和俗童子訓 / 巻之三・読書法
一およそ書を讀むには、必まづ手を洗ひ、心に愼み、容を正しくし、几案のほとりを拂ひ、書册を正しく几上におき、跪きて讀むべし。師に書を讀み習ふ時は、高き几案の上に置くべからず。帙の上、或は文匣矮案の上に乘せて讀むべし。必人の蹈む席上に置くべからず。書を穢す事なかれ。書を讀み終らば、もとの如くおほひ納むべし。もし急速の事ありてたち去るとも、必をさむべし。又書をなげ、書の上を越ゆべからず。書を枕とする事なかれ。書の腦を卷きて、折りかへす事勿れ。唾を以て幅を揚ぐる事勿れ。故紙に經傳の詞義聖賢の姓名あらば、愼みて他事に用ふべからず。又君上の御名、父母の姓名ある故紙をも穢すべからず。
新字:一およそ書を読むには、必まづ手を洗ひ、心に慎み、容を正しくし、几案のほとりを払ひ、書册を正しく几上におき、跪きて読むべし。師に書を読み習ふ時は、高き几案の上に置くべからず。帙の上、或は文匣矮案の上に乗せて読むべし。必人の蹈む席上に置くべからず。書を穢す事なかれ。書を読み終らば、もとの如くおほひ納むべし。もし急速の事ありてたち去るとも、必をさむべし。又書をなげ、書の上を越ゆべからず。書を枕とする事なかれ。書の脳を巻きて、折りかへす事勿れ。唾を以て幅を揚ぐる事勿れ。故紙に経伝の詞義聖賢の姓名あらば、慎みて他事に用ふべからず。又君上の御名、父母の姓名ある故紙をも穢すべからず。
書き下し
一およそ書を読むには、必まづ手を洗ひ、心に慎み、容を正しくし、几案のほとりを払ひ、書册を正しく几上におき、跪きて読むべし。師に書を読み習ふ時は、高き几案の上に置くべからず。帙の上、或は文匣矮案の上に乗せて読むべし。必人の蹈む席上に置くべからず。書を穢す事なかれ。書を読み終らば、もとの如くおほひ納むべし。もし急速の事ありてたち去るとも、必をさむべし。又書をなげ、書の上を越ゆべからず。書を枕とする事なかれ。書の脳を巻きて、折りかへす事勿れ。唾を以て幅を揚ぐる事勿れ。故紙に経伝の詞義聖賢の姓名あらば、慎みて他事に用ふべからず。又君上の御名、父母の姓名ある故紙をも穢すべからず。
現代語訳
およそ書物を読むには、必ずまず手を洗い、心を慎み、姿を正し、机のまわりを払い清め、書物をきちんと机の上に置き、ひざまずいて読みなさい。師について書物を読み習う時は、高い机の上に置いてはなりません。帙の上、あるいは文箱や低い机の上に乗せて読みなさい。決して人が踏む敷物の上に置いてはなりません。書物を汚してはなりません。書物を読み終わったら、元のように覆ってしまいなさい。もし急用があって立ち去る時でも、必ずしまいなさい。また書物を投げたり、書物の上をまたいだりしてはなりません。書物を枕にしてはなりません。書物の背を巻いて折り返してはなりません。唾をつけて紙をめくってはなりません。反故紙に経伝の言葉や聖賢の姓名があれば、慎んで他のことに使ってはなりません。また主君の御名や父母の姓名がある反故紙も汚してはなりません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之四・礼一曲礼曰く、敬せざること毋かれ。凡人事の視聴言動より出づる処、万事敬しまざる事なかるべし。敬とは、心に道に違はん事をおそれて、恣ならざるを云ふ。是心をたもち、身ををさめ、事を行ふ則なり。是礼の本なり。古より、聖人賢人の心法は、敬を以て要とし給ふ。凡身の行儀作法なく、道を失ひ、禍おこるも、皆敬まざるによれり。古語にも敬めば、禍にかつといへり。つつしめば禍なし。白楽天が言に、福と禍とは慎むと慎まざるとに在りといへり。
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『五常訓』巻之四・礼一君子は天地をおそれうやまふ。故に大風、大雨、迅雷などの時は、容をあらためて、夜はおきて衣服を著て坐す。是天のいかりを敬ふ礼なり。是亦天につかうまつるの道の一端なり。一少儀曰、虚を執れども盈をとるが如く、虚に入れども人あるが如くにす。いふ意は、内に物なき器をとるにも、盈ちてこぼれやすき器をとるが如く、おそれつつしむべし。人の居らざる家に入るにも、人あるが如くつつしむべし。是は敬の心常にあるを云ふ。礼の本なり。
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『春秋左氏伝』僖公十一年 礼は国の幹十一年春、晉侯使ひして丕鄭の亂を以て來り告げしむ。天王召の武公・內史過をして晉侯に命を賜はしむ。玉を受くること惰る。過歸りて王に告げて曰く、「晉侯其れ後無からんか。王之に命を賜ひて、瑞を受くるに惰る、先づ自ら棄つるのみ、其れ何の繼ぐこと之れ有らん。禮は、國の幹なり。敬は、禮の輿なり。敬せずんば則ち禮行はれず、禮行はれずんば則ち上下昏し、何を以てか世に長からん」と。夏、揚・拒・泉・皋・伊雒の戎同じく京師を伐ち、王城に入り、東門を焚く、王子帶之を召けばなり。秦・晉戎を伐ちて以て周を救ふ。秋、晉侯戎を王に平らぐ。黃人楚に貢を歸さず。冬、楚人黃を伐つ。
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『春秋左氏伝』成公十三年 礼は身の幹十三年春、晉侯郤錡をして來りて師を乞はしむ。事を將ふに敬せず。孟獻子曰く、「郤氏其れ亡びんか。禮は身の幹なり。敬は身の基なり。郤子基無し。且つ先君の嗣卿なり。命を受けて以って師を求む、將に社稷を是れ衛らんとするなり。而るに惰りて君命を棄つ。亡びずして何をか為さん」と。
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『五常訓』巻之四・礼一礼は心につつしみありて、人をうやまふを本とし、万事を行ふに、則にしたがひて、正しく理あるを文とす。則とは作法なり。孝経に、礼は敬のみ。云ふ意は、礼は敬を専らとす。而已とは、此外には無しと云ふ詞なり。朱子曰く、礼の本は人を敬ふに在り。人をうやまふは、心のつつしみより起る。人を敬ふも、其人をあはれむ心より出づる故朱子も、礼は仁のあらはれたる也といへり。礼記曰、礼は理也。周子曰く、理を礼と曰ふ、理はすぢめなり。すぢめとは、万事を行ふに、各正しき則ありて、其則にちがはざるは、即理なり。理にしたがへば、万事正しくしてをさまる。理にしたがはざれば、万事邪にして、みだれて行はれず。朱子曰、礼は天理の節文、人事の儀則なり。
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『五常訓』巻之四・礼一礼記に、子曰、敬ひて礼にあたらざる、これを野と云ふ。敬ふは誠によけれど、礼にかなはざれば、これ野きなり。敬によき程の法あり。過不及ありて、其法にかなはざるは、是礼にあたらざるなり。況やおごりて理にかなはざるは、ことに礼にそむけり。野きより、其害甚し。
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