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和俗童子訓 / 巻之三・読書法

十七月十八日なれば、一年半には足らずして、其功終りぬ。早く思ひ立ちて、斯の如くすべし。是にまされる學問のよき法なし。其つとめ易くして、其功は甚大なり。我がともがら、若き時此良法を知らずして、空しく過し、今八十に成りて、年のつもりに、やうやう學びやうの道、少し心に思ひ知れる故、今更悔甚し。又尙書の内純粹なる數篇、詩經周易の全文、禮記九萬九千字の内其精要なる文字をえらんで三萬字、左傳の最要用なる文を數萬言、是も亦日課を定めて百遍熟讀せば、文字に於て、恐らくは世に類なかるべし。是學問の良法なり。

新字:十七月十八日なれば、一年半には足らずして、其功終りぬ。早く思ひ立ちて、斯の如くすべし。是にまされる学問のよき法なし。其つとめ易くして、其功は甚大なり。我がともがら、若き時此良法を知らずして、空しく過し、今八十に成りて、年のつもりに、やうやう学びやうの道、少し心に思ひ知れる故、今更悔甚し。又尚書の内純粋なる数篇、詩経周易の全文、礼記九万九千字の内其精要なる文字をえらんで三万字、左伝の最要用なる文を数万言、是も亦日課を定めて百遍熟読せば、文字に於て、恐らくは世に類なかるべし。是学問の良法なり。

書き下し

十七月十八日なれば、一年半には足らずして、其功終りぬ。早く思ひ立ちて、斯の如くすべし。是にまされる学問のよき法なし。其つとめ易くして、其功は甚大なり。我がともがら、若き時此良法を知らずして、空しく過し、今八十に成りて、年のつもりに、やうやう学びやうの道、少し心に思ひ知れる故、今更悔甚し。又尚書の内純粋なる数篇、詩経周易の全文、礼記九万九千字の内其精要なる文字をえらんで三万字、左伝の最要用なる文を数万言、是も亦日課を定めて百遍熟読せば、文字に於て、恐らくは世に類なかるべし。是学問の良法なり。

現代語訳

十七か月と十八日ですから、一年半に足りずに、その功は終わります。早く思い立って、このようにしなさい。これにまさる学問のよい方法はありません。その勤めは易しく、その功ははなはだ大きいのです。私たちの仲間は、若い時にこのよい方法を知らずにむなしく過ごし、今八十歳になって、年の積み重ねで、ようやく学び方の道が少し心にわかるようになったので、今さらながら後悔ははなはだしいのです。また尚書(書経)の中の純粋な数篇、詩経と周易の全文、礼記九万九千字の中からその精要な文字を選んで三万字、左伝のもっとも大切な文を数万字、これらもまた日課を定めて百回熟読すれば、文字においては、おそらく世に比べる者がないでしょう。これが学問のよい方法です。

解説

前の条の計算を受け、四書の暗記は一年半足らずで終わると述べ、さらに書経・詩経・易経・礼記・左伝の精要を百遍熟読せよと勧める条です。注目されるのは、益軒自身が若い時にこの方法を知らず、八十歳になってようやく学び方がわかり後悔している、と率直に告白している点です。多くの著作を残した大学者が自分の学び方を悔いる言葉は、読む者の心に残ります。若い人に同じ後悔をさせたくないという思いが、この本を書いた動機の一つであることがよく伝わる条です。

この章句が説くこと

学問後悔五経熟読老年

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