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和俗童子訓 / 巻之三・読書法

一凡書を讀むには、早く先を讀むべからず。每日返り讀を專ら勤むべし。返り讀を數十遍勤め終りて、其先を讀むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り讀少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の敎へし功もすたりて、廣く數十卷の書を讀んでも益なし。一卷にても能く覺ゆれば、學力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を讀んでも、學進まざるは、熟讀せずして覺えざればなり。才性あらば、八歲より十四歲まで、七年の間に、小學、四書、五經等、皆讀み終る。四書五經熟讀すれば、才力いでき、學問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、廣く群書を見るべし。

新字:一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。

書き下し

一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。

現代語訳

およそ書物を読むには、早く先を読んではなりません。毎日、繰り返し読むことをもっぱら勤めなさい。繰り返し読むことを数十回勤め終えてから、その先を読みなさい。そうせずに、ただはかどることを好んで、繰り返し読むことが少なければ、必ず忘れて、自分の習った功も、師の教えた功もすたれて、広く数十巻の書物を読んでも益はありません。一巻でもよく覚えれば、学力となって役に立ちます。必ずよく覚えなさい。書物を読んでも学問が進まないのは、熟読せずに覚えていないからです。才能があれば、八歳から十四歳までの七年の間に、小学・四書・五経などを皆読み終えます。四書五経を熟読すれば、才力が出てきて学問の根本が立ちます。その力で、しだいに年長じて、広く多くの書物を見なさい。

解説

先を急がず繰り返し読むことを学問の要とした条です。数十回繰り返してから先へ進め、はかどることばかり好んで数十巻読んでも忘れれば益はない、一巻でもよく覚えれば学力になる、と益軒は言います。八歳から十四歳の七年で小学・四書・五経を読み終え、その力で広く群書に及べという見通しも示されます。多読より精読、量より定着という考えは、朱子の読書法にも通じます。資格試験の勉強などで、新しい教材に手を広げるより一冊を繰り返す方が力になるという経験則とも一致します。

この章句が説くこと

読書熟読復習学問経書

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