和俗童子訓 / 巻之三・読書法
一小兒に初て書を說き聞かするに、文句短く文義あさく、分明に聞え易く言ひ聞かすべし。小兒に相應せざる、高く、深く、まはり遠く、むつかしく、聞きにくき事を敎ふべからず又ことば多く長くすべからず。言少なくして、さとし易くすべし。まづ孝經の首章、論語の學而篇を早く說き聞かすべし。是本をつとむるなり。小學の書を說くには、義理を淺く輕く說くべし。深く重く說くべからず。是小兒に敎ふる法なり。一小兒讀書の内に、早く文義を所々敎ふべし。孝經にて云はゞ、仲尼とは孔子の字なり。字とは、成人して名づくるかへ名なり。子は師のことを云ふ。曾子は孔子の弟子なり。參は曾子の名。先王とは、古の聖王のこと。不敏は鈍なること。又論語の首章を讀む時は、學ぶとは學問するを云ふ。習ふとは學びたる事を身に勤めならふなり。說ぶとは面白きと云ふ意、樂むとは大に面白き意なり。かやうに讀書の序に文義を敎ふれば、自然に書を曉し得るものなり。
新字:一小児に初て書を説き聞かするに、文句短く文義あさく、分明に聞え易く言ひ聞かすべし。小児に相応せざる、高く、深く、まはり遠く、むつかしく、聞きにくき事を教ふべからず又ことば多く長くすべからず。言少なくして、さとし易くすべし。まづ孝経の首章、論語の学而篇を早く説き聞かすべし。是本をつとむるなり。小学の書を説くには、義理を浅く軽く説くべし。深く重く説くべからず。是小児に教ふる法なり。一小児読書の内に、早く文義を所々教ふべし。孝経にて云はゞ、仲尼とは孔子の字なり。字とは、成人して名づくるかへ名なり。子は師のことを云ふ。曽子は孔子の弟子なり。参は曽子の名。先王とは、古の聖王のこと。不敏は鈍なること。又論語の首章を読む時は、学ぶとは学問するを云ふ。習ふとは学びたる事を身に勤めならふなり。説ぶとは面白きと云ふ意、楽むとは大に面白き意なり。かやうに読書の序に文義を教ふれば、自然に書を暁し得るものなり。
書き下し
一小児に初て書を説き聞かするに、文句短く文義あさく、分明に聞え易く言ひ聞かすべし。小児に相応せざる、高く、深く、まはり遠く、むつかしく、聞きにくき事を教ふべからず又ことば多く長くすべからず。言少なくして、さとし易くすべし。まづ孝経の首章、論語の学而篇を早く説き聞かすべし。是本をつとむるなり。小学の書を説くには、義理を浅く軽く説くべし。深く重く説くべからず。是小児に教ふる法なり。一小児読書の内に、早く文義を所々教ふべし。孝経にて云はば、仲尼とは孔子の字なり。字とは、成人して名づくるかへ名なり。子は師のことを云ふ。曽子は孔子の弟子なり。参は曽子の名。先王とは、古の聖王のこと。不敏は鈍なること。又論語の首章を読む時は、学ぶとは学問するを云ふ。習ふとは学びたる事を身に勤めならふなり。説ぶとは面白きと云ふ意、楽むとは大に面白き意なり。かやうに読書の序に文義を教ふれば、自然に書を暁し得るものなり。
現代語訳
子どもに初めて書物の意味を説いて聞かせるには、文句を短く、意味を浅くして、はっきりわかりやすく言い聞かせなさい。子どもにふさわしくない、高く、深く、回りくどく、難しく、聞きにくいことを教えてはなりません。また言葉を多く長くしてはなりません。言葉少なく、わかりやすくしなさい。まず孝経の首章と論語の学而篇を早く説いて聞かせなさい。これが根本を勤めることです。小学の書を説くには、義理を浅く軽く説きなさい。深く重く説いてはなりません。これが子どもに教える法です。子どもが書物を読む中で、早く意味を所々教えなさい。孝経で言えば、「仲尼」とは孔子の字です。字とは、成人してつける別の名です。「子」は先生のことを言います。「曽子」は孔子の弟子です。「参」は曽子の名です。「先王」とは昔の聖王のことです。「不敏」は鈍いことです。また論語の首章を読む時は、「学ぶ」とは学問することを言い、「習ふ」とは学んだことを身に勤め習うことです。「説ぶ」とは面白いという意味、「楽しむ」とはたいへん面白いという意味です。このように読書のついでに意味を教えれば、自然と書物がわかるようになるものです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之三・読書法右の名目小篇などを読み覚えて後、経書を教ふべし。初より文句長き読み難き経書を教へて、其気を屈せしむべからず。経書を教ふるには、まづ孝経の首章、次に論語学而の篇を読ましめ、皆熟読して後、その要義をもあらあら説き聞かすべし。小学四書は、最初より読みにくし。故にまづ右に云ふ所の文句の短きものを多く読ませて、次に小学を読ませ、後に四書五経を読ましむべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児の文学の教は、事しげくすべからず、事しげく、文句多くしてむつかしければ、学問を苦みて、うとんじ嫌ふ心出来る事あり。故に簡要をえらびて、事少なく教ふべし。少しづつ教へ、よみ習ふ事を嫌はずして、すき好むやうに教ふべし。むつかしく辛労にして、其気を屈せしむべからず。日々のつとめの課程を、よきほどに短く定めて、日々に怠りなく進むべし。凡小児を教ふるには、必師あるべし。もし外の師なくば、其父兄自ら日々の課程を定めて、読ましむべし。父兄辛労せざれば、教行はれず。一初て書を読むには、まづ文句短くして、読み易く覚え易き事を教ふべし。初より文句長き事を教ふれば、退屈し易し。易きを先にし、難きを後にすべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児に初て書を授くるには、文句を長く教ふべからず。一句二句教ふ。また一度に多く授くべからず。多ければ覚え難く、覚えても堅固ならず、其上厭ひ倦んで学を嫌ふ。必退屈せざるやうに、少しづつ授くべし。其教へやうは、初は唯一字二字三字づつ字を知らしむべし。其後、一句づつ教ふべし。既に字を知り句を覚えば、小児をして自ら読ましむべし。両句を教ふるには、まづ一句を読み覚えさせ、熟読すれば、次の句を又右の如くに読ましめ、既に熟読して、前句と後句と通読せしめて止むべし。如此する事数日にして、後又一両句づつ、漸に添へて授くべし。其後授くるに、やうやく字多ければ、分つて二三次となして、授け読ましめ、其二三次、各熟読して、合せて通読せしむ。もし其中覚え難き所あらば、其所ばかり又数遍読ましむ。又甚読み易き所をば、分ち読む時は読むべからず。是省功の法なり。
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『益軒家訓』幼児須教一八歳は古人小学に入りし年なり。初て論語を読ましむべし。幼者に相応せる礼義を教へ、辞譲を知らしむべし。又和礼を教へ、漢字の草書を習はしむべし。一十歳小学の書をよませ、略其義理のさとしやすく、簡要なる所を説聞すべし。又真字を習はしむべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。
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『益軒家訓』幼児須教一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
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