和俗童子訓 / 巻之三・随年教法
一六歳の正月、始て一二三四五六七八九十百千萬億の數の名と、東西南北の方の名とを敎へ、其生れつきの利鈍をはかりて、六七歲より、和字を讀ませ、書きならはしむべし。はじめて和字を敎ふるに、あいうえお五十韻を平がなに書きて、たてよこに讀ませ書きならはしむ。又世間往來のかなの文の手本をならはしむべし。此年ころより、尊長を敬ふ事を敎へ、尊卑長幼のわかちをも知らしめ、ことばづかひをも敎ふべし。一七歳、是より男女席を同じくしてならび坐せず、食を共にせず。此ころ、小兒の少し智出來、言ふことをきゝ知るほどならば、其智をはかり、年に宜しきほど、やうやく禮法を敎ふべし。又和字のよみかきをも習はしむべし。
新字:一六歳の正月、始て一二三四五六七八九十百千万億の数の名と、東西南北の方の名とを教へ、其生れつきの利鈍をはかりて、六七歳より、和字を読ませ、書きならはしむべし。はじめて和字を教ふるに、あいうえお五十韻を平がなに書きて、たてよこに読ませ書きならはしむ。又世間往来のかなの文の手本をならはしむべし。此年ころより、尊長を敬ふ事を教へ、尊卑長幼のわかちをも知らしめ、ことばづかひをも教ふべし。一七歳、是より男女席を同じくしてならび坐せず、食を共にせず。此ころ、小児の少し智出来、言ふことをきゝ知るほどならば、其智をはかり、年に宜しきほど、やうやく礼法を教ふべし。又和字のよみかきをも習はしむべし。
書き下し
一六歳の正月、始て一二三四五六七八九十百千万億の数の名と、東西南北の方の名とを教へ、其生れつきの利鈍をはかりて、六七歳より、和字を読ませ、書きならはしむべし。はじめて和字を教ふるに、あいうえお五十韻を平がなに書きて、たてよこに読ませ書きならはしむ。又世間往来のかなの文の手本をならはしむべし。此年ころより、尊長を敬ふ事を教へ、尊卑長幼のわかちをも知らしめ、ことばづかひをも教ふべし。一七歳、是より男女席を同じくしてならび坐せず、食を共にせず。此ころ、小児の少し智出来、言ふことをきき知るほどならば、其智をはかり、年に宜しきほど、やうやく礼法を教ふべし。又和字のよみかきをも習はしむべし。
現代語訳
六歳の正月に、初めて一・二・三・四・五・六・七・八・九・十・百・千・万・億という数の名と、東・西・南・北という方角の名とを教え、その生まれつきの賢さ鈍さを見計らって、六、七歳から仮名を読ませ、書き習わせなさい。初めて仮名を教えるには、「あいうえお」の五十音を平仮名で書いて、縦にも横にも読ませ、書き習わせます。また世間で使う往来物の仮名の手紙の手本を習わせなさい。この年頃から、目上を敬うことを教え、尊卑や長幼の区別も知らせ、言葉づかいも教えなさい。七歳からは、男女が同じ席に並んで座らず、食事を共にしません。この頃、子どもに少し知恵がついて、言うことを聞き分けられるようになったら、その知恵を見計らい、年齢にふさわしい程度に、少しずつ礼法を教えなさい。また仮名の読み書きも習わせなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『和俗童子訓』巻之四・手習法一小児初て手習するには、先一二三四五六七八九十百千万億、次に天地、父母、五倫、五常、四端、七情、四民、陰陽、五行、四時、四方、五穀、五味、五色などの名目の手本を、真字に書きて、大に書習はしむべし。一あいうえお五十字は、和音に通ずるに益あり。横縦に読覚ゆべし。かな遣てにはなど是を以て知るべし。いろはの益なきにまされり。国字も皆是に備れり。片仮名はおそく教へ知らしむべし。
-
『和俗童子訓』巻之三・随年教法一今年の春より、真と草との文字を書きならはしむべし。はじめより風体正しき能書を学ばしむべし。手跡つたなく、風体悪しきを手本として習へば、悪しき事くせとなり、後に風体よき能書をならへども移らず。初は真草ともに、大字を書き習はしむべし、初より小字を書けば、手すくみて働かず。又此年より、早く文字を読み習はしむべし。孝経小学四書などの類の、文句長きむつかしきものは、初より読み難く、覚え難く、退屈し、学問を嫌ふ心出できて悪しし。まづ文句の短くして読易く、覚えやすきものを読ませ、そらに覚えさすべし。
-
『和俗童子訓』巻之三・随年教法子となり弟となる法を知らず、無礼にして不孝不弟となる。是父母おろかにして、子の悪をすすめなせるなり。漸く年を重ねば、弟を愛し、臣僕を恤み、師を尊び、友に交る道、賓客に対して、坐立進退、ことばづかひの法、各其品に随ひて、いつくしみ敬ふ道を教へ知らしむべし。是よりやうやく孝弟忠信礼義廉恥の道を教へ行はしむ。人の財物を求め、飲食を貪りて、賤しげなる心を戒め、恥を知るべき事を教ふべし。七歳より前は、猶幼ければ、早く寝ねおそく起き、食するに時を定めず、大やう其心に任すべし。礼法を以て、一々に責め難し。八歳より、門戸の出入し、又は座席につき飲食するに、必年長ぜる人におくれて、先だつべからず、はじめて、へり下り譲る事を教ふべし。小児の心任せにせず、気随なる事を堅くいましむべし。是肝要の事なり。
-
『益軒家訓』幼児須教一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
-
『和俗童子訓』巻之五・教女子法一七歳より和字を習はしめ、又をとこもじをも習はしむべし。淫思なき古歌を多く読ましめて、風雅の道を知らしむべし。是また男子の如く、初は数目有る句、短き事ども許多よみ覚えさせて後、孝経の首章、論語学而篇、曹大家が女誠など読ましめ、孝順貞潔の道を教ふべし。十歳より外に出ださず、閨門の内にのみ居て、おりぬひ、うみつむぐわざを習はしむべし。仮にも淫佚なる事を聞かせ知らしむべからず。小唄浄瑠理三味線の類、淫声を好めば、心をそこなふ。かやうの賤しきたはぶれたる事を以て、女子の心をなぐさむるはあしし。風雅なるよき事を習はしめて、心をなぐさむべし。此比の婦人は、淫声を好んで女子に教ふ。是甚風俗心術をそこなふ。幼き時悪しき事を見聞き習ひては、早く移り易し。
-
『和俗童子訓』巻之三・随年教法一十歳、此年より師に随はしめ、まづ五常の理五倫の道、あらあら言ひ聞かせ、聖賢の書を読み、学問せしむべし。読む所の書の内、まづ義理の聞え易くさとし易き、切要なる所を説き聞かすべし。是より後、やうやく小学四書五経を読むべし。又其ひまに、文武の芸術をも習はしむべし。世俗は、十一歳の比、やうやう初て手習など教ふ。遅しと云ふべし。教は早からざれば、心すさみ気あれて、教を嫌ひ、怠にならひて、勤め学ぶ事難し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る