益軒家訓 / 幼児須教
一學問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友惡しければ、學びても後惡しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸藝も亦然り。一六歳の正月、始て數の名と、我が邦の假名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を敎ふべし。和語に通ずるに利あり。七歲の時始て孝經を讀ましめ、孝弟忠信禮儀廉恥の義を敎へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六藝四民等の名目、多く敎へ知らしむべし。一時に多く敎ふべからず。少し敎へてよく覺えさすべし。都て小兒に書を讀ましむるは、皆此法也。
新字:一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
書き下し
一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
現代語訳
学問をするには、すぐれた師やよい友を選んで仕えるべきです。師や友が悪ければ、学んでも後が悪く、一生道を知りません。よくこれを選ぶべきです。諸芸もまた同じです。六歳の正月には、初めて数の名と、わが国の仮名を習わせるべきです。いろはは益が少ないです。「あいうえお」の五十音を教えるべきです。和語に通じるのに便利だからです。七歳のときには初めて孝経を読ませ、孝・弟・忠・信・礼・義・廉・恥の意味を教え、また五常・五倫・三綱・六紀・四端・七情・六芸・四民などの名目を多く教えて知らせるべきです。一度に多く教えてはなりません。少しずつ教えてよく覚えさせるべきです。すべて子どもに書を読ませるのは、皆この方法によります。
解説
この章句が説くこと
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『益軒家訓』幼児須教一十一歳、是れより漸く四書五経等を読ましめ、また文武の芸能をも習はしむべし。一十五歳は古人大学に入りし年なり。これより専ら義理を学び、己を修め人を治る道を知るべし。生質遅鈍なりとも、是より二十歳迄の間に、小学四書等の大義に通ずべし。若聰明ならば、博く学び多く知らすべし。凡君子の学問は、智仁勇の三徳を本とし、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫を道とすべし。就中忠孝を重んずべし。君父の恩を忘るべからず。
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『益軒家訓』幼児須教一八歳は古人小学に入りし年なり。初て論語を読ましむべし。幼者に相応せる礼義を教へ、辞譲を知らしむべし。又和礼を教へ、漢字の草書を習はしむべし。一十歳小学の書をよませ、略其義理のさとしやすく、簡要なる所を説聞すべし。又真字を習はしむべし。
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『益軒家訓』幼児須教一幼き時の教は、事繁くすべからず。事繁くして煩労なれば、学問を疎んずるもの也。むづかしくして其気を屈すべからず。年数と性質と応ぜざる事を、強て責むべからず。年比に随ひ応じて教ふべし。又生附を見て、其過ぎたるを抑へ、不足を補ひて、中に叶はしむべし。性質の悪しき所を、常に誡め匡すべし。凡小児を育つるに、義方の訓をなすべし。姑息の愛をなすべからず。怠るをゆるす事なかれ。気随をゆるし、私欲を長ずべからず。
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『家道訓』巻之一・総論上一子弟のいとけなき年より、よき師をえらび求めて、はやく聖賢の書を読ませ、善ををしへ悪をいましめ、孝弟忠信礼義廉恥の道を知らしめ、行はしむべし。かりそめにも、悪しき友に交らしむべからず。是第一にいましむべし。あしき事、見聞かしむべからず。いとけなき時は、殊に悪しき事は早くうつりやすし。よき事もあしき事も、先入の言はやく主となる。よき友を求めてまじはらしめ、よき事を見聞かしむべし。善悪皆習ひ馴るるよりうつりやすし。習ひ馴るる事つつしむべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児の文学の教は、事しげくすべからず、事しげく、文句多くしてむつかしければ、学問を苦みて、うとんじ嫌ふ心出来る事あり。故に簡要をえらびて、事少なく教ふべし。少しづつ教へ、よみ習ふ事を嫌はずして、すき好むやうに教ふべし。むつかしく辛労にして、其気を屈せしむべからず。日々のつとめの課程を、よきほどに短く定めて、日々に怠りなく進むべし。凡小児を教ふるには、必師あるべし。もし外の師なくば、其父兄自ら日々の課程を定めて、読ましむべし。父兄辛労せざれば、教行はれず。一初て書を読むには、まづ文句短くして、読み易く覚え易き事を教ふべし。初より文句長き事を教ふれば、退屈し易し。易きを先にし、難きを後にすべし。
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『和俗童子訓』巻之四・手習法一小児初て手習するには、先一二三四五六七八九十百千万億、次に天地、父母、五倫、五常、四端、七情、四民、陰陽、五行、四時、四方、五穀、五味、五色などの名目の手本を、真字に書きて、大に書習はしむべし。一あいうえお五十字は、和音に通ずるに益あり。横縦に読覚ゆべし。かな遣てにはなど是を以て知るべし。いろはの益なきにまされり。国字も皆是に備れり。片仮名はおそく教へ知らしむべし。
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