和俗童子訓 / 巻之三・読書法
一小兒に初て書を授くるには、文句を長く敎ふべからず。一句二句敎ふ。また一度に多く授くべからず。多ければ覺え難く、覺えても堅固ならず、其上厭ひ倦んで學を嫌ふ。必退屈せざるやうに、少しづつ授くべし。其敎へやうは、初は唯一字二字三字づつ字を知らしむべし。其後、一句づつ敎ふべし。旣に字を知り句を覺えば、小兒をして自ら讀ましむべし。兩句を敎ふるには、まづ一句を讀み覺えさせ、熟讀すれば、次の句を又右の如くに讀ましめ、旣に熟讀して、前句と後句と通讀せしめて止むべし。如此する事數日にして、後又一兩句づつ、漸に添へて授くべし。其後授くるに、やうやく字多ければ、分つて二三次となして、授け讀ましめ、其二三次、各熟讀して、合せて通讀せしむ。もし其中覺え難き所あらば、其所ばかり又數遍讀ましむ。又甚讀み易き所をば、分ち讀む時は讀むべからず。是省功の法なり。
新字:一小児に初て書を授くるには、文句を長く教ふべからず。一句二句教ふ。また一度に多く授くべからず。多ければ覚え難く、覚えても堅固ならず、其上厭ひ倦んで学を嫌ふ。必退屈せざるやうに、少しづつ授くべし。其教へやうは、初は唯一字二字三字づつ字を知らしむべし。其後、一句づつ教ふべし。既に字を知り句を覚えば、小児をして自ら読ましむべし。両句を教ふるには、まづ一句を読み覚えさせ、熟読すれば、次の句を又右の如くに読ましめ、既に熟読して、前句と後句と通読せしめて止むべし。如此する事数日にして、後又一両句づつ、漸に添へて授くべし。其後授くるに、やうやく字多ければ、分つて二三次となして、授け読ましめ、其二三次、各熟読して、合せて通読せしむ。もし其中覚え難き所あらば、其所ばかり又数遍読ましむ。又甚読み易き所をば、分ち読む時は読むべからず。是省功の法なり。
書き下し
一小児に初て書を授くるには、文句を長く教ふべからず。一句二句教ふ。また一度に多く授くべからず。多ければ覚え難く、覚えても堅固ならず、其上厭ひ倦んで学を嫌ふ。必退屈せざるやうに、少しづつ授くべし。其教へやうは、初は唯一字二字三字づつ字を知らしむべし。其後、一句づつ教ふべし。既に字を知り句を覚えば、小児をして自ら読ましむべし。両句を教ふるには、まづ一句を読み覚えさせ、熟読すれば、次の句を又右の如くに読ましめ、既に熟読して、前句と後句と通読せしめて止むべし。如此する事数日にして、後又一両句づつ、漸に添へて授くべし。其後授くるに、やうやく字多ければ、分つて二三次となして、授け読ましめ、其二三次、各熟読して、合せて通読せしむ。もし其中覚え難き所あらば、其所ばかり又数遍読ましむ。又甚読み易き所をば、分ち読む時は読むべからず。是省功の法なり。
現代語訳
子どもに初めて書物を授けるには、文句を長く教えてはなりません。一句か二句を教えます。また一度に多く授けてはなりません。多ければ覚えにくく、覚えても確かではなく、そのうえ飽きて嫌になって学問を嫌います。必ず退屈しないように、少しずつ授けなさい。その教え方は、初めはただ一字・二字・三字ずつ字を知らせなさい。その後、一句ずつ教えなさい。字を知り句を覚えたら、子ども自身に読ませなさい。二句を教えるには、まず一句を読み覚えさせ、熟読したら、次の句をまた同じように読ませ、熟読したら前の句と後の句を通して読ませて終わりにしなさい。このようにすることを数日続けて、後はまた一、二句ずつ、しだいに加えて授けなさい。その後、授けるにつれてだんだん字が多くなったら、二、三回に分けて授けて読ませ、その二、三回分をそれぞれ熟読して、合わせて通読させます。もしその中に覚えにくい所があれば、その所だけまた数回読ませます。またたいへん読みやすい所は、分けて読む時には読まなくてもよいのです。これが手間を省く法です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児の文学の教は、事しげくすべからず、事しげく、文句多くしてむつかしければ、学問を苦みて、うとんじ嫌ふ心出来る事あり。故に簡要をえらびて、事少なく教ふべし。少しづつ教へ、よみ習ふ事を嫌はずして、すき好むやうに教ふべし。むつかしく辛労にして、其気を屈せしむべからず。日々のつとめの課程を、よきほどに短く定めて、日々に怠りなく進むべし。凡小児を教ふるには、必師あるべし。もし外の師なくば、其父兄自ら日々の課程を定めて、読ましむべし。父兄辛労せざれば、教行はれず。一初て書を読むには、まづ文句短くして、読み易く覚え易き事を教ふべし。初より文句長き事を教ふれば、退屈し易し。易きを先にし、難きを後にすべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一書を読むには、必句読を明かにし、よみこゑを詳かにし、清濁を分ち、訓点に誤なく、てにはを精しくすべし。世俗の疎なる謬に従ふべからず。一書を読むに、当時略熟誦しても、久しく読まざれば必忘る。故に書を読み終つて後、既に読みたる書を、時々かへり読むべし。又毎日前の三四五度に授かりたる所を、今日読み習ふ所に通して、あとを読むべし。如此すれば忘れず。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児に初て書を説き聞かするに、文句短く文義あさく、分明に聞え易く言ひ聞かすべし。小児に相応せざる、高く、深く、まはり遠く、むつかしく、聞きにくき事を教ふべからず又ことば多く長くすべからず。言少なくして、さとし易くすべし。まづ孝経の首章、論語の学而篇を早く説き聞かすべし。是本をつとむるなり。小学の書を説くには、義理を浅く軽く説くべし。深く重く説くべからず。是小児に教ふる法なり。一小児読書の内に、早く文義を所々教ふべし。孝経にて云はば、仲尼とは孔子の字なり。字とは、成人して名づくるかへ名なり。子は師のことを云ふ。曽子は孔子の弟子なり。参は曽子の名。先王とは、古の聖王のこと。不敏は鈍なること。又論語の首章を読む時は、学ぶとは学問するを云ふ。習ふとは学びたる事を身に勤めならふなり。説ぶとは面白きと云ふ意、楽むとは大に面白き意なり。かやうに読書の序に文義を教ふれば、自然に書を暁し得るものなり。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児の書を読むに、文字を多く覚えざれば、書を読むに力なくして、学問進まず。又文字を知らざれば、すべて世間の事に通ぜず。芸など習ふにも、文字を知らざれば、其理にくらくして、ひが事多し。文字を知れらば、又其文義を心に懸けて通し知るべし。
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『和俗童子訓』巻之三・随年教法一今年の春より、真と草との文字を書きならはしむべし。はじめより風体正しき能書を学ばしむべし。手跡つたなく、風体悪しきを手本として習へば、悪しき事くせとなり、後に風体よき能書をならへども移らず。初は真草ともに、大字を書き習はしむべし、初より小字を書けば、手すくみて働かず。又此年より、早く文字を読み習はしむべし。孝経小学四書などの類の、文句長きむつかしきものは、初より読み難く、覚え難く、退屈し、学問を嫌ふ心出できて悪しし。まづ文句の短くして読易く、覚えやすきものを読ませ、そらに覚えさすべし。
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