ざれば、郷俗の習ひ、終身除かれず、其の智も亦膚浅隘陋にして、動もすれば措置を失ふがごとし。故に語孟詩書既に通ずるの後は、必ず史を読まざるべからず。多きを貪ること勿かれ。強記を事とすること勿かれ。但古今の大治乱・大機会・大成敗、及び賢人君子の讜論懿行に於ては、須らく歴歴として記取すべし。
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『文武訓』文訓下之末一古への歴史、通鑑などを通じて読めば、天下の広き、古今の久しき事、ことごとく見えて、胸中に明かなり。いにしへのあとを考へて、今来の鑑とすべし。是聖経をたすけ、義理をひろく考ふべし。是大なる益なり。又古来の事をひろく知るも、大なる楽なり。
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『大和俗訓』巻之一・為学上聖人の書を経と云ふ。経とは常なり。聖人の言は万世の常道なり。賢人の書を伝といふ。伝とは聖人の道を述べ、後代に伝ふるなり。四書五経は経なり。其註並に周程張朱の書は伝なり。歴代の事をしるせる書を史と云ふ。記録のことなり。子は荀子、楊子、淮南子、説苑、文中子等の諸氏の書を云ふ。是は程朱の書のごとく、道理精明なるにはあらざれども、経書の義理を助くる益あり、見るべし。集は諸家の文章等の書なり。是又義理を説明せり。此経史子集の四の書は、本末軽重あれども、皆学問のため用ある書なり。道を知らんとならば、経学を専らとして、一生つとむべし。次に史学、是も其益大なり。次に諸子諸集を見るべし。朱子綱目、尤も好書なり。古代の治乱盛衰の事跡をしるのみにあらず、義理の学にも、亦大に助あり。
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